松野官房長官 午後会見(6月2日) 持続化給付金詐欺など
松野官房長官は2日午後の会見で、国の持続化給付金をだまし取ったとして東京国税局の職員らが逮捕された事件を受け、「誠に遺憾だ」と述べました。
<会見トピック>
▽国家安全保障会議開催
▽持続化給付金詐欺
▽中国公船の領海侵入
▽北方領土問題
▽官房長官と米国サリバン上院議員との面会
▽肥料値上げ
▽アメリカ・台湾の経済連携
会見の概要は以下の通りです。
――NSC関係閣僚会合について。
先ほど、官邸でNSC関係閣僚会合が開催されていたが、どのような議論をしたのか(松野官房長官)本日、国家安全保障会議の4大臣会合を開催をし、国家安全保障戦略等について議論を行いました。
議論の詳細につきましては差し控えさせていただきたいと思います。
――持続化給付金の詐欺が相次いでいる。東京国税庁の職員らが逮捕されたことについて政府の受け止めは。あわせて、こうした給付金の不正受給防止に向けた政府の対応は。
(松野官房長官)持続化給付金は、新型コロナの影響で苦しむ事業者の事業継続を支えるため、簡易な申請手続きにすることで、必要とされる方に迅速に給付できるように制度設計をされています。
今回の事案は、この制度を悪用した不正受給の疑いがあり、高い倫理意識を求められる公務員がこのような事態を招いたことは誠に遺憾であります。
持続化給付金の申請は昨年の2月で終了しましたが、現在申請を受け付けている、事業復活支援金においては、不正受給防止への対応として商工会議所等による申請書類の事前確認を行うといった、対策を実施をしているほか、実際の申請にあたってはこれまでの給付金で得られた、不正案件の知見を最大限活用するなど不正防止策を講じた上で適正な給付に努めているところであります。
また不正の疑いがある案件に対しては事後的な調査を行うなどの対応を進めているところであり今後とも不正受給に対して、厳正に対処していく考えであります。
――不正受給の多さを踏まえれば、危機対応とはいえ、バラマキ政策は抑制的であるべきだとの指摘もあるが、所見は。
(松野官房長官)先ほど申し上げました通り、不正受給防止策をしっかりと講じていくことが重要であると考えています。
――中国海警局公船による領海侵入について。本日午前、沖縄県尖閣諸島周辺の日本領海に中国海警局の公船が相次いで領海侵入した。現場の状況や中国政府への抗議など政府の対応について。
(松野官房長官)本日午前10時42分ごろから午前10時58分ごろにかけて、中国海警局に所属をする船舶4隻が順次、尖閣諸島周辺のわが国領海に侵入しました。その後これら4隻は午後0時13分ごろから午後0時30分ごろまでいずれも領海から退去しました。
現場海域においては、海上保安庁の巡視船が当該船舶に対し領海からの退去要求や進路規制を繰り返し実施をし、領海外へ退去させたところであります。
中国海警局に所属する船舶のこのような活動はそもそも国際法違反であり、本事案についても、外交ルートにおいて厳重に抗議し速やかにわが国領海から退去するよう強く求めたところであります。
中国海警局に所属する船舶が尖閣諸島周辺のわが国領海に侵入したことは誠に遺憾であり、受け入れられるものではありません。
引き続き緊張感をもって、尖閣諸島周辺の警戒監視に万全を尽くすとともに、中国側に対しては冷静かつ毅然として対応していく考えであります。
――本日午後、北海道知事らが、北方領土問題の解決に関して、岸田首相に要請し、松野長官も同席した。どういったやりとりがあったのか。
また、首相は、昨日の衆院予算委員会で、領土交渉で、4島返還を目指す方針を明言しました。2018年のシンガポールでの日露首脳会談では、当時の安倍首相が、歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを明記した、日ソ共同宣言を、交渉の基礎に位置づけ、事実上の2島返還方針に転換しました。岸田首相も「2018年以降の首脳間のやりとりを引き継ぐ」と、これまで答弁してきましたが、この方針転換については、本日、説明したのか。
(松野官房長官)本日岸田総理と北海道知事及び元島民の団体の代表者等が面会をし、総理に対して、北方領土問題解決等の要請が行われました。
総理から北方領土問題に関するわが国の立場や、北方墓参を含む北方四島交流等事業について、ご高齢になられた元島民の方々の思いに何とか応えたいという考えにいささかの変わりもない。
しかし、他方で、現下のウクライナ情勢を受けた今このときの情勢に鑑みれば、平和条約交渉やこれら事業の展望について申し上げられる状況にはないこと、当面交渉を行える状況にはないところでありますが、北方領土問題を解決して平和条約を締結するという政府の基本方針に何ら変更はないこと。
北方領土問題は国民全体の問題であり、政府と国民が一丸となって取り組むことが重要だと考えていることをお伝えしました。
その上で改めて北方領土問題に関する政府の立場を述べれば、北方領土は、わが国が主権を有する島々であり、わが国固有の領土であります。
政府としてこの立場に変わりはなく平和条約交渉の対象は、四島の帰属の問題であるというのがわが国の一貫した立場であります。
――サリバン議員との面会についてうかがいます。先ほど長官はアメリカのサリバン上院議員と面会されましたが、どのようなやりとりがあったのか。
(松野官房長官)本日午後3時10分から30分間、私は、訪日中のダニエル・サリバン米国連邦上院議員による表敬を受けました。
私からサリバン上院議員の訪日を歓迎するとともに、基本的価値を共有する同盟国である日米は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、国際社会を主導し、引き続き、豪州、インド、ASEAN、その他の同志国と連携していく旨述べ、地域情勢の理解が深いサリバン議員の引き続きの協力を要請しました。
これに対して、サリバン議員から日米が緊密に連携し、インド太平洋地域の平和と繁栄に向けた取り組みをリードしていくことが重要である旨述べられました。
このほか、ロシアによるウクライナ侵略を受けた国際社会の連携や、中国、北朝鮮をめぐる情勢などに関し意見交換を行ったところであります。
また私から拉致問題の即時解決に向けた全面的な理解と協力を求めてサリバン上院議員から支持を得たところです。
日米同盟の一層の強化に向けて大変有意義な意見交換を行うことができたと考えています。
――JA全農は今年6月から10月に販売する肥料の価格について、前期に比べ最大94%値上げすると発表しました。ロシアのウクライナ侵攻で、肥料の原料の産出量が多い国からの輸出が停滞し、国際市況が高騰したことなどが原因です。
値上げによって生産者の負担が重くなるほか、農産物の価格が上昇し、国民生活にも影響が出る懸念があります。政府としての受け止めと今後の対応についてうかがいます。
(松野官房長官)国内肥料の流通シェアの約半分を占める全国農業協同組合連合会が先般、6月以降に出荷する肥料の卸売り価格を公表し、前期に比べ大幅な値上げとなったことは承知をしています。
肥料の原料の多くを海外に依存している中でロシアのウクライナ侵略等を原因として国際的な肥料価格の高騰が生じています。
このため4月に取りまとめた原油価格、物価高騰等総合緊急対策において、肥料原料の調達先の多角化による安定的な調達、農業者の肥料コストの低減に向けた肥料の使用料の低減や堆肥等国内の肥料の活用、これらを支援することとしたところであります。
今後とも肥料価格の動向が農業経営に及ぼす影響を十分に注視をし、適切に対応してまいりたいと考えております。
――米国と台湾の経済連携強化の新たな枠組みについておうかがいいたします。
米国政府は台湾と経済分野の連携を強化するための新たな協議体、21世紀の貿易のための米台イニシアチブの発足を発表いたしました。デジタル経済や農業など11分野を対象としております。
米国はIPEFに不参加となった台湾に対し、個別の枠組みで経済連携を強化する方針ですが、この新たな枠組みについての政府の認識をおうかがいいたします。
また、一方で、台湾側は引き続きIPEFへの参加を求める考えを示しております。改めて台湾のIPEF参加についての日本政府の考えをおうかがいいたします。
(松野官房長官)1日、米国と台湾は21世紀の貿易に関する米台イニシアチブを立ち上げたと承知をしていますが、第三者間の関係について日本政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
またIPEFは米国主導のイニシアチブであり、その参加国、地域についてはまずは米国が調整するものと承知をしております。
いずれにせよ台湾は日本にとって基本的な価値感を共有し、緊密な経済関係とを人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。
引き続き台湾に関するわが国の基本的立場を踏まえながら、日台間の協力と交流のさらなる深化を図っていく考えであります。