なぜ? 「拍手も野次もない静けさ」施政方針演説で国会スタート
石破首相が行った施政方針演説。「地方創生」を“石破カラー”として前面に打ち出した演説だったが、演説は「拍手も野次もない」異例の形となった。
■演説に変化…「低姿勢」モードから「石破カラー」打ち出しへ
施政方針演説にあたって、石破首相は周辺に「これまで石破政権は『何がやりたいかわからない』という批判があったが、一番は『地方創生』とわかる演説になる」と語った。
去年の首相就任後、石破首相は2度の所信表明演説を行った。前回は、総選挙で大敗し少数与党となった直後で、「謙虚・丁寧・真摯」をキーワードに“低姿勢”で野党側へ協力を求める演説となった。一方で「石破首相は何がしたいのか見えない」との批判もあり、今回はどういった「石破カラー」が出るかが注目された。40分にわたる演説、最も多くの時間を割いたのが「地方創生」だった。
上の図は、石破首相の施政方針約11000語を“ひと目”でわかるように分析したものだ。浮かびあがったのは「地域」「強化」「整備」といった文字。これまでの演説では「政策の打ち出しが少なかった」(政府関係者)などの指摘が出ていた中、今回の施政方針演説で石破首相が「地方創生2.0」を前面に打ち出したことが、この図からも見て取れる。
原稿作成に関わったある政府関係者は「女性の活躍、賃上げ、GX・DX投資などのあらゆる政策を『地方』という切り口で打ち出した」と狙いを語った。別の政権幹部の1人は、少数与党という政策実現が難しい環境の中でも「政権にしがみつくつもりはない、地方創生で結果を出したいのが首相の思いだ」と語った。
演説を聞いたある自民党幹部は「石破首相が地方創生をやりたいという思いは伝わってきた」と評価。一方、与野党の多くの議員が口にしたキーワードは「静か」という評価だった。
国会での首相演説には与党議員は“応援”の意味で『拍手』を、野党議員は“批判”の意味で『野次』を飛ばすのが慣例だ。しかしこの日、首相の演説の中で、与党議員がまとまって拍手をしたのは1度たりともなかった。さらに、野党の野次もこれまでに比べれば少なかった印象だ。
実際、ある自民党議員は「静かな演説だった。首相を支えようという雰囲気がなかった」と指摘。立憲民主党の幹部は「拍手も野次もない、こんな静かな施政方針は初めて」と語った。
150日間の通常国会は「静かな」幕開けとなった。「野党の協力どころか、身内の自民党も完全に味方にできていない」(閣僚の1人)との指摘も出る中、首相は綱渡りの国会運営を強いられることになりそうだ。