日中外相が初の対面会談 日中双方が明らかにした主な会談内容とは…
林外相が、中国の秦剛外相と初めて対面での外相会談を行いました。中国当局による日本人の拘束や沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題、台湾問題、ウクライナ情勢などについて意見交換が行われ、日中双方が内容を発表しました。
会談は約3時間にわたって行われ、その後、約45分の昼食も共にしました。
会談の中身について、日本側は林外相が記者団の取材に答えた一方で、中国側は中国外務省がホームページに内容を掲載しました。日中双方が明らかにした主な内容は以下の通りです。
■日中関係などについて
林外相)
「日中両国には様々な可能性があるが、同時に数多くの課題や深刻な懸念に直面しており、日中関係は非常に重要な局面にある」「日中韓(首脳会談などの)プロセス再開について一致した」
秦剛外相:中国外務省発表)
「平和共存、友好協力は中日関係の唯一の正しい選択であり、これは両国関係の半世紀の歩みが与えた深い啓示だ。アジアは現在、世界で最も発展の活力と潜在力を備えた地域であり、地域の平和を守り、共同発展を促進することは各国の普遍的な願いだ。対立とトラブルに対して、徒党を組み、圧力をかけることは問題解決に役立たず、溝を深めるだけだ」「日本が中国に対する正しい認識を確立し、対立点を適切に管理、コントロールし、両国関係の障害を軽減し、新時代の要求に合致する中日関係を構築することを希望する」
■アステラス製薬の邦人男性が中国当局に拘束されたことについて
林外相)
「拘束について中国側に抗議し、邦人の早期解放を含めて日本の厳正な立場を強く申し入れた」「日本大使館による邦人への面会の早期実施を求めるとともに、司法プロセスの透明性を求めた。様々なレベルで中国側に対して粘り強く働きかけていきたい」
秦剛外相:中国外務省発表)
「中国側は法律に基づいて処置する」
■沖縄・尖閣諸島、東シナ海情勢について
林外相)
「中露の連携を含む日本周辺での軍事活動の活発化等について、深刻な懸念を改めて表明した」
■台湾問題について
林外相)
「台湾海峡の平和と安定の重要性について述べた」
秦剛外相:中国外務省発表)
「台湾問題は中国の核心的利益の中でも核心であり、中日関係の政治的基盤にかかわる。日本は台湾問題に介入してはいけない。いかなる形でも中国の主権を傷つけてはならない」
■香港、新疆ウイグル自治区の人権問題について
林外相)
「香港、新疆ウイグル自治区などの状況に対する深刻な懸念を改めて表明した」
■ウクライナ情勢について
林外相)
「中国が世界の平和と安全に責任ある役割を果たすよう求めた」
■中国に進出する日系企業のビジネス環境について
林外相)
「日中の経済面での協力や、国民交流を推進していく観点から適切な環境を整える必要がある。中国において透明、予見可能かつ公平なビジネス環境が確保されることや、安全面とともに正当な経済活動が保障されることを強く求める。(中国が外国企業に対し)技術の開示を強制しようとする動きが強まっていることへの強い懸念を表明した」
■福島第一原発処理水の海洋放出について
林外相)
「中国側の科学的根拠に基づかない対外発信に抗議し、科学的見地に基づいた議論を行うよう強く求めた」
秦剛外相:中国外務省発表)
「人類の健康と安全に関わる重大な問題であり、日本側は責任を持って対応すべきだ」
■高性能な半導体製造装置の輸出管理について
林外相)
「日本の措置は特定の国を対象としたものではない。日本は国際的な平和および安全維持の観点から、国際ルールと整合する形で厳格な輸出管理を行っており、今後もこの方針の下で適切な対応を行っていく」
秦剛外相:中国外務省発表)
「米国はかつて日本の半導体産業を苛酷ないじめで弾圧したが、今では中国に対してそれを繰り返している。『己の欲せざるを人に施すことなかれ』だ。日本は身を切られるような痛さを感じたはずで、『人を食い殺す虎を手助けするようなまね』はすべきではない。(ハイテク技術をめぐる)封鎖は中国の自立自強の決意をさらに奮い立たせるだけだ」
■G7広島サミットについて
林外相)
「ウクライナ問題や北朝鮮への対応と国際的課題も含めて、G7としての共通の問題意識も踏まえながら、中国側と率直な議論を行った。こうした議論をしっかり踏まえ、議長国として議論を主導していきたい」
秦剛外相:中国外務省発表)
「日本はG7のメンバーであり、さらにアジアの一員である。日本は会議の基調と方向を正しく導き、地域の平和と安定に役立つことを数多く行い、国際社会の真の共通認識を集めるべきだ」