【報道局長解説】戦後70年談話の裏に安倍氏の葛藤
8日、奈良県で選挙応援中の安倍元首相が銃で撃たれ死亡した事件について、日本テレビ・伊佐治報道局長が解説します。
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――この事件で民主主義の根幹が揺るがされたと言われています。
はい。政策を訴える自由が妨害されることなく選挙が行われることは、民主主義の基本です。
たとえば紛争後の途上国では、選挙が公正に行われる事自体が難しいので、国連PKOが監視したり国際社会が協力しなければ実現できません。
一方、日本ではルールにのっとり公正に選挙が行われてきました。今回はその常識が覆された事に強い危機感を覚えます。
――政治家としての安倍元首相を振り返ってどう感じますか?
安倍元首相とはインタビュー取材などで向き合いましたが、「戦う政治家」を自認し、持論を曲げない強さはありました。
その頑固さが時として国会でヤジを飛ばすなどのふるまいにつながり批判もされました。
一方で、外交には強い自負とこだわりがありました。各国首脳と個人的関係を築き、G7サミットではトランプ大統領とヨーロッパ首脳の仲介役を買って出るなど日本の存在感を高めました。
――中でも印象が強かったのはどの場面でしょうか?
日本の過去の歴史を教訓に首相が未来へのビジョンを語った戦後70年談話です。中国などアジア各国に対する日本の戦争責任をどこまで認めるか、首相の歴史認識が問われました。
ここで安倍元首相は日本の行為が「侵略」だったと直接言及することは避ける一方で「侵略」「おわび」「反省」といった言葉は談話に含めました。
保守派の一部から文句も出ましたが、結果的に、中国などの反発を最小限におさえました。
こうした妥協は保守派の支持が堅い安倍元首相だから許されたとも言われます。現実的な判断は長期政権への基盤ともなりました。
――10日は参院選の投票日となります
はい。理不尽な暴力にひるむことなく私たち一人一人が投票に行き、民主主義を守っていかなければいけません。