【解説】“裏金”根絶できるか…「政治資金規正法」自民党の改正案 焦点の「連座制」導入は?
“裏金根絶”につながるでしょうか。裏金事件を受けて自民党が23日にまとめた政治資金規正法の改正に向けた案について24日、公明党との協議が行われました。自民党案のポイントを整理します。
山崎誠キャスター
「自民党が今回、盛り込んだ主なポイントは『政治家の監督責任の厳格化』、『不記載額の国への返納』です」
「まず、『政治家の監督責任の厳格化』についてみていきます。今回の自民党案では、政治家の『監督責任』が厳しくなりました。これまでは会計責任者、つまり事務方の秘書などがまとめた『収支報告書』に議員の確認の必要はなく、ウソの記載がある収支報告書の責任は、議員ではなく会計責任者にありました。こういったことを変えようと、新たな案では収支報告書が適正か議員が確認して確認書を提出することが義務づけられました」
「その上で会計責任者が不記載などで処罰され、議員本人が確認せずに確認書を作っていた場合、議員は失職し、公民権が停止となります。一部の野党が訴えていたいわゆる連座制は、盛り込まれませんでした」
「そして、『不記載額の国への返納』なども自民党案には盛り込まれました」
「ただ、その一方で盛り込まれなかったのが、『政党から議員個人に支給される政策活動費のあり方』です。これについては具体的な案を示さず、今後、各党と協議を行っていくとするにとどめました」
「また、『パーティー券購入者の公表基準の拡大』です。現在は20万円以下のパーティー券購入者は、収支報告書に名前を記載せずに済みます。ただ、名前を公表する基準の金額を引き下げるべきという意見も多くあります。ただ、これについても今後、検討していくということです」
「24日、自民党はこの案を踏まえ、公明党と与党案のとりまとめに向けた協議を行いました。ただ、両党の案には違いもあり、自民党と公明党の幹部は、与党案については5月の大型連休明けにできるだけ早くとりまとめる方針を確認しました」
鈴江奈々キャスター
「では、自民党案について、3つのポイントに絞って政治部の平本官邸キャップと伝えていきます」
「まず1つ目、『“連座制”導入は見送り?』、2つ目『“裏金” 「今後」は国庫返納へ』、3つ目『なぜ? 政策活動費“今後の検討”』。まず1つ目です。まずは平本さん、いわゆる連座制に踏み込むかどうかというのが焦点でしたよね?」
平本典昭 政治部官邸キャップ
「政治資金規正法の改正の最大の焦点はここでした。というのもこの問題、有権者の最も大きな怒りというのは、政治家が秘書のせいにして責任を逃れるケースがこれまで多かったからです。『知りませんでした』という政治家の言い訳、もう聞きたくないという思いがみなさんあります。そこで、議員の責任を厳しく問うというのが、いわゆる連座制の導入でした」
「これおさらいをしますと、例えば収支報告書へのウソの記載があり、会計責任者、秘書などに一定以上の刑事罰が確定した場合、自動的に議員本人も失職する、公民権が奪われるというもの。つまり、『秘書のせい』というものは、イコール『議員のせい』になる制度で、立憲民主党など野党の多くが導入を求めています」
鈴江キャスター
「一方でその“連座制”、自民党案では見送りとなったものの、自民党の案がありますが、連座制との違いというのはどこにあるんでしょうか?」
平本キャップ
「自民党案というのは、連座制を一部取り入れた形といえます。とりまとめ役の自民党の鈴木議員は、『厳密な連座制ではないが近い形』と言っています。一方、完全な連座制を主張している野党側からみれば、『連座制もどき』であるとか、『逃げ道だらけの制度』などの批判があがっています。自民党案はつまり、ゼロ回答ではないけれども、野党案ほど厳しくないというもので、『実効性』を確保していくためにどう運用していくのか、今後の自民党の説明が注目ポイントになります」
鈴江キャスター
「平本さんの今の説明の中にあった、野党がしてきする『逃げ道』というのは、実際に考えられるケースというのはあるのでしょうか?」
平本キャップ
「『逃げ道』のポイントとなるのは確認書です。自民党の案をみると、確認書をめぐっては、罪に問われるのは、議員が確認をしないで確認書を作ったときのみというふうにしています。野党側からは早くも、例えば確認はどうするのか、具体的な確認の方法がわからないとか、確認はしたけど不正はした認識がなかったといった場合はどうなのかといった声も出ています」
「蓮舫議員も24日の国会で『なんちゃって連座制だ』と。野党は収支報告書のミスがあれば会計責任者も議員も共同責任になる案を出しています。こうでないと抜け道がなくならないという主張をしています」
鈴江キャスター
「そういった追及がある中で、なぜ自民党は完全な連座制の導入に慎重なのでしょうか?」
平本キャップ
「取材していて大きく聞く声は、『秘書がわざと議員をおとしいれる可能性は否定できない』とか、『秘書が選挙違反をして議員が失職するというのはわかるけど、収支報告書の記載ミスで失職するのはやり過ぎ』といった声が根強くあります。共通するのは、『政治活動が制限される』というものですけれども、国会議員がどこまで自らに厳しい制度にできるか、本気度が問われていると思います」
鈴江キャスター
「そして2つ目『“裏金” 「今後」は国庫返納へ』となりますが、「今後」が強調されているのはどういう意味なのでしょうか?」
平本キャップ
「今回の問題はいわゆる『裏金』であるとか、『キックバック』を受け取っていたことがスタートでした。ですから、今後は、『裏金』は全て没収するという姿勢を打ち出したワケですが、今回「今後は」を強調したのは、この案をみて『あれ?』と思ったからです」
「今回明らかになった『キックバック』のお金、これはどうなるんだという点です。ある現職の閣僚も『まずは今回明らかになったキックバックを返納しなければ、有権者の怒りはおさまらない』と指摘しています。キックバックを受けたある安倍派の議員でさえ、『全額、本当であれば被災地支援などに寄付したいけれども、自分だけ1人勝手にはやれない』という声もあります。自民党幹部の1人は、『今の法律では国庫に返納することはできない』と指摘していますが、24日も野党側はこの点を国会で追及していました」
鈴江キャスター
「そして3つ目、『なぜ? 政策活動費は“今後の検討”』なんですが、政策活動費も億単位のお金であったとしても、この費目であれば公表する義務がないものですよね?」
平本キャップ
「はい」
鈴江キャスター
「ここに対しても不信感はあるのですが、なぜ今後の検討となったのでしょう?」
平本キャップ
「今回、自民党が『今後の検討』としたのは、『政策活動費』、さらには『パーティー券購入者の公表基準の拡大』などです」
「自民党はその理由を『企業や個人の政治活動の自由を守るため、慎重に検討すべき』と主張しています。しかし、自民党幹部からでさえ『柱となるこうした議題が、引き続き検討ということでは格好がつかない』というような話も出ています」
「23日に自民党の案が出て、ようやく全ての党の案が出そろいました。与党協議に加え、国会審議も今週から始まります」
桐谷美玲キャスター
「“裏金根絶”につながる法改正になっていくのでしょうか?」
平本キャップ
「それが今後の最大のポイントだと思います。岸田首相も24日、国会で『野党案に歩み寄る余地はあるのか』と質問を受けていました。岸田首相は『議論を深めたい』と述べただけでした。実効性のある法改正に向けて一致点をどこまで見つけられるのか、与野党ともに問われています」