中国「改正反スパイ法」7月1日に施行 “不当な拘束“相次ぐ恐れも… 監視強化に懸念
「治安強化」を最優先に掲げ、国内の外国人や企業への監視を強めている中国・習近平政権。外国企業に対して、はっきりした理由も示さないまま摘発したり、社員を拘束したりする事例が相次いでいます。そんな中、7月1日に施行される「改正反スパイ法」により、取り締まりが強化される懸念が広がっています。
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「キャップビジョン社は外国企業に対し、敏感な産業分野についてのコンサルタントを行っていた」
6月に中国国営メディアが放送したのは、外国企業に情報サービスを提供する会社の家宅捜索に密着したドキュメンタリーです。
習近平政権は「治安強化」を最優先に掲げ、国内の外国人や企業への監視を日増しに強めています。
例えば、外国メディアに対しては、取材活動への監視の頻度が増しています。
記者(中国・河北省、今年1月)
「男たち3人が、ずっと私たちの後をつけてきます」
今年に入り、NNNの取材班が行く先々には、当局の関係者が頻繁に現れるようになりました。
記者(中国・河北省、今年1月)
「すごいですね。10人くらいはいるでしょうか」
他の地方に行っても…
記者(中国・湖南省、今年5月)
「すごい数の車が後を追ってきます」
取材内容が当局にとって都合の悪いものではないか、見張っているとみられます。
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一方、外国企業に対しては、当局がはっきりした理由も示さないまま摘発したり、社員を拘束したりする事例が相次いでいます。
今年3月、北京に駐在する日本人男性が任期を終えて帰国する直前の空港で突然、連れ去られました。帰任の際に持ち帰るパソコンや書類などから、当局が“知りたい情報”を入手するためだったとの見方もあります。
そこで、社員が日本に帰任する際、離陸直前まで上司とテレビ電話をつなぎっぱなしにするといった対策が一部の企業で取られています。異変があれば、すぐに日本大使館などに対応を求めるためです。
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こうした中、7月1日から改正反スパイ法が施行されます。従来の「国家機密」に加え、さらに「国家の安全と国益に関わる情報の提供や収集」も取り締まりの対象としたのです。
これに専門家は――
名古屋第一法律事務所 夏目武志弁護士
「要するにやってはいけない行為が何なのかという対象が不明確、不透明。どこまでがOKでどこからがダメなのか、直ちに判断がつきにくい問題がある」
では、具体的に何をしたら身柄拘束などの可能性があるのか。
別の専門家によると、例えば中国で写真などを撮る際、軍の建物などが映り込まないか注意する必要があるといいます。また、資格や許可なく街頭アンケートを取る行為も、場合によっては罪に問われることがあるということです。多数の個人情報を許可なく集めて日本などに持ち帰ることは、摘発の口実を与えかねないといいます。
さらに、書店で古本や古い地図を買うことも、場合によっては禁止データが含まれることもあるため、注意が必要だといいます。
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一方で当局が法律を乱用すれば、自らの首を絞めることになるという指摘もあります。
名古屋第一法律事務所 夏目武志弁護士
「めちゃくちゃこの法律が乱用されて、外国人をどんどん捕まえるというようなことをしてしまえば、当然、誰も来てくれなくなります。そういった運用までなされることはおそらくあり得ないのでは」
中国当局がどこまで締め付けを強めるのか、現地に進出する外国企業の間でも警戒が広がっています。