「ハワイツアー」再開へ 現地を取材してわかったハワイの“ある異変” ホテルは満室状態
ゴールデンウィークを前に、旅行会社が相次いでハワイ行きのツアーの再開を発表した。これからのハワイ観光はどうなるのか、現地で取材してみると、意外な変化が起きていた。
■2年間で大きく変化した客層
白い砂浜にパラソルがずらりと並ぶ。そこでくつろぐ人々に「どこから来ましたか?」と声をかけてみた。すると、多くがカリフォルニア州やワシントン州などアメリカ西海岸の地名を答えた。「国内旅行なので来やすい」のだという。
ビーチにいたのは、ほとんどが白人。唯一見つけたアジア系のカップルに話を聞くと、カナダのトロントから来たという。日本人は、街中を30分歩き回ってようやく1、2組見かける程度だった。
ハワイ州当局によると、2022年3月の日本からハワイへの渡航者数は一日平均188人のみ。連日5000人以上が渡航した2019年3月と比べると、大きく減少したままだ。
一方、アメリカ本土からの渡航者数は一日平均2万7268人で、2万4449人が渡航した3年前より、むしろ増加したのだ。そのため、ホテルの多くが満室状態で、料金も高騰。
かつて日本人観光客で賑わっていた観光名所やブランド品店なども、今はアメリカ本土などから来た観光客で混み合い、「以前よりも利益が出ている」と話す店もあるほどだった。
コロナ禍の前はほぼ毎年ハワイに来たという日本人観光客は「こんなに日本人を見ないハワイは初めて。だけど、レストランはどこも満席で、夕食の場所を探すのもひと苦労だ」などと話した。
■年間350件の予約が0に…いなくなった"ハワイ婚"
“日本人客以外”で繁盛する店がある一方、日本人を対象としていた店では、今も困難な状況が続く。
ハワイ土産として人気のTシャツショップ「88TEES」では、最近になるまでほとんど日本人客は見なかったという。ガイドブックや口コミで集まっていた日本人観光客が来られなくなったことで、売上は半減。しかし今後、日本人観光客が増えることを見込み、新作商品の入荷を始めるという。
さらに深刻なのが、ウェディング業界だ。私たちが訪れたのは、ワイキキにある結婚式場「Eines Villa di Nozze WAIKIKI LEIA」。かつては、年間350組ものカップルが結婚式を挙げていた。2019年にはチャペルを改装し、さらに多くのカップルたちを迎えようとしていた矢先に、コロナ禍が始まった。
運営責任者のトムさんは「この会場では、98%が日本からのお客様だった。今はハワイやアメリカ本土在住のお客様をお迎えすることはあるが、日本からのお客様はほぼ0になった」と嘆く。
挙式が減ったため、現在はゲストハウスをカフェとして利用し、ウェディングプランナーや衣装担当者らがウェイトレスとして働く。
日本での帰国後の待機期間が短縮されたことを受けて、この数週間は、問い合わせが増えているというが、トムさんは「まずは少人数、またはカップルだけの“2人婚”、写真だけ撮る“フォト婚”が増えていくだろう」との見方を示した。
■ハワイは日本人あってこそ…現地からツアー再開に期待の声
こうした中で、JTBやHISなど、旅行会社が相次いでハワイへのツアー再開を発表した。
今回、取材のために渡航した際も、出発前にPCR検査を行い、陰性証明とワクチンの接種証明、CDC(=米疾病対策センター)への宣誓書を用意すれば、スムーズに入国ができ、待機期間なしで活動ができた。
また、日本に帰国する際も、現地でPCR検査を受け、厚生労働省指定のアプリなどを用意して、日本の空港で検査を行う。ハワイ州から入国する場合、ワクチンの接種証明などの条件が整っていれば、待機期間なしで日常に戻ることが可能だ。
日本からのツアーコースの1つにもなっている人気パンケーキ店「カフェ・カイラ」でも、日本人観光客が増えることを見据えて、2年以上ぶりに日本語メニューを作成するという。
マネージャーのシャローさんは「日本人のお客さんは優しいし、フレンドリー。いつの日か、日本の皆さんに来てもらえることを楽しみにしている」と話す。
また、多くの日本人にサーフィンを教えてきたインストラクターのロイさんは、いくらアメリカ本土などからの観光客が増えたと言っても、日本人は特別だと話す。
「日本はハワイにとって大きな存在。元々、日本企業やレストランも多く、ハワイは日本人観光客あってこそだ」
この2年間で、ハワイの観光業は様変わりした。廃業に追い込まれた店も多く、観光業で働く人も減った。
これまで以上にアメリカ本土からの観光客がハワイを訪れる中、日本の旅行会社は、ホテルや業者の確保に苦労しているという。
再び、日本人観光客で賑わう「以前のようなハワイ」に戻るのか。日本国内での感染者数も下がりきらない上、新たな変異株などの脅威もくすぶる中、まだ時間はかかりそうだ。