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地方議会“政務活動費”不正相次ぐワケ

2016年10月7日 17:37
地方議会“政務活動費”不正相次ぐワケ

 中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。7日のテーマは「議員活動の費用」。

 「約3400万円」―この数字は「政務活動費」の不正問題で揺れている富山市議会に関するお金だ。議長までも不正に手を染め、辞職する異常事態になっている富山市議会だが、議員辞職した12人によって不正請求されていた政務活動費の合計が約3400万円だ。

 地方議員の政務活動費をめぐる不正が次々と明らかになる中、香川・高松市で先月24日、「政務活動費」をメーンテーマに全国の市民オンブズマンが集まる「全国市民オンブズマン連絡会議」が開かれた。不正を監視する弁護士や市民ら250人が集まり、情報公開の在り方などが議論された。


――政務活動費というのは、そもそもどんな制度なのか。

 政務活動費は、地方議員に報酬とは別に支給され、法律では「議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費」とされている。自治体によって支給額は異なるが、全国で最も高額な東京都議会では、議員1人あたり毎月60万円が支給されている。


――本来は、よりよい政治のために議員が仕事するためのお金だが、なぜ不正が相次いでいるのか。

 まず問題なのが透明性の低さだ。政務活動費は、収支報告書や領収書などを議長に提出する義務があり、それをチェックすることで使い道を監視することができる。

 しかし、多くの自治体では、領収書を見るためにはわざわざ議会に足を運ぶ必要があるほか、資料をコピーするとなると大量になるので数万から数十万円かかるケースもある。コピー代が数万円となると一般市民にはハードルが高い。

 さらに、政務活動費を受け取る仕組みにも問題があるとされている。大半の自治体では「前払い方式」で、政務活動費を支給している。議員は使った金額を後日精算して残った分を返金する仕組みだが、先にもらってしまうと「返したくない」という意識が働き、不正につながるとの指摘もある。

 市民オンブズマンが公開した、政務活動費が実際どれだけ使用されたかの割合を示したランキングを見ると、1位は富山市で100%使い切っていて、やはり不自然だ。


――不正請求は、地方議会だけの問題なのか。

 国会議員についても、政治資金収支報告書における「高すぎるガソリン代」や「白紙の領収書」が問題になっている。

 さらに、国会議員には「文書通信交通滞在費」という費用が毎月100万円ずつ支払われている。しかし、これは使い道を公開するどころか報告する義務もないので、適切に支出されているかを議論することすらできない状況にある。

 さらに、その使い道の決め方にも問題がある。法律では「公的な書類を発送したり、公的な通信等(など)のため支給される」と定められている。

 これだけ見ると、郵便代や電話代などに使われると思うが、「通信等」の「等」という1文字があることで、使い道の定義があいまいになってしまう。

 今回のポイントは「透明性を高める」。まず、地方議員の政務活動費について、市民オンブズマンの会議では「収支報告書や領収書などを議会のホームページで公開するべき」と決議された。

 ホームページで公開している地方議会はまだ少ないのが現状で、検討すべき課題だ。また、ホームページで公開されれば、市民が簡単に情報にアクセスできるので、当然、議員の側も監視の目を気にして不正をしづらくなる。

 一方、国会議員の文通費については、まずは最低でも使い道を報告、公開させる仕組みを作ることが必要だろう。