泉・立憲民主党の多難の船出 課題とは?
2021年の衆議院選挙で議席を減らした責任をとり、辞任した枝野前代表。後任を決める代表選挙では、泉健太氏が逢坂誠二氏、小川淳也氏、西村智奈美氏を破って新代表に選ばれた。22年夏に参議院選挙が迫る中、泉新代表の下、立憲民主党は課題が山積している。党が抱える課題を分析する。
■「政策立案型」の泉立憲民主党
野党第1党「立憲民主党」の新しい顔として、初めて代表質問の舞台に立った泉健太代表。批判ばかりというイメージからの脱却をはかるため、17の提案を織り交ぜながら「政策立案型」の新しい党のあり方をアピールした。
■共産党と近い党、のイメージからの脱却
その立憲民主党が、22年夏の参議院選挙を前に直面している課題のひとつが、共産党との協力のあり方だ。
21年の衆議院選挙で立憲民主党は、市民連合を介して共産党・れいわ新選組・社民党と政策協定を結んで戦った。選挙終盤には、政権交代が実現した場合、共産党が「閣外から協力する」と政権の枠組みを示した。
これにより、共産党が立憲民主党との共闘をアピールする一方で、自民党からは「立憲共産党」とやゆされた。
立憲民主党の前執行部の1人は「選挙協力のために共産党と調整したのは仕方なかった。しかし、共産党が舞い上がって、“政権選択選挙”と銘打ったのが間違いだった」と振り返り、共産党との共闘が、比例票を減らした一因となったと分析した。
それゆえ、泉代表は就任直後の会見で、共産党と「限定的な閣外からの協力をする」とした合意について問われ、「現時点で何かが存在しているということはない」と白紙に戻ったとの認識を示した。
一方で、泉代表は、22年夏に行われる参議院選挙では、32ある改選定数1の「1人区」においては「可能な限り一本化をはかっていきたい」との考えを示している。一本化するには、共産党との候補者調整が不可欠である。政権の枠組みは白紙にして、選挙協力だけは進めていきたいとの狙いが透けて見える。
党内からは、「参議院選挙は政権選択選挙ではないので、政権の枠組みを議論する必要はない。選挙協力だけすれば良い。共産党とも、候補者の一本化をどうするか、早く調整にはいらなければといけない」と焦りの声も上がっている。
しかし、立憲民主党が、共産党と調整に入るには、様々な障壁がある。
■共産党との“決別”を求める支持団体「連合」
その最大の障壁は、立憲民主党の支持団体である「連合」の存在だ。「連合」は21年12月、衆議院選挙の総括を発表した。
総括では、連合が支援する政党が、国民民主党と立憲民主党に分かれ、「一丸となって戦うことの困難さがあった」とした上で、「困難さを増長させた背景として、共産党との関係があり、動員力が発揮しづらいケースがあった」と指摘した。
連合の芳野会長は会見で、立憲民主党について、共産党とは決別すべきとの考えを示した。その上で、「立憲民主党・国民民主党・連合の3者が十分に政策を共有し、連携し、力を合わせることがなにより重要」と強調した。
参議院選挙については、1人区で与野党1対1の構図をつくることの重要性には理解を示すものの、あくまでも「国民民主党と候補者調整すべき」と述べた。
その上で、共産党との選挙協力については、「その先については、政党がやることなので、連合としては連合の考え方をお伝えすることになる」とけん制した。
■国民民主党は強気の姿勢
こうした中、泉代表は、講演で、参議院選挙でも国民民主党と連携したい考えを示し、「国民民主党との関係については大事にしていきたい」とラブコールを送った。
一方、衆議院選挙で議席を増やした国民民主党は、これまで立憲民主党が中心的な役割をしてきた、国会対応での野党共闘の枠組みから抜けると宣言。立憲民主党からは距離をおく。「日本維新の会」と共同で法案を提出するなど、連携を強めている。
国民民主党の幹部は、立憲民主党について、「今の立憲とは二度と組めないし、“立憲共産党”には未来がない。立憲民主党が、共産党と手を切らない限り、連携できない。参議院選挙については、ブレずに、比例票を取る戦いをするしかない」と述べ、強気の姿勢を見せた。
■第3極「日本維新の会」の台頭
さらに、立憲民主党を悩ませるのが、衆議院選挙で選挙前の4倍近い議席を獲得し、第3極として存在感を増している「日本維新の会」だ。文書通信交通滞在費の問題も、日本維新の会の新人議員の問題提起から始まった。
日本維新の会は、参議院選挙では、重点選挙区として、大阪・兵庫・京都の関西圏だけでなく、東京・神奈川をあげ、首都圏での党勢拡大にも意欲を見せている。
さらに1人区にも候補者を擁立する考えを示している。日本維新の会の存在感が増すことにより、1人区で、与野党1対1の構図を作るハードルは高くなっている。
そのため、立憲民主党のベテラン議員は、「参議院選挙でも維新は相当支持を集めるだろう。国民民主党が日本維新の会と、今後、さらに連携を深めることはあり得る。立憲としては、そこを警戒しながら国民民主党と連携を回復させること」だと、国民民主党との連携の重要性を指摘している。
■党内にも課題が山積
党内にも課題を抱える。西村幹事長、大西選対委員長ら新執行部が参議院選挙に向け、他の野党との調整にあたるが、党務の経験が少なく、党内からは調整力を不安視する声があがる。
立憲民主党のベテラン議員は、「選挙はキャリアと人間関係がものをいう。今の執行部では他党との調整ができない。今はお手並み拝見、ハネムーン期間みたいなもの。22年になり、通常国会での論戦が始まり、参院選も控え、本当の意味で力量が問われる」と指摘する。
そして、政党支持率の低迷も大きな課題だ。NNNと読売新聞が21年12月に行った世論調査で、立憲民主党の支持率は7%。41%の自民党に大きく離されている。
「政策立案型」を打ち出し、新たな立憲民主党への再生をはかる泉代表。課題を乗り越え、参議院選挙で議席を伸ばすことができるのか。22年は正念場となる。