【解説】ハマスの“奇襲”なぜ今? イスラエルとの対立激化 “地域大戦”発展に懸念も
パレスチナ自治区のイスラム組織「ハマス」の攻撃と、イスラエルの報復による死者は1100人以上にのぼっています。なぜこのタイミングでの攻撃だったのでしょうか。日本テレビ・近野宏明解説委員に聞きました。
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7日に攻撃を仕掛けた「ハマス」は、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織で、イスラエルとは激しく対立しています。
パレスチナ側の後ろ盾はアラブ諸国やイラン。イスラエルの最大の後ろ盾はアメリカです。ところが最近、イスラエルがアラブの国々のうち、サウジアラビアなどと関係正常化の動きを見せていて、ハマスは「置き去りにされるのでは」と焦りを募らせていたという見方があります。
そして、攻撃のあった7日はユダヤ教の祝日でした。イスラエル国内に漂う“お休みムード”への不意打ちだったのです。
実は過去4回あった、パレスチナ側にたつアラブ諸国と、イスラエルとの間の「中東戦争」のうち、ちょうど50年前に始まった第4次の戦争も、祝日シーズンの10月6日に奇襲攻撃で始まって、イスラエル側に大きな被害が出ました。ハマスはこうした歴史を意識していた可能性もあります。
今回、高い情報収集能力を持つイスラエルが虚をつかれたことに、欧米メディアは「イスラエルの諜報活動の史上最悪の失敗のひとつ」と論評しています。
――今後どうなるのでしょうか?
近年にない規模の被害を受け、イスラエルは大規模な軍事作戦を展開しています。さらに、すでに一部でそういう動きがみられますが、両者の戦いに周辺国も加わると、地域大戦にエスカレートする恐れが高まります。とくにイスラエルと敵対するイランの動きが焦点です。
犠牲者をこれ以上増やさぬよう、一刻も早い停戦が求められますが、先行きは見通せません。