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“薬だけでは解決できない” 政府が初開催した認知症対策会議の目的とは? 当事者からは切実な声も

2023年9月28日 12:50
“薬だけでは解決できない” 政府が初開催した認知症対策会議の目的とは? 当事者からは切実な声も

政府は27日、認知症対策を話し合う会議“認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議”の初会合を開いた。

2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると推計される中、岸田首相は認知症対策を「新たな国家プロジェクト」と位置づけ、本腰を入れて対策に乗り出した形だ。

会議には、関係閣僚や医療分野の専門家だけでなく、認知症の当事者やその家族、介護の関係者も出席。その中で岸田首相は、25日に正式に承認されたばかりの、アルツハイマー病の進行を遅らせる治療薬「レカネマブ」について、患者が適切に利用できるようにすることや、投与後のモニタリングの態勢を整えるよう、閣僚に指示を出した。

ただ、会議に参加した認知症の当事者や家族からは、新薬を普及させれば問題が解決するわけではないとの指摘も出ている。

会議後、認知症当事者で認知症ワーキンググループの代表理事も務める藤田和子さんは「薬だけではなくて、認知症になっても変わらぬ社会活動が続けられる“共生社会”の実現を求めたい」と語った。新薬の効果ばかりが注目され、認知症の人とそれ以外の人たちが“共生”する社会を作るという目的が薄れてしまうのではないかというのだ。

こうした指摘に、政府はどう考えているのか。首相の周辺を取材すると意外な答えが返ってきた。

「今ある薬では、認知症の進行を遅らせることしかできない。だから真の問題解決にはならない。これからは、認知症になった人が医療などを受けながら活躍できるような社会を実現しなければならない」

政府の中枢にいる人にも、問題意識がキチンと共有されていたのだ。

さらに「認知症になったら、周りから支えられるだけの存在になるという考えは古い。主体的に目標を持って活動し、活躍できるようにするための環境が必要になる」とも述べ、そのための政策作りや環境整備を行う考えも示した。

政府は今後、会議を月1回程度開催し、年末までに対策をとりまとめる予定だ。

認知症の当事者や家族が希望を持って生きられる社会のため、必要な支援や政策を打ち出し、実現できるのか。首相が掲げる「国家プロジェクト」の“本気度”が問われることになる。

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