トランプ氏勝利 日本政府に衝撃広がる
アメリカ大統領選挙で共和党のトランプ氏が勝利したことについて、日本政府の反応。
■日本政府はトランプ氏の勝利をどのように受け止めているか?
表向きは大統領が誰になってもいいように準備はしてきたと平静を装っているが、政府内には衝撃が広がっている。
菅官房長官「日米同盟というのは日本外交の基軸であって、アジア、太平洋そして世界の平和と繁栄のために米国と緊密に協力していく。このことにはどなたが大統領になろうと全く変わりはない」
菅官房長官の冷静な発言とは裏腹に政府・与党内には緊張感が漂っている。まずは安全保障への影響。防衛相経験者の一人は「日米同盟の根幹が揺らぐ可能性もある。日本は足元を固めるしかない」と語っている。ある自民党議員は「いつまでもアメリカに頼る時代は終わりに向かっている」と話している。
また、先月トランプ氏の側近と会談した民進党の長島元防衛副大臣はこのように述べた。
長島元防衛副大臣「日米同盟関係の基本構造を見直そうということになったとすれば、これは日本が独自でどれだけできるか、やるべきかという議論も真剣にはじめないと、ずれがどんどん大きくなってくる。日米の間でね」
外務省幹部は、在日米軍の駐留経費の負担増は求めてくるかもしれないが、撤退までは言ってこないだろうと話しているが、戦後、国家の安全保障を日米同盟に頼ってきた日本にとって大きな転換点になる可能性もはらんでいる。
■日本周辺の状況も変わってくるのか?
トランプ氏が北朝鮮や中国、ロシアなどとどういう距離感で臨むのかは、日本の外交安全保障にも大きな影響を与える。核ミサイル開発を続けて日本の安全保障上の大きな脅威となりつつある北朝鮮だが、自民党の閣僚経験者は「北朝鮮もまずは新政権の様子を見るのではないか」と話している。
またある政府関係者は、アメリカとロシアの関係が今後、変化する可能性が出てきたことで「北方領土交渉でのロシア側の姿勢にも微妙な影響が出る可能性がある」と話している。
中国との関係も未知数だ。今後の東アジアのパワーバランスが大きく変化する可能性もある。
■日本政府はどう対処していくのか?
なるべく早くトランプ氏や周辺と接触して日本側の考えを伝え日米同盟の重要性を理解してもらうという考え。国家安全保障局の幹部は「トランプ氏は何を考えているかわからないし何も考えていないのではないか。安全保障の問題は最初から話すしかない」と語っている。こうした中、テレビで選挙結果を見守っていたという安倍首相は河井首相補佐官を早速アメリカに派遣し新政権のメンバーと接触するよう指示した。
河井首相補佐官「(安倍首相から)早速アメリカを訪問して、新政権の関係者と会談するようにというご指示をいただきました」
河井補佐官は週明けにアメリカを訪問する考え。しかし外務省幹部はトランプ陣営について「組織だっていない。トランプ氏と個別につながっている」と話し把握しづらいという認識を示している。誰に会えばトランプ氏の政策に影響を与えられるのか当面、苦労することになりそうだ。
■TPP(=環太平洋経済連携協定)の行方については?
TPPに強く反対していたトランプ大統領になれば発効は難しいという見方が政府内に早くも出ている。官邸関係者は早くも「TPPはもうダメだろう」と話している。それでもここまでTPPの早期承認を目指してきた政府・与党は10日の衆議院本会議で承認案を採決する方針だが民進党は反発している。
民進党・安住代表代行「日本があすTPP本会議で強行採決したら世界の笑いものになると思う」
ある農水相経験者も「オバマ大統領が残りの任期中にTPPを批准するというのはクリントン氏が当選するという前提だった」と語っている。自民党幹部は「だから大統領選の前に採決しておくべきだったんだ」と嘆いている。