【全文】非正規雇用の処遇改善「最低賃金の引き上げ取り組む」 官房長官会見(2/16午後)
松野官房長官は16日午後、非正規雇用労働者が賃上げを求め会見したことを受け「政府として最低賃金の引き上げに取り組むとともに、同一労働同一賃金の徹底、キャリアアップ助成金による賃金引き上げや正社員への転換の支援などの取り組みを進めていく」と述べました。
<会見トピックス>
▽鳥インフルエンザと卵の価格
▽韓国の国防白書
▽非正規雇用の賃上げ
▽日銀人事
▽東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出
▽子ども関連予算
▽ウクライナ難民
〇松野官房長官
冒頭発言はございません。
――鳥インフルエンザと卵の価格について伺います。今シーズン、鶏の殺処分など過去最多を更新し続けていることを背景に、卵の卸売価格は1993年以降、最高となっています。関連商品の販売休止や値上げなど影響が出ておりますけれども、現状についての認識と今後の対応を伺います。
〇松野官房長官
今シーズンの鳥インフルエンザは、これまでに合計25道県で76例が発生し、約1478万羽が殺処分の対象となっており、昨年12月の総理指示も踏まえた緊急消毒等の対策を行っているところであります。特に採卵用のニワトリの殺処分が増加する中で鶏卵の需給はタイトになっており、卸売価格は平年比189%となっています。このような中で、家庭消費向け鶏卵については、現時点ではパック卵の店頭での小売り価格への影響は、卸売価格に比べ限定的でありますが、加工向け鶏卵に不足感が出ており、一部の加工業者は、追加的な輸入の準備を始めていると聞いています。政府としては引き続き最大限の緊張感を持って鳥インフルエンザの発生予防と蔓延防止に全力で取り組んでいくとともに、先月の物価・賃金・生活対策総合本部で総理から指示のあった配合飼料価格高騰対策を通じて鶏卵の生産をあと押しをするなど、必要な対応を進めていく考えであります。
――韓国の国防白書について。韓国国防省は16日、2022年版の国防白書を発表し、北朝鮮に関し、「敵」との表現を復活させました。日本については「価値を共有し、未来協力関係を構築すべきは近しい隣国」と評価しました。国防白書の受け止めの他、北朝鮮の核ミサイル問題を巡る日韓の連携や、元徴用工問題など両国間の懸案解決に向けた今後の対応策について伺います。
〇松野官房長官
ご指摘の件については承知していますが、ご指摘の文書の記述の一つ一つについてコメントすることは差し控えさせていただきます。その上で申し上げれば、韓国は国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国であります。特に北朝鮮への対応を含め、現下の戦略環境を踏まえれば、日韓、日米韓で緊密に連携していくことの重要性は論をまちません。日韓間の懸案については、昨年11月の日韓首脳会談において、両首脳が早期解決を図ることで改めて一致しています。国交正常化以来築いてきた友好協力関係の基盤に基づき日韓関係を健全な関係に戻しさらに発展させていくため、韓国政府と緊密に意思疎通をしていく考えであります。
――きのう、非正規雇用で働く人たちが会見を開き、勤務先企業に「一律10%の賃上げ」を要求しました。非正規雇用の人は、労働組合への加盟率も低く、賃上げ交渉の手段に乏しい現状があります。また、雇用側においても、特に中小企業は正規・非正規雇用問わず、賃上げが困難な実情もあります。非正規雇用で働く人の賃上げ要求の声の受け止めと、今後の政府の対応について伺います。
〇松野官房長官
昨日ご指摘の記者会見が行われたことは承知しております。政府としては、目下の物価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することと考えています。賃上げ自体は、各企業の支払能力を踏まえながら、個別に労使が交渉し、合意した上で決定されるべきものであり、そうした中での最大限の賃上げを期待したいと思います。特に中小企業における賃上げ実現に向けては、生産性向上などへの支援を一層強化するとともに、下請け取引の適正化、価格転嫁を促進していく考えであります。この他、非正規雇用労働者の処遇改善に向けて、政府として最低賃金の引き上げに取り組むとともに、同一労働同一賃金の徹底、キャリアアップ助成金による非正規雇用労働者の賃金引き上げや、正社員への転換の支援などの取り組みを進めていく考えであります。
――日銀の人事に関する質問です。政府が日銀の雨宮副総裁に総裁ポストを打診し、雨宮氏が固辞したとの見方があります。事実関係について改めて確認させてください。
〇松野官房長官
人事の具体的な検討プロセスについて、お答えすることは差し控えさせていただきます。
――政府は次期日銀総裁に植田氏の起用を示しました。この人事は異次元緩和からの出口、アベノミクスの修正を意識したものという見方がありますが、政府の見解をお願いいたします。
〇松野官房長官
金融政策の具体的な手法は日銀に委ねられるべきと考えていますが、政府と日銀は密接に連携しながら経済、物価情勢に応じて機動的な政策運営を行い、構造的な賃上げを伴う経済成長と物価安定の目標の持続的、安定的な実現を図っていくべきと考えています。日銀には引き続き、政府との連携のもと経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営を行われることを期待しています。
――東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について伺います。放射性物質がどのように拡散して環境に影響を与えるのか調査した韓国政府傘下の研究機関が今日、分析機器では検出できない程度との結果を公表し、責任研究員は問題ないと見ても構わないのではとの認識を示しました。処理水の放出に懸念を示してきた韓国政府の判断にも影響を与える可能性がありますが、日本政府としての受け止めを。
〇松野官房長官
韓国の研究機関がアルプス処理水に関する海洋拡散シミュレーションの結果を本日発表したとの報道は承知していますが、詳細は承知しておらず、政府としてコメントすることは差し控えさせていただきます。いずれにせよ、日本政府としては、 アルプス処理水の安全性について引き続き、韓国を含めた国際社会に対し科学的根拠に基づき、透明性高く情報発信していく考えであります。
――子ども関連予算について伺います。岸田首相は昨日の衆院予算委員会で家族関係社会支出について、「2020年度でGDP2%実現した。さらに倍増しよう」と申し上げていると明言されました。官房副長官は午前の記者会見で「将来的な倍増を考える上でのベースとしてGDPに言及したわけではない」と述べられました。改めて総理の趣旨と子ども関連予算倍増の基準をどのように考えるか見解を伺います。
〇松野官房長官
昨日の国会での岸田総理の答弁は、防衛力強化への取り組みとの比較を問われた際に、政権交代以降、保育の受け皿整備、幼児教育、保育の無償化など必要な支援を進め、こども予算をしっかり拡充してきたことを説明する中で、その一つの例として、国際比較可能な家族関係社会支出対GDP比という指標で見ると、10年前の2012年度の1.1%から2020年度には2.0%まで増えてきたという、これまでの取り組みを紹介し、こども予算をさらに強化することにより防衛費との関係においても決して見劣りするわけではないとの趣旨で申し上げたものであります。したがって、将来的な倍増を考える上でのベースとしては、この家族関係社会支出GDP比に言及したわけではありません。
なお、総理が言及された2020年度家族関係社会支出については、新型コロナウイルス感染症対策にかかる一時的な給付金の影響があることに留意する必要があると考えています。
また、こども政策に関係する予算をどう見るかについては、さまざまな見方があり、家族関係社会支出以外にも令和4年度における少子化社会対策大綱に基づく少子化対策関係予算は、国費で約6.1兆円、令和5年度のこども家庭庁関連予算は、国費で約4.8兆円など様々な整理があるところであります。いずれにせよ、これまで政府として繰り返し申し上げているように、まずは政策の中身が重要であり、こども政策担当大臣のもと、こども・子育て政策として充実する内容を具体化し、6月の骨太方針までに将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示する考えであります。
――ウクライナ難民の件について伺います。来週24日はロシアによるウクライナ侵攻から1年で、ウクライナ避難民の受け入れが始まってから1年近くが経ちます。この1年で2千人以上のウクライナ避難民を受け入れていますが、今後こういった動きは他の国の避難民にも広がっていくのか、政府のお考えをお聞かせください。
〇松野官房長官
これまで我が国では政府一体となって、ウクライナ避難民の円滑な受け入れと、生活支援等を行ってきており、2月15日現在、2302人のウクライナ避難民を受け入れています。ウクライナ避難民に対する現在の我が国の対応は国際社会と協調し、ウクライナの危機的状況を踏まえた緊急措置として取り組んでいるものであります。今回のウクライナ避難民の方々への対応を含め、引き続き、政府全体において適切に対応していく考えであります。