韓国・文政権の任期末に異例の駆け込み法案 “検察捜査権剥奪法”で捜査封じ?
韓国の文在寅政権を支えてきた革新系与党が、検察の捜査権限の大部分を剥奪して警察に移す法案の成立を急ぎ、混乱が続いています。退任後の文大統領や大統領選で敗れた李在明氏への捜査を封じるためとの見方もあり、政権末期の“駆け込み”に批判が出ています。
■“検察捜査権の完全剥奪”法案 国会の委員会を通過
革新系与党「共に民主党」が主導する検察庁法などの改正案は、検察の捜査権と起訴権を分離するもので、通称で“検察捜査権完全剥奪”法案と呼ばれています。
当初、提出された法案は検察庁法に定められた直接捜査が可能な6つの犯罪(腐敗、経済犯罪、公職者犯罪、選挙犯罪、防衛事業犯罪、大規模惨事)のすべてを削除する内容でした。
検事総長だった尹錫悦(ユン・ソギョル)次期大統領を支え、次の与党となる「国民の力」は当初、強く反発。しかし、国会議長から、腐敗と経済犯罪の2つの捜査権は警察に移さずに検察に残すなどの仲裁案を提案され、22日に合意しました。
現与党「共に民主党」が国会議席の約6割を占めるため政権交代後に“少数与党”となる「国民の力」としては円滑な国会運営のために妥協した形でしたが、党内から批判も噴出。再び対立していました。
こうした中、27日未明に与党「共に民主党」は国会の法制司法委員会で反対を押し切り法案を通過させました。
早ければ27日にも本会議に上程される見通しで、近く成立する公算が強まっています。
■文政権の任期末に異例の“駆け込み” 文大統領や李在明氏への捜査封じ?
法案は、韓国で強大な権限を持つ検察当局の弱体化につながります。
来月9日の文在寅大統領の任期満了を目前に控えて、現与党が強硬に成立を急いだことから、退任後の文大統領や大統領選挙で敗れた李在明(イ・ジェミョン)氏への検察の捜査を封じるためとの見方もあります。
文大統領は25日、この法案について「検察の捜査権と起訴権は分離されることが望ましい」と述べ、慎重な議論を経て、推進すべきとの立場を明らかにしました。
現与党の中には文大統領の政治の師である盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が検察の事情聴取を受けた後、自殺に追い込まれた過去の記憶から検察への強い警戒感があります。
文政権は、検察の権限を縮小する「検察改革」を推進し、政治家や政府高官への捜査権を検察から新たな捜査機関「高位公職者犯罪捜査庁」に移していました。
今回の法案は検察の権力をさらに削ぎ落とすもので、検察は検事総長ら幹部が一斉に辞意を表明するなど反発を強めています。