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国連軍縮トップ中満氏 若者へのメッセージ

2021年1月28日 13:37
国連軍縮トップ中満氏 若者へのメッセージ

■理想論ではなく安全保障 様々なレベルで深い議論を

――核兵器禁止条約や軍縮分野で今後 日本の役割は?

まず一番私が期待しているのは、日本国内でいろいろな深い議論をしていただきたいなと思っています。単に核兵器禁止条約に入るか入らないかという短期的な議論ではなくて、本当の意味で核廃絶に一歩でも近づくためには何が必要かをきちっと考えていただく。

これは政治レベルだけではなく、一般的な世論のレベルでもそうですが、核軍縮というのは私たちは理想論の話ではなく、夢物語の話ではなく、安全保障の重要なポイントだと考えています。この点を何度も強調しているのですが、どのような形で核兵器をまず少しでも減らしていく。そしてなるべく早く核兵器を廃絶していく。
そのポイントまで到達するには何をすることが必要なのか、これは核兵器禁止条約に入るか入らないかということ以外にも色々なことを考えないといけない。

そういった議論をまずきちっとした形で国会ですとか世論のレベルでもきちんとしていただきたい。その結果、おそらく日本が果たすべき役割、果たすことができる役割がもっとクリアな形で見えてくるのではないかと思います。

これまで実は核兵器禁止条約は、日本の被爆者の方々の活動が大きな追い風となって、核兵器がもたらす人道的な壊滅的な影響というところに焦点が当たったためにこういう条約ができたわけです。

被爆者の方々のこれまでのご努力があったからこそなんですが、お年を召して平均年齢が83歳を超えるような状況にある中、これからの日本の役割、被爆者の方々がこれからいなくなってしまう時代に突入する中で、日本という国として核の廃絶のためにこれから何をしていったら良いのかということを、きちっとした形で議論をしていただく。
その結果、それを国際社会の議論の場に持ってきていただくことを期待しています。

■どう核廃絶にたどりつくか 抑止論なども学び考えてほしい 若い世代に期待

――長崎の高校生が批准国へ激励の手紙。若者へメッセージを

その手紙のプロジェクトの詳細を存じ上げないのでどういった手紙を書かれたのか是非知りたいですが、いろいろな活動がある。

色々な人たちが、特に若い人たちが考えて、自分たちでイニシアチブをとって様々な形で声を出していただいて活動していただいているのは、非常に心強く思っています。そういったことはすごく重要なことだと思います。

今回の手紙のプロジェクトだけではなくて、被爆者の方々の経験を継承するような継承者の活動もあれば、広島・長崎を世界中どこからでも訪問できるアプリを開発している若い人だったり、国会議員の核軍縮にまつわるスタンスをアプリ上で明らかにして、有権者の人たちに参考にしてもらいながら次の選挙のことを考えてもらうなど、色々なことを思いついて、私が思いつかない創造的なことを色々な人が考えて活動してくださっているのは本当にうれしく思い、心強いと思っています。

ひとつ、もしお願いしたいことがあるとすれば、そういったことを自分の身のまわりから始めるのはすごく重要なことで、自分の身のまわりの人と「どうすれば核廃絶に進んでいけるんだろう」と考えて議論して話し合って、自分たちの考えを政治家やいろんな人に伝えるのは重要なこと。もちろん素晴らしいことですが、その過程でいろんなことに興味を持って勉強してもらいたいなと思います。

核軍縮・核廃絶の仕事は実はものすごく困難な仕事で、ものすごく困難を伴うこと。
要するに、核兵器を自国の安全保障戦略の中核に据えている国々にとっても、核軍縮を進めることが彼らの安全保障にもプラスであるということを論理立ててきちんと説得することができなければ、実際に核兵器を廃絶することはできないわけです。

それをするためには、色々なことをやはり勉強しないといけない。
軍事のことであったり、核抑止論の詳細であったり、そういったことも含めて、「核兵器は悪だからなくそう」という単純な議論だけでは、残念ながら進んでいかないのが私たちの住んでいる世界の現実です。

抑止論その他含め、色々なことをアレルギー反応を持たずにぜひ勉強していただいて、どのような形で色々な国を説得して、世論を盛り上げていき、核廃絶、本当に廃絶のところまでたどり着くべきか。色々な意味で勉強して考えていただくことも、ものすごく重要かなと思っています。若い人たちに期待しています。

聞き手:日本テレビ報道局政治部 大神櫻子
取材日:2021年1月22日