タリバンに教育を奪われた少女たち“黒ずくめ”の服装で集う場所は…アフガニスタン
アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが復権してから2年。女子教育は停止され、中学生以上の少女たちは学校に通えない日々が続いている。そんな彼女たちが全身黒ずくめの服装で、せめてもの学びを求めて集まる場所があった。(NNNカブール 平山晃一)
■住宅街に響き渡る少女たちの声
私たちが訪れたのは首都カブール郊外の住宅街。その一角に石造りの小さな集会場のような建物があった。そこに次から次へと、全身黒い服をまとった少女たちが入っていく。中から聞こえてきたのは、少女たちが何かを朗読する声。その声は、建物の外にまで響き渡り、歌のようにも思えた。
ここはイスラム教の聖典コーランなどを教えるマドラサ、宗教学校だ。聞こえていたのは、少女たちがコーランを朗読する声。授業は毎日行われる。しかし、午後3時から5時までのわずか2時間が、女子の授業時間と決まっている。この日は小学生から高校生くらいまでの年代の少女、約40人が授業に参加していた。黒い服に加えて、黒いヒジャブで髪を隠して口元も覆い、目だけを出す服装が義務づけられているという。
2021年8月のタリバン復権後、女子の中等教育(日本の中学高校)は停止され、翌年の12月に大学の女子教育も停止された。中学生以上の少女たちはすでに2年もの間、学校に行けない日々が続いている。こうした中、せめてもの学びの場・社会との接点を求めて、宗教学校に通う少女たちが増えているのだという。
■「夢をかなえられない」少女たちの声
宗教学校に通うことで、友人らと顔を合わせて話すこともでき、気晴らしにもなる。しかし少女たちは「ここで学んでも夢をかなえることはできない」と訴える。
英語と数学が得意だったという14歳のモハンマディさん。学校に通えなくなった後は、塾に通っていたものの、そこもタリバンによって閉鎖されたという。
モハンマディさん(14)
「医者になるという夢を持っていましたが、学校に加えて塾も閉鎖され、教育を受けられません。このままでは夢をかなえることができません」「私たちが教育を受け続けることができるように、世界の人々からタリバンに圧力をかけてほしいです」
■「現代に必要な知識を教えられない」責任者が抱える不安
タリバン復権後、この宗教学校に通う女子生徒の数は3倍の60人に増えたという。責任者は、少女たちの将来に不安を抱えている。
宗教学校の責任者 カリマ・ナザリさん
「学校に通えなくなって、自ら命を絶った少女もいます」「ここでは宗教についての知識を深めることはできますが、現代の生活に必要な知識を教えることができません」次世代の女性たちに知識を引き継げないことに不安を感じています」
■女子教育の停止めぐりタリバン内でも不満高まる
国際社会からの批判が強い女子教育の停止をめぐっては、最高指導者アクンザダ師によるトップダウンの決定にタリバン内部で不満が高まっているという指摘も出ている。女子教育に賛成の立場をとるハッカニ内相が今年2月「権力の独占」だと暗にアクンザダ師を批判したことは特に注目された。
実際に国内の政治を動かし、国際社会とも向き合う暫定政権には、女子教育の停止に批判的な立場の高官も多いとみられている。
学校に通えず、自ら命を絶つ少女。夢を見ることも出来ないと将来を悲観する少女。アフガニスタンで生きる少女たちの未来が明るいものとなるよう、今後も国際社会による粘り強い働きかけが求められる。