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【再開2日目】“年収の壁”引き上げ巡る与党・国民民主党の協議の行方は?専門家はどうみる?

2025年2月19日 18:09
【再開2日目】“年収の壁”引き上げ巡る与党・国民民主党の協議の行方は?専門家はどうみる?

いわゆる“年収の壁”の引き上げを巡り、19日も、午後4時過ぎから、与党と国民民主党との協議が始まっています。18日、自民党が示した新たな案は、専門家も「大きな経済効果は見込めない」と評価しますが、協議の行方は?

18日に続き午後4時過ぎから始まった自民・公明・国民の3党による「税制協議」。約2か月ぶりに再開された“103万円の壁”の引き上げを巡る協議は、18日に自民党が新たに提示した案が波紋を広げています…。

( 国民民主党 古川 元久 税調会長)
「ボールは返ってきましたけどね。かなりの暴投でね」「我々がキャッチできる球ではないので」

“103万円の壁”を巡っては、国民民主党は一貫して、一律178万円まで所得税がかからないよう壁を引き上げるべきと主張。一方、与党は、2024年末に123万円までの引き上げを提示し、議論は平行線のまま、“こう着状態”となっていました。こうした中、18日の協議で、自民党は「新たな案」を提示しました。

(自民党 宮沢 洋一 税調会長)
「160万円(123万円から)37万円上乗せする、(年収)200万円相当以下の人は、これを恒久措置としてやらせていただく」

新たな案は、年収によって、壁の引き上げ幅をより手厚くするというもの。年収が200万円相当以下の場合、恒久的措置として160万円までは税がかからないよう引き上げるとしました。さらに、年収が200万円相当から500万円相当以下の場合は、2年間の時限措置として、133万円まで引き上げるとしています。

(自民党 宮沢 洋一 税調会長)
「生活保護、最低賃金等々、大変厳しい方々に対する特例といった考え方を新たに加えたと」「我々も色々な検討してきましたけども、少し方向転換しなければならないということで決断しました」

経済や財政などに詳しい第一生命経済研究所の星野卓也氏は、新たな案について、年収200万円以下の場合は、対象者が非正規やパートで働く人など限定的で、「大きな経済効果は見込むのは難しい」と疑問を呈しました。

(第一生命経済研究所 星野 卓也氏)
「年収500万までは控除を引き上げる話なので、これで減税額はある程度大きくなる人はいるとは思うが、その規模自体があまり大きくない。5000円の減税が1万円になる。中間層の人たちについては期間限定なので、そこで消費者マインドが大きく上向くのは考えにくく、景気へのインパクトが大きく上向くというのは考えにくい」

低所得者を中心に年収の壁を引き上げる自民党の新たな案に、国民民主党には…。

( 国民民主党 浜口 誠 政調会長)
「国民の皆さんからしたらね。低所得の人だけじゃないですよね。物価高騰で苦しんでいるのは」「中間層、幅広い国民層が、今、物価高で大変な状況になっている」

役職停止中の玉木代表も、自民党の案について自身のSNSで言及しました。

(国民民主党 玉木 雄一郎 代表・役職停止中 のSNS)
『内容が不十分なのに加えて、制度が複雑過ぎます。“103万円の壁”を引き上げようとして、所得制限という新たな“壁”を設けるのは避けるべきです』

さらに、連立を組む公明党からも反発が。

18日、石破首相と面会した斉藤鉄夫代表は、新たな案では「不十分」だと指摘しました。

(公明党 斉藤 鉄夫 代表)
「自民党から出された2段階の案は、公明党としても、これでは不十分だと。有権者の理解得られないのではないかということは、今の段階で、私が言うのは適切かどうか分からないが、ぜひ、国民民主党の理解が得られるような進め方をしていくべきではないかと申し上げました」

これに対し、石破首相は、「3党での協議を進め、最終的には3党で合意したい」と応じたということです。

今回、自民党が示した段階的な壁の引き上げについて街の人は。

(街の人)
「年収200万円までの人が生活が苦しいのが実態なので、その人達に減税するのは良いと思う」

(街の人)
「働いた分だけ入るのは理想。子供たちの将来のことで働いているので、壁があること自体がおかしい」

所得制限なく178万円までの引き上げを求める国民民主党の主張とは、かけ離れた案を出した自民党の狙いとは…。政治ジャーナリストの青山和弘氏は、与党と維新との協議が先行し「予算案成立にある程度の目途が立った」ことが影響していると話します

(政治ジャーナリスト・元日本テレビ官邸キャップ 青山 和弘氏)
「自民党としては、国民民主党も一緒に予算に賛成してもらいたい」「ただ、維新の会との協議が進んでいる中で、国民民主党に、どうしても妥協・賛成してもらわなきゃいけないというモチベーションはちょっと下がったというのが1つある。あとは、国民民主党の要求、178万円まで引き上げるというのが、あまりにも財源が大きくなりすぎる」「そうすると相当予算を組み替えなきゃいけない」「自民党としては(予算を)あまり大きく組み替えないで済む範囲に収めたいということはあったと思う」

19日、午前には、自民・公明・維新の3党は、2025年度予算案の修正を巡り、政調会長が協議。高校授業料の無償化を巡り、与党側が維新の要求を大幅に受け入れたことで、維新は予算案への賛成も視野に調整を進めています。一方、青山氏は、新たな案について、「有権者の声に応えていない」と指摘し、自民党は夏の参院選で、厳しい戦いを強いられると話します

(政治ジャーナリスト・元日本テレビ官邸キャップ 青山 和弘氏)
「給付されるよりも、そもそも税金を取るのをやめてくれと、国民の負担を減らしてくれという声は少なくない」「今回の自民党のやり方は、国民の声には応えない方針になる。そうしたことが参議院選挙には少なからず影響してくる、これは間違いないと思う。さらに、今回の通常国会を見ていて、自民党は野党の言うことを、どこまでのむか、のまないかという対応に終始している」「今の状況では、参議院選挙は自民党は非常に厳しい戦いが予想されるということは間違いなく言えると思う」

与党は、できる限り多くの野党から予算案への賛成を取り付けたい考えですが…、注目を集める「年収の壁」の協議は決着するのでしょうか。

そして…、与党と国民民主党との19日の協議は、午後5時前に終わりました。

19日の協議では、国民民主党から、年収の壁に関する民党案について、「所得制限の撤廃」や、ガソリンの暫定税率の廃止を2025年の早いうちに合意してほしいと申し入れがありました。協議を終え、国民民主党の古川代表代行は…。

(国民民主党 古川 元久 代表代行)
「宮沢税調会長からは、『持ち帰って検討する』と、『あす、また午後やることにしよう』ということで合意した」
Q.議論のデッドラインは?
「こちらから、いつということはない。粘り強くやる」

与党と国民民主党の3党協議は、20日も、午後に開催される予定です。

最終更新日:2025年2月19日 19:13
    静岡第一テレビのニュース