北方“2島先行返還”3つのシナリオを解説
12月に予定されている安倍首相の地元、山口県・長門市での日露首脳会談。北方領土問題に打開策はあるのだろうか。“2島先行返還”の課題を政治部・矢岡亮一郎記者が解説する。
■2島先行返還とは
歯舞群島と色丹島の2島を先に返還してもらい、残る2島は引き続き返還を目指す。つまり、切り分けて考えるという案だ。
日本政府の公式な立場は“4島返還”だが、ある政府高官は「原則論を主張し続けても領土は1ミリも返ってこない」として、4島返還を目指す立場は変えないが、「2島先行返還も一つの選択肢」と話している。
■3つのシナリオ
4分の0より4分の2の方が前進している印象はあるが、課題がいくつかある。ここで、2島先行返還のシナリオを3つあげてみる。
1.『残る国後・択捉の2島の帰属も日本にあると確認されるパターン』
2.『残る2島の帰属を継続協議とするパターン』
ここでは単に継続協議というだけでなく、例えば、漁業権や自由に往来する権利など、どこまで日本側の権利を確保できるかも焦点になってくる。
3.『継続協議にもならず、2島で交渉が終わるパターン』
3だと日本は受け入れられないが、これまでのプーチン大統領の発言を分析すると、大統領の方針はこの3に近いとの見方がある。
■“日ソ共同宣言”通りだと…
その根拠が、“日ソ共同宣言”だ。日露間には、様々な約束事がかわされているが、交渉にあたってプーチン大統領が最も重視していると言われているのが“日ソ共同宣言”で、「平和条約の締結後、歯舞・色丹の2島を日本に引き渡す」というものだ。
前提条件となっている「平和条約を結ぶ」とは、もう領土をめぐる争いはやめよう――つまり、「国境線を画定させる」ということだ。つまり、“日ソ共同宣言”通りなら択捉島・国後島と色丹島・歯舞群島の間に国境線が引かれ、2島で交渉は終わりとなってしまう。
仮に2島先行返還をとった場合、残る2島に交渉の余地を残し、どういう合意ができるのか。また、安倍首相の打ち出す“新しいアプローチ”で、これまでの発想を超える打開策があるのか。ここがポイントになりそうだ。