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1本12,100円の苗木を2年間育てることで、土砂災害防止に自然体で貢献.......オフィスや個人宅で全国約3000本が育つ“戻り苗” 新しい林業との接点を生み出すソマノベース奥川季花さんに話を聞いてみた

2024年4月2日 21:11
1本12,100円の苗木を2年間育てることで、土砂災害防止に自然体で貢献.......オフィスや個人宅で全国約3000本が育つ“戻り苗” 新しい林業との接点を生み出すソマノベース奥川季花さんに話を聞いてみた

今回のゲストは、ソマノベース代表取締役の奥川季花さん。オフィスや家庭向けの「戻り苗」という商品で林業の新しいビジネスモデルを構築しています。林業の可能性を広げつつ、土砂災害の予防にもなるという一度で2度おいしい取り組みの魅力に“1分間で社会を知る動画”を掲げる「RICE MEDIA」のトムさんが迫りました。

どんぐりから始める山の再生!! 林業を通じ土砂災害リスクの低い山林を増やす

日常生活で触れる機会が多くはない林業。その林業との接点を今回のゲスト奥川さんは「戻り苗」という商品で作り出しています。

奥川さん「メインで扱っている“戻り苗”は、みなさんに植林するための苗木をどんぐりから2年かけて育ててもらうという新しい形の観葉植物です。各家庭や会社で植林用の苗木を育てることが出来て、それを通じて山にかかわるきっかけを作ってもらうことが出来るものになっています。

今までの植林は規模が大きな会社でないと参加出来なかったり、1本単位からの参加が難しかったりと植林に参加しにくいという課題がありました。その課題を1人1本〜10本とかの少ない単位でかかわることが出来て、みんなで植林に貢献が出来る世界を提供しています。でも、実はこの戻り苗って安くはないです.......1本12,100円します」

トムさん「それは確かに安くはないですね」

奥川さん「どんぐり募金みたいな活動をしている方ってたくさんいるのですが、それに比べるとやはり値段が高いと思います。ただ私たちは“どんぐり自体を売り物にしている”わけではなくて、2年間の体験とか、育てることを通じて山を知るきっかけみたいなものをちゃんと届けていくことを価値として提供したいと考えています。

2023年の12月に最初の戻り苗が初めて送り返されてきたのですが、半分くらいの方がお手紙などを通じて感謝の気持ちを伝えてくださいました。さらにその中の9割の方がリピーターとして『もう一度、2年間育てる』といってくれました。それだけ、山や木に対しての愛着がわくようなプロダクトになっています」

ルーツは実際の体験から、土砂災害による人的被害をゼロにする

奥川さん「私が“何故、ソマノベースを創業したのか”ということに関わってきます。和歌山県・那智勝浦町で高校生の時に、紀伊半島大水害という大きな台風災害に被災し、その時に友人がなくなってしまう経験をしました。

その際に土砂災害が起きにくい山を作っていきたいと思い、防災や土砂災害に取り組むNPOで働いたのですが、その中で感じたのは“災害とか山とか、そういう情報にほとんどの人が無関心”ということでした。

戻り苗を育ててもらうことで、2年間私たちから防災に関しての情報を伝える機会を作っていけることや、すごい長い時間一緒にいるからこそ木のことを大事に思える、さらに好きになれるといった状況に至りやすいのではないかと思い、戻り苗を作りました」

トムさん「戻り苗が2年間、災害情報への関心を寄せるための媒介(メディア)みたいな役割をしてくれているんですね。苗木・林業・土砂災害この3つの関係性をもう少し詳しく教えてもらうことはできますか?」

奥川さん「日本全国の90%ぐらいの市町村が、崩れたり土砂災害が起きたりする可能性が ある“土砂災害危険区域”を持っています。そういった山が増える理由の1つとして地質や降雨量が多いなどの要因が考えられます。

一方で木を切った後に再度植林されていない場合や、木が全く切られていないなど、人の手によって管理が出来ていないことで災害のリスクが高くなるという場合もあります。私たちは人が関わることによって影響を受けるリスクを防いでいきたいと思っています」

50年かけた丸太が2000円...!? 山との接点不足の理由とは

林業の現場を知るために実際にご自身も山へ入るという奥川さん。土砂災害に弱い山が人為的な理由で出来てしまう理由の1つを教えてくれました。

奥川さん「林業という仕事は一般的には、木を山から切って売ることです。その木を市場に売った時の値段がすごく安くなってしまっています。今だと50年かけて育てた丸太1本が2000円とかそれくらいにしかならないことがあります。

それだけの値段にしかならないものを、もう一度植林して50年かけて育てるかとなった時に『再投資はしないよ』という方が増えていることが大きな課題だと感じています」

トムさん「たしかに既に生えていた木を2000円ほどで売った後に、再度50年後のために投資するっていうのはビジネス的にも難しいですよね。そういった側面もあり土砂災害に弱い山も増えているということなんですね」

トムさん「そもそも植林用の苗を育てるという戻り苗にはどういった体験からたどり着かれたんでしょうか?

奥川さん「ソマノベースの最初の立ち上げメンバーは、私と同い年ぐらいの世代の子たちです。みんな林業の経験者ではなくて、デザイナーだったり、プログラマーだったり、本当にいろんな業種から来ています。

ある時、デザイナーの子と一緒に林業の現場に行ったところ、林業家さんや苗木業者さんたちが“どんぐりから育てている”というのを見て『これめちゃくちゃ面白くない!!』と盛り上がりました。ちょうど私たちの周りも結婚とか、出産をする子たちが増えてきている時でもあったので“木を植えること”をプレゼントできたら面白いよねとアイデアがはじまりました。

昔の日本では子供が生まれると木を庭に植えるという文化があって、出産祝いにすごくよいかもしれないと思い、企画書をコンテストに出したら、賞をもらってそこからちょっとずつスタートしていきました」

戻り苗はどんぐりを種として育てていく商品ですが、こちらにも隠れたこだわりがあると奥川さんは教えてくれました。

奥川さん「実は、私たちの戻り苗に使われるどんぐりにも特徴があります。戻り苗は和歌山県・田辺市の山に戻すのですが、田辺市のどんぐりだけを使って戻り苗のキットを作っています。

どんぐりボックスと呼ばれるものが、田辺市内のいろいろな公園とか、山の近くとか、どんぐりが落ちてしまうエリアに設置されていて地域の方にどんぐりを回収するお手伝いをしてもらっているんです。地域とか育ててくださっているみなさんで山を作るようにやっています。

どんぐりにこだわりたいと思ったきっかけは、私たちが見学させていただいた苗木を育てる取り組みをされている方々の中に、ウバメガシという種類のどんぐりを育てている会社さんとの出会いでした。通常はスギやヒノキを苗木業者さんが、木材用に育てていることが多いのですが、この方は『和歌山の伝統産業である紀州備長炭という炭の原木としてウバメガシも育てている』と教えてくれました。

ウバメガシは広葉樹のため成長するまでに長い時間がかかります。なので育てている人が少ない。もしこのまま植林が行われなければ、“伝統産業として衰退していくんじゃないか”という思いがあって、スギやヒノキだけではなくて広葉樹も植えることにしたと教えてくれました。

たまたま私たちがお伺いしたところが、そういった課題感に注目していた企業だったので、私たちもどんぐりで戻り苗を展開していくことにしました」

トムさん「戻り苗はどのくらい山にかえっているんですか?」

奥川さん「今、大体150本以上が第1期で戻ってきているところで、今みなさんに育てて頂いている数は、全国で約3000本を超えたかなと思います。企業様にも取り扱って頂く機会が増えました。

例えば、JR西日本さんでは脱炭素だったり、和歌山の山に還元していくという地域貢献という観点で戻り苗が採用されました。時間と手間を掛けて育てるという特徴に魅力を感じてもらえています。

いかに従業員の方や、地域の人に取り組みを浸透させていき、パフォーマンスではなく自分たちの手でやっているのかを伝える手段として戻り苗を選んでいただいております」

各地域から興味の声多数...戻り苗で目指したい世界観

奥川さん「1つめは戻り苗という仕組みをまずはいろいろな地域に広げていきたいと考えています。今は2拠点目として北海道で展開を始めたのですが、先週だけで7市町村くらいの方から展開したいという問い合わせをいただきました。地域に合わせていろいろな樹種を増やしていくなどしてみたいと考えています。

2つめは戻り苗の取り組みに参加している企業さんや、個人の方が全国各地にいるので、地域ごとでコミュニティを作りたいとすごく思っています。例えば和歌山県・田辺市の戻り苗に参加してくださってる人たちで“戻り苗コミュニティ”みたいなものができると、そのコミュニティに参加している人たちで、例えば地域の防災を考えたり、地域の山作りのことを考えたり、一緒に働く世代の人たちが真剣に考える機会を作ることが出来るのではないかと思っています」

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本記事は、日テレNEWS NNN YouTubeチャンネルメンバーシップ開設記念番組「the SOCIAL season1」の発言をもとに作成されています。

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