期日前投票増で投票率アップにならない!?
今月31日に投票が行われる衆議院選挙で、24日までの5日間に期日前投票を済ませた人は全国で約567万人で、これまでの衆院選同時期に比べて、過去最多です。しかし、過去のデータを見てみると、期待される投票率アップにつながらない可能性があります。
■期日前投票数、序盤で過去最高に
総務省の発表によりますと、公示日の翌日から5日間までの期日前投票者数は約567万人となり、2005年に期日前投票が導入されてから最高となりました。前回の同じ時期と比べて約156万人増加しています。
選挙戦序盤で有権者の5%あまりがすでに投票を終えたことになり、このまま順調に投票がすすめば、最終的な投票率が上がることも期待されます。
■期日前投票数と投票率は…必ずしも相関せず
過去の衆院選のデータから、期日前投票数と投票率を調べてみました。衆院選として初めて期日前投票が実施された2005年から前回の2017年までの5回の衆院選について、期日前投票者数と投票率の推移を見てみます。
期日前当票者数は、2005年は約900万人だったものの、翌年は1400万人に迫りました。その後、約1200万人、約1300万人と推移し、前回2017年は大幅に増えて約2100万人が期日前投票を利用して投じました。これは総投票者数の約37%にあたります。
ところが投票率をみてみると、2009年こそ期日前投票者数とともに上昇し、70%近くまで達したものの、その後、下落傾向に。2014年には過去最低の52.66%でした。
前回2017年は期日前投票数が大幅に増加したにもかかわらず微増の53.68%で、過去2番目に低い投票率でした。
■識者「普段投票に行かない人まで掘り起こせるかは、あまり期待できないのでは」
なぜ期日前投票者数の増加が必ずしも投票率のアップにつながらないのでしょうか?
選挙制度に詳しい神戸大学大学院法学研究科の品田裕教授は、「衆院選での期日前投票の利用者数と投票率の関係については、2009年を除くとほぼ相関はなく、いつも選挙に行く人が利便性の高い期日前投票を利用するようになっているとみられる。普段投票に行かない人まで掘り起こせるかというとあまり期待できないのではないか」と分析しています。
今回、序盤での期日前投票者数が大きく増えている理由については、「そもそも期日前投票が増加トレンドにあることに加え、コロナのため密を回避する行動が習慣化して混雑する投票日を避けるような行動になったことが考えられる」としています。
さらに、「コロナ禍の生活で行き場のない不安や不満が根強くある中、争点の見えにくい選挙になっていることで、政策を見ずに投票先を決めている有権者が多い可能性がある」と指摘しました。
■投票率アップのカギは「ふらふらしている層」
では、投票率アップのカギはどこにあるのでしょうか?
品田教授は、「有権者の半分は普段から投票に行く層、20~25%は何があっても行かない層と考えられるので、残りの『ふらふらしている』層をどれだけ投票に向かわせられるかが投票率アップのポイントだ」とした上で、「政党や政治家が投票ムードを醸成するような状況をつくり、その状況ができた場合に身近な人の働きかけがあれば『ふらふらしている』層を投票所に向かわせることができる」と話しました。
今回は前回より556か所多い全国5940か所で期日前投票が行われて利便性がさらに高まっていますが、どこまで投票率アップにつながるかが注目されます。