「病院爆発は…」バイデン大統領発言の真意は… イスラエル訪問の狙いは「連帯」と「けん制」か “イランとの対決”最も恐れ…
パレスチナ自治区ガザ地区の病院での爆発について、アメリカのバイデン大統領の発言が注目されています。一方、今回のイスラエル訪問にはレバノンを拠点とする武装組織「ヒズボラ」などをけん制する狙いもあるといいます。アメリカ政治に詳しい小谷哲男教授の見解を交え、詳しく解説します。
有働由美子キャスター
「国際社会が一致団結して臨まなければならないこの時期に、バイデン大統領がイスラエルを訪問したわけですが、ネタニヤフ首相との会談で、ガザ地区の病院での爆発について『イスラエルによるものではないようだ』と発言しました。これは、かなり踏み込んだ発言のように思えますが」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「そうですね。バイデン大統領は記者団に『国防総省から見せられたデータだ』と答えたということなんです。現状、イスラエルとハマス双方が関与を否定していますが、ただ、あの発言は『アメリカ政府として確信をもってのものだった』と、アメリカ政治に詳しい明海大学の小谷哲男教授は指摘しています」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「夜が明けて、現地の画像・映像を確認したところ、病院とはいえ、駐車場にとめられた車10数台が壊れているのが確認されただけ。周りのビルも無傷で『これでどうやって500人の死者が出るんだ。そもそもハマス側の発表だったことを思うと、偽情報ではないか』という結論に傾いているというんです」
「そしてイスラエル側が指摘しているとおり、ロケット砲が、ガザの内部から撃ち込まれたことは、アメリカの独自の検証で確認されたということです」
有働キャスター
「そのアメリカの検証でバイデン大統領があのような発言になったと。今回の会談でバイデン大統領は、発端となったそもそものハマスの攻撃に対して、イスラエル側への連帯を示しましたね」
小栗解説委員長
「アメリカとしては、イスラエルへの連帯を示すだけでなく、イスラエルがハマスと同じように敵対するレバノンの武装組織「ヒズボラ」、そしてイランをけん制する必要があったからだと、小谷教授は指摘しています」
「このヒズボラというのは、反欧米、イスラエルの殲滅を掲げていて、実はハマスよりも、より性能の高いロケット弾などを多く持つ武装組織です。ヒズボラは、今回のイスラエルとハマスとの衝突には、ここまでのところ抑制的な態度でしたが、今回の病院の爆発を受けて、反米感情が高まっています。実際、アメリカはヒズボラの拠点であるレバノンへの渡航の危険情報を、渡航中止を求める『最も高いレベル』に引き上げています」
有働キャスター
「そうなると、この衝突の行方が、ますますわからなくなりますよね」
小栗解説委員長
「もし、ヒズボラが大規模な攻撃に踏み切った時には、アメリカは軍事介入する構えだということです。そうなれば、ヒズボラを支援するイランとアメリカの対決という、最も恐れていたシナリオになる可能性もあるということなんです」
■血が流れず、恨みの連鎖が生まれない選択や後押しを…各国に求めたい
有働キャスター
「これについて、辻さんはどう見ていますか」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「ガザ地区はこれまでも“天井のない監獄”と表現されるほどの状況が続いていたわけですよね。それがいま、ここまで深刻な状況になってようやく世界中が注目する形になったというのは悲しいことですし、私自身も彼らのリアルを、どこまで理解できていたんだろうと思わされる日々が続いています」
「でも、これだけ市民に、両者ともに被害が広がっているいま、政治や主義主張の前に、まずこれ以上とにかく血が流れず、恨みの連鎖が生まれない選択や後押しを、各国が全力を尽くしてほしいと思います」
有働キャスター
「そうですね。エスカレートしないことを祈るしかないんですけれども」
(10月18日放送『news zero』より)