【解説】「G7広島サミット」にバイデン大統領が来ない? 国内の“借金問題”…デフォルト回避こそが「最重要課題」
19日から広島で開幕するG7(=主要7か国首脳会議)サミットを前に、アメリカのバイデン大統領が来日しないかもしれないという“想定外”の事態となっています。一体、何が起きているのでしょうか。
アメリカのバイデン大統領は10日、「G7サミットに行かず、オンライン参加せざるを得ない可能性もある」と述べました。実はこの前日の9日にも欠席する可能性に言及していて、日本政府の関係者は「来なかったら一体どうなっちゃうんだ」と戸惑いを隠しきれない状況です。また11日、アメリカ側と毎日連絡を取り合っているという別の日本の政府関係者に話を聞いたところ、「来ない可能性はゼロとは言えないが、たぶん来る」ということで、準備は着々と進めているということです。
今、アメリカ国内では大変な問題が起きています。それが、“国の借金の問題”です。アメリカでは、政府が借金をしてもいい上限の額が法律で定められていて、その額は日本円で約4200兆円です。実は今年の1月にこの上限にすでに達してしまいました。そこで、バイデン政権は「この上限を引き上げよう」としていますが、野党の強い反発などにあって、議会の同意が得られる見通しがいまだたっていません。
同意が得られないと、当然ながら上限の引き上げができないので、6月1日にも国の借金の一部が返せなくなる“デフォルト(=債務不履行)”の状態になる恐れがあります。
実は、これは大変なことで、アメリカ政府が約束した借金を返せないとなると、国債の信用が失墜し、金利や株式、為替などの金融市場も大混乱に陥ります。そうなるとアメリカ経済だけにとどまらず、日本を含む世界経済にも大打撃が及ぶとみられています。こうした緊迫した状況の中で、バイデン大統領から「広島サミットにはオンラインで参加する可能性がある」との発言が飛び出したのです。
オンラインだとできないことの1つが、今もぎりぎりで調整中の原爆資料館の視察です。岸田首相は、サミット初日でもある19日にG7各国の首脳らに原爆の実相を知ってもらうため、原爆資料館を案内する予定になっています。これが実現すれば、史上初となります。
しかも今回、資料館の「本館」に入るかどうかも注目されています。資料館には東館と本館があって、本館には被爆者の焼け焦げた遺品などが展示されていて、原爆の実相をより知ることができます。
2016年に当時のオバマ大統領が、現職のアメリカ大統領として初めて資料館を訪問したとき、岸田首相は外相としてオバマ大統領に同行しました。このとき資料館はリニューアルする前でしたが、「東館」に入り、滞在時間は約10分間だけでした。これでも、広島にとっては大きな1歩でしたが、今回は多くの被爆者が長年望んできた「本館」に世界のリーダーを案内して、被爆の実相を知ってもらえるかというのが注目されています。
しかも、今回サミットに参加する7か国のうち、アメリカ、フランス、イギリスは核保有国です。中でもアメリカはロシアと並ぶ“核大国”で、“ヒロシマ”・“ナガサキ”に原爆を投下した当事者でもあります。
そのアメリカのトップが、もし来日できないとなれば、意味合いが大きく変わりかねないということです。
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バイデン氏にとっては、経済の大混乱を招きかねないデフォルトの回避は、サミット出席以上に最重要課題であることは間違いありません。サミット開幕まであと1週間と迫る中、妥協点を見いだせるのか、待ち受ける日本側の関係者にとってもハラハラの日々が続きそうです。
(2023年5月11日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)