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ふるさと解散~豪雨時代 被災集落からの警告~

2022年12月2日 13:07
ふるさと解散~豪雨時代 被災集落からの警告~
福岡県朝倉市の山間の集落。豪雨災害で住む場所がなくなり住民たちが“解散”に追い込まれた。災害対策としての砂防ダムを建設で、元の場所に家を再建できなくなったためだ。豪雨災害でふるさとをの失い、豪雨災害に備え見直しを迫られる暮らしの安全。経験したことのない“豪雨時代”に私たちはどう向き合っていけばいいのか?

 ◇◇◇

豪雨災害せいで、もし、あなたのふるさとが解散したら…

住民・小川伸博さん
「僕にしろ、みんなにしろ、仕方がないじゃすまんもんね」

集落すべての家が被害を受け、人の姿が消えました。奇跡的に残ったのは、傷ついた桜だけ。

小川伸博さん
「春に花が咲くかどうかは分からん。完全に復興するのは、まだ先の話じゃけん」

春、あの桜は…。

「咲きましたね」

小川伸博さん
「うん。これが咲くとは思わなかった。こげんケガをしとるのに。また戻ってきてから、みんなで花見ができるようになるといいけど。(桜の木が)よく頑張ったけん。我がも頑張らないかん」

2017年、福岡県や大分県を中心に記録的な大雨となった「九州北部豪雨」。朝倉市の杷木松末(はきますえ)の中にある、小河内(こごうち)地区は流れてきた土砂や流木にのみ込まれました。

自宅の復旧作業に追われる小川信博さん。避難所から自宅に戻ると流れ込んだ土砂や流木が山積みに…。妻や子は無事でしたが、避難生活を余儀なくされました。

小川伸博さん
「完全に復興するのは、まだ先の話じゃけん。1日も早い復興を…」

豪雨から1年を前に、復旧工事が始まりました。朝倉市から、厳しい現実を突きつけられます。

市役所職員
「この地域を守るためには砂防堰堤(ダム)が必要であると。この堰堤(えんてい)の土砂がたまる場所には、家を再建することができない」

小河内地区に土砂をせきとめるための砂防ダムが建設されることになったのです。ほとんどの住民が元の場所に家を建てることができなくなりました。

ダム予定地の住民
「いまさら新しい地区には入りきらんもんな。年がいってる」

小川伸博さん
「冗談だって言う相手がおらん」

季節の移ろいとともに景色を変えられていくふるさと。あの桜だけは変わらず、花を咲かせます。豪雨から4年あまりがたった去年11月。

「あーこんにちは」と久しぶりにふるさとに集まった小河内にゆかりのある人たち。砂防ダムが建てられ、変わってしまう前の風景を記憶に留めておこうと企画された最後の宴。そこで、伝えられたのは…。

小河内区長・中村亨さん
「小河内地区としましては、ほぼ家が見ての通りなくなりました。そこで小河内という集落は来年3月をもって解散したいと思います」

小河内地区を解散する。住民たちで半年以上、話し合った結果です。

「出とる方としては帰るところがない。帰るところがないんやけん」

小川伸博さん
「地区そのものがなくなるっていうのが、ふるさとがなくなる感じやろ?」

ふるさとを失った小川さん。

小川伸博さん
「みんなが見に来ればいいばってんが、もう散りよるけんね。もうみんな来ることはなかろうね」

それでも、小河内に残る自宅に帰りたい。今もそう願い続けています。

小川伸博さん
「ふるさとは なくなっても(心に)あるもんですね。『どこ行きたいの?』と言われたら、『ここ』って僕は言いたいもん」

2022年10月9日放送 NNNドキュメント’22『ふるさと解散~豪雨時代 被災集落からの警告~』をダイジェスト版にしました。