学校や家庭以外の「居場所」…家庭環境問題の支援「はざまの少年少女」に寄り添うための寄り添わない支援とは
今回のゲストはNPO法人第3の家族 代表・奥村春香さん。現在は定義されにくい少年少女が所属するコミュニティで感じる課題感を“はざま”という独自の解釈で考え、課題解決のお手伝いをするNPO法人「第3の家族」の取り組みを“1分間で社会を知る動画”を掲げる「RICE MEDIA」のトムさんが迫りました。
定義されにくい少年少女の課題感 “はざま”
奥村さん「私たちは、家庭環境問題のはざまで悩む少年少女たちが、自分の居場所を見つけるための支援を行っています。
いわゆる虐待とは定義されないけど、家で新しく生まれてきている“しんどさ”みたいなものを対象にしています。
“はざま”についての具体的な例としてはいくつかあります」
・親が離婚するしないで半年もめていて、それがしんどい場合
・高い塾や習い事もいっぱいさせてくれるんだけど、親子で楽しく会話したのはいつだったっけ?みたいな、ちょっと心に穴があいている場合
・服もすごく綺麗にたたんでくれるし、なんでも買ってくれる、でも逆に自分が選択することが なくて、自分は何もできないように感じてしまう過保護すぎる場合
奥村さん「親が悪いみたいなものでもなくて、やはり親も子も揺らいでいる中での、すれ違いで子供が居場所を見失う状態が“はざま”と呼べると考えています。
こういった状態が、例えば心の病気だったり、自死だったりというリスクを招きかねないので、そういった居場所を失っている状態をなんとかしてあげたいなと思っています。
今はボランティアの方々も含めたスタッフは20名ぐらいで、 利用ユーザーは月に大体3000人ぐらいです。延べの人数が3万人ぐらいになっています」
「第3の家族」サービスに込めた思いと特徴
奥村さん「第1の家族が血縁の家族、第2の家族が地域とか学校の友達、第3の家族が顔の見えない他者としての第3の家族と考えています。
第3の家族は、第1・第2の家族に寄り添ったり、あとはその子の一生の居場所である必要はないと思っています。
最終的には第1の家族や、第2の家族から居場所を見つけてほしいけど、そこまで1人で問題に対処することは大変。そういう時に第3の家族を使ってもらい、最終的に自分の居場所を見つけられた時には、第3の家族はもう忘れてほしいなと思っています。
ある種自分の居場所を見つけてもらうための、通る道やプラットフォームだと考えていて、裏方的という意味を込めて第3の家族としてやっています」
大人の影がないことによる使いやすさ
奥村さん「第3の家族では、gedokunという自分の悩みや課題感を共有し、発散できるサイトの運営をしています。
私自身が友達にも誰にも相談できず、悩みを口に出すことがしんどい状態で、だんだん疲れてしまって、1人で抱え込んでた時期がありました。
自分しか見られないTwitterアカウントを作り、そこにずっと悩みを吐き出すみたいなことをしていて、それが私にとっては逃げ場になっていました。
ユーザーリサーチをかけたところ、スマホのメモ帳に悩みをひたすら書き込む子とかも居たりして、悩みを誰かに話すだけじゃなくて『とにかくリリースするニーズ』もあるなと思ったのでgedokunを始めました。
gedokunは自分の悩みをテキストで投稿することができます。投稿に対して『わかる』『エール』のボタンが用意されていて、共感や応援の要素が可視化される仕組みです。
gedokunでが、投稿への返信などは出来ません。共感だけで励まし合う場所になっています」
トムさん「自分たちの悩みを吐き出すのは、結構勇気がいる行動だと思っています。ここでは匿名性とかが担保されているので、gedokunを知っていたら使えそうと感じ、結構ハードルが低いサービスになっていると感じました」
奥村さん「大学時代にデザイン工学を学んでいて、こういうものがあったらいいなと思いインターネットに公開したところ、思った以上に悩みが集まってきたんです。
そこに集まる悩みの多さや、複雑さを見てこの社会問題は全然解決されていないんだと思いました。
そこから自分でやらなきゃいけないとどんどん活動を広げてきました。
他にはnigerunoというサイトも運営しています。はざまにいる子たちがさらに多くの選択肢を選ぶことが出来るように、想定されるさまざまな情報を集めてアクセスできるようにしています。
冷静に課題を解決できるデザインや、人と情報の接面がどうあれば心地よいかというUI(ユーザーインターフェース)に配慮したクリエイティブを大切に作っています」
今後の展望 今のサービスにちょっと足りないもの
奥村さん「今ははざまの課題感を解決する場合に、少年少女に任せきりになりすぎていると感じています。
自分で情報とか悩みを吐き出して、心のケアをして、情報収集をして、というのが理想ではありますが、その状態がすごく本人に負担をかけすぎていると考えています。
またいくらインターネットネイティブとはいえ、まだそれを学んでいる途中の少年少女たちが、自分で情報を取捨選択していく難しさもあると思っています。
そういった部分をAIの活用も視野に入れて、補助していくことができたらいいなと思ってます」
トムさん「『支援してあげるよ』みたいな形で大人に来られても、そこのサービスを使う心的ハードルみたいなのが結構高いという場合もありますよね......」
奥村さん「そういったハードルもあると思います。あとは、人によっては悩みを発露する、口に出すことが怖いみたいな子とかもいます。そういう内向的な子とかにも、寄り添っていきたいという思いがあります」
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本記事は、日テレNEWS NNN YouTubeチャンネルメンバーシップ開設記念番組「the SOCIAL season1」の発言をもとに作成されています。