【解説】G7サミット2日目 「中国の脅威」議論へ…岸田首相が“リード役”に
イタリアの南部にあるプーリア州で開かれているG7サミットは、14日に2日目を迎えました。岸田首相に同行取材している政治部官邸キャップの平本典昭記者が現地から解説します。
政治部官邸キャップ 平本典昭記者(イタリア・プーリア州 現地時間14日午前10時05分)
「国際メディアセンターに来ています。2日目の議論、最初のセッションは10分ほど前に始まったそうです。今年のサミット、やはり初日は欧米諸国の関心が高いウクライナや、イスラエルとハマスの戦闘がメインテーマとなりました」
「きょうは2日目ですが、最大の注目は、この後行われる『インド太平洋』のセッションになります。中国が『影の主役』になりそうなんです」
鈴江奈々キャスター
「G7サミットの枠組みでは、アジアの中で日本は唯一の参加国となります。中国はいないのに、なぜ『影の主役』となるのか? また、日本としては何ができそうなのでしょうか?」
平本キャップ
「テーマは『インド太平洋』なのですが、意識しているのは中国です。岸田首相がいま、警戒感を持っているのがG7、ひいては世界の関心がウクライナ、中東に集中し、中国への関心が薄れてしまうことです。そこで岸田首相は『中国の脅威』に対して、G7が結束して対抗しようと訴えます。岸田首相がサミットの中で議論をリードするスピーカーを唯一務めるのがこのセッションで、最もスポットライトが当たるセッションとも言えます」
「岸田首相は、『中国からの「経済的威圧」にどう対抗するか、今回はかなり強い言葉でけん制する』と、ある外務省関係者は話しています」
鈴江キャスター
「中国の『経済的威圧』という言葉がありましたが、具体的にはどういったことなのでしょうか?」
平本キャップ
「あまり聞き慣れないかもしれませんが、中国の威圧は大きく2つあります。1つはよく聞く『軍事的威圧』で台湾周辺での軍事演習などを指します。もう1つが、きょう注目する『経済的威圧』です」
「何かといえば、例えば、日本が一番問題視しているのは、中国による日本産水産物の輸入禁止措置です。ある外務省関係者は『成長する中国経済をベースに行う、経済面での他国への攻撃』と訴えています。中国はこうした『経済面での攻撃』を世界各地で仕掛けていて、欧米諸国がいま最も問題視しているのは『過剰生産問題』です」
「『過剰生産問題』とは、中国が電気自動車や太陽光パネル、半導体などの分野で、安い製品の輸出を急に拡大させて、欧米諸国が“その競争が不当にゆがめられる”のではないかと反発している問題です。ある外務省関係者は『中国が国営企業に対して補助金を付けて安い製品を大量に生産するので、補助金を付けるのは不正だろう、ゆがめられていると、欧米企業が市場原理の中では太刀打ちできない』と分析しています」
「アメリカやEUが、個別に中国製の電気自動車に追加の関税を課していますが、G7が足並みをそろえて対抗措置を出せるかがポイントとなります」
鈴江キャスター
「足並みをそろえられるのかということでしたが、中国の習近平国家主席がフランスを訪問するなどヨーロッパ諸国と経済関係を強めています。G7の中で中国との距離感はさまざまですが、そんな中で足並みはそろうのでしょうか?」
平本キャップ
「中国は、フランスに加えてドイツと経済連携をいま、強めようとしています。中国としても、G7の連携にくさびを打ち込み分断を図りたい狙いです。ある外務省関係者は、そうした中で『日本がリーダーシップを発揮し、サミットでどれだけ一致したメッセージを出せるかが問われている』と解説しています」
鈴江キャスター
「岸田首相は具体的に、どのようにリーダーシップを発揮しようとしているのでしょうか?」
平本キャップ
「岸田首相は国際会議の場で繰り返し『ウクライナは、明日の東アジア』と、各国首脳に中国の脅威への対応を訴えてきました。ある政府関係者は今回のセッションは『これまでにない強い言葉で対応の必要性を訴える』と話しています」
「実はいま、岸田首相にとっては追い風も吹いています。この『過剰生産問題』をめぐっては、ある政府関係者は『アメリカやイギリスなどでいま選挙が控えているので、国内企業をアメリカやイギリスの政府が守るために、かなりこの問題に強硬な姿勢で来ているのが追い風だ』と言っています」
「1年前、G7広島サミットを議長として仕切った岸田首相ですが、その手腕を中国についてのセッションで活かすことができるのか、問われています」