最新型護衛艦「くまの」に初潜入 少子化で“隊員不足”が続く自衛隊…デジタルで「省人化」実現
少子化を背景に自衛隊でも隊員不足が続く中、防衛省は、従来より少ない人員で運用できる護衛艦の導入を進めています。レーダーなどに映りにくい高いステルス性を備え、“省人化”を実現した新型護衛艦「くまの」に初めてカメラが入りました。
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浜田防衛相が、海上自衛隊の最新型護衛艦の視察に訪れました。まっすぐにのびたアンテナが目を引きます。
浜田防衛相
「護衛艦『もがみ』への期待は大変大きく…」
「もがみ型」と名付けられた護衛艦は、従来の任務のほか、機雷の除去も可能です。ステルス性も備えていて、今後、22隻が就役予定です。その「もがみ型」の2番艦「くまの」に日本テレビのカメラが入りました。
ヘリコプターの格納庫から艦内に入り、向かったのは操船や見張りなどを行う「艦橋」です。艦橋では、出港の準備が行われていました。隊員の前に並ぶモニターが目につきます。
――全部デジタル化されているんですね?
掃海隊群司令部 門田正文FFM室長
「そうですね。この装置は『ECDIS』と呼ばれる装置でして、護衛艦で本格的に採用したのは初めてです」
ECDISは航海用のナビゲーションシステムです。民間船舶では導入が進んでいるものです。これまでは自分の位置を海図で確認し、浅瀬などの情報を得る必要がありましたが、この船では――
掃海隊群司令部 門田正文FFM室長
「GPSと組み合わせまして、電子画面上に表示できる」
操舵装置も護衛艦としては初めて、タッチパネルを備えたものになっています。こうしたデジタル化によって、定員を減らす“省人化”を実現できたといいます。
掃海隊群司令部 門田正文FFM室長
「普段の航海におきましては4人で操艦します。これは従来の護衛艦の半分になっております」
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「反撃能力」の保有を決定するなど安全保障政策を大きく転換した日本。しかし、若い世代の隊員が定員の8割に満たない人手不足の状態が続いています。
省人化の取り組みは、護衛艦の中枢でも進められています。
掃海隊群司令部 門田正文FFM室長
「この先がCIC(=コンバットインフォメーションセンター)、『戦闘指揮所』と呼ばれる特別な資格をもった者のみが入れる区画となっております」
「くまの」の戦闘指揮所の撮影が初めて許可されました。内部には、360度・全周にスクリーンが設置されています。
掃海隊群司令部 門田正文FFM室長
「外の様子をこちらのモニターあるいは、前のスクリーンで確認することができまして」
アンテナの下にある複数のカメラでとらえた映像によって、戦闘指揮所でも周囲の確認や警戒ができるようになりました。従来の護衛艦より見張り員の数を減らすことができたといいます。
掃海隊群司令部 門田正文FFM室長
「この区画はダメージコントロールのエリアになっておりまして、今までの護衛艦ですと専用の部屋があったわけですけれども、本艦ではCIC(戦闘指揮所)の中にあります」
さらに、これまで人の目に頼ることが多かった火災や浸水の感知をカメラ一体型のセンサーで行うようにして、情報を戦闘指揮所に集約しました。また、腕に装着した生体センサーによって、乗組員の位置や健康状態をCICで把握することができるといいます。
デジタル化による設備の統合に加え、幹部と一般隊員の食堂を1つにするなどの効率化によって船体はコンパクトになり、従来の護衛艦の半数以下、90人で運航可能です。
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日本の防衛を担う「もがみ型」護衛艦ですが課題もあります。
――1人で複数の任務を担当される場面が、省人化によって増えている
護衛艦「くまの」 櫻井敦艦長
「確かに人数が少ない分だけ、1人が2役3役はこなさなくてはいけなくて、そこは訓練や教育等で埋める必要はあるんですけども、今までの本人の能力以上のことを引き出して、船の仕事をまかなっておりますので」
現在は訓練を行っている新型護衛艦。今後は日本周辺の警戒監視任務などに就く予定です。