×

10万円給付 支給方法で自治体に困惑も

2021年12月8日 19:15
10万円給付 支給方法で自治体に困惑も

子育て世帯に配られる「10万円給付」について、「全額現金でも可能」とする話があり、年内にも配り始めると表明する自治体が出てきました。しかし、8日になって、また、ドタバタしています。

8日の国会では、10万円給付について、立憲民主党・泉代表から岸田総理大臣に質問がありました。

立憲民主党 泉代表
「18歳以下への10万円給付、市町村それぞれの、自らの判断でクーポンではなく、現金給付を選択できるようにするべきではないでしょうか。そして10万円一括給付、これもやむを得ない場合など、難しい条件をつけずに、自治体の自由で認めるべきではないでしょうか」

岸田総理
「まずはクーポン給付を原則として、検討していただきたいと考えておりますが、地方自治体の実情に応じて、現金での対応をも可能とする運用といたします」

岸田総理は、現金給付は認めましたが、10万円の一括給付については、言及しませんでした。

     ◇

■10万円給付 現金?クーポン?“配り方”問題に

この子育て世帯への給付金の対象について、例えば子ども2人、片方が専業主婦という場合、夫婦のどちらか収入の多い方が年収960万円未満の世帯では、0歳から18歳までの子ども1人につき、10万円相当の給付金がもらえます。この場合、給付額は20万円となります。

問題となっているのが、10万円の配り方です。

政府はこれまで、児童手当の仕組みを使い、5万円は現金で年内に、残りの5万円はクーポンで、来年春の新学期に向けて配るという方針を示してきました。

政府がクーポンにこだわるのは、商品やサービスを届けることで子どもたちを直接支援できる、消費の下支えにもつながる、というのが理由です。

しかし、この現金とクーポンに分けるというやり方だと、967億円の経費がかかるということで、批判の声が上がっていました。

すると、7日、残りの5万円も「クーポン給付を基本」としながらも、自治体の実情に応じて「現金給付」も可能、ということを官房長官が明言しました。つまり、10万円「全額現金」でもよいということです。

■松井市長“全額現金”意向も…松野官房長官「想定していない」

この経費をみると「全部現金で」という自治体は当然出てきます。

早速、大阪市の松井市長は7日、10万円全額を一括で支給する意向を示しました。

大阪市 松井市長
「現金で、何もペナルティーなしだったら現金。15歳までは10万円振り込む」

「(Q今月27日に?)うん」

児童手当を受け取っている15歳以下の子どもがいる家庭には、今月27日にも、10万円を一括で振り込むと表明しました。16歳から18歳については、来月以降に申請を受け付ける方針です。

さらに、取材を進めると、東京23区のある自治体からも「現場としては、絶対現金給付がいいに決まってる。現金以外はあり得ない」という本音が聞かれました。

ところが、8日になり、松野官房長官が会見で、「松井市長が、10万円一括給付の意向を示しているが可能なのか?」と問われたのに対して、「想定していない」と否定的な考えを示しました。

どういうことかというと、年内に配る現金の「5万円」と来春をメドに配る「5万円相当」は財源が違います。あくまで別の給付措置だから、「一括で同時に支給することを想定していません」というわけです。

後半の5万円について、「現金給付は可能だが、やはり、クーポンを基本として検討していただきたい」というふうに話しました。

この話を聞いた松井市長の反応も入ってきました。

大阪市 松井市長
「それだったらはっきり言ってもらいたいのよ。(一括で)現金認めないというなら、それは説明します、子育て世帯の皆さんに」

「我々に任せてもらうのならば、僕は現金ですから。それがダメならダメとはっきりと言ってもらわないと、準備できないじゃない」

■「5万円相当」どうする?自治体から戸惑いの声

自治体の動きも見てみます。

群馬県太田市は、今月3日の時点で清水市長がツイッターに「クーポンはまことに使いにくい。いっそ、全部現金で配るとしよう!!」と書き込みました。

8日、市に取材したところ、現金給付を希望する市民の声が多くあったことから、「2回に分けて」それぞれ5万円を給付する方向だといいます。1回目は年内に、2回目は2月くらいを予定しているということです。

8日の官房長官の説明だと、この方法はおそらくOKということになります。

さらに、東京23区の複数の自治体にも聞いてみました。

まず、多くの区で最初の「現金5万円」については、「年内に振り込みます」という話でした。

一方で、残りの「5万円相当」をどうするのかについては、戸惑いの声が多く聞かれました。

大田区は「自治体の実情に基づいて、と(国は)言うが、具体的に“実情”が何かが定かではない。両にらみで考えてはいるが、現状はクーポンの方向で想定している」ということです。

板橋区は「区民からたくさん問い合わせは来ている。きょうの午前中だけでも10件ほど。クーポンでという方は1人もいない。“現金で支給してほしい”という声ばかり」といいます。

また、ある区は「2回目については原則クーポン」としながらも、「現金が一番楽だしニーズがあると思う。どうしたもんかな、という状況」ということでした。


     ◇

現金とクーポンを分けて配る考え方ですが、自治体にとってみると3月は年度末で忙しいです。そして、3回目の接種も一番忙しい時期になります。政府には、なるべく早く明確な方針を示して、自治体が混乱しないようにしてほしいと思います。

(2021年12月8日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)