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【解説】“年収の壁”自民党が新案「160万円」提示 所得制限も?狙いは…

2025年2月18日 20:54
【解説】“年収の壁”自民党が新案「160万円」提示 所得制限も?狙いは…

18日、「103万円の壁」をめぐり「久しぶり」の動きがありました。

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おもに学生などの年収が103万円を超えると所得税がかかる「103万円の壁」により、働き控えなどの影響が現在あります。国民民主党は課税ラインを「178万円」まで引き上げるべきと一貫して主張してきました。一方、自民・公明の与党は「123万円」までとして、両者の意見は対立し、年末に協議は決裂していました。

そこから2か月。少数与党として予算成立には野党の協力が不可欠な中、自民党が18日に新たな案を出しました。「160万円」という数字を提示したのです。果たしてこれでまとまるのか。日本テレビ・政治部官邸キャップの平本典昭記者が、3つの疑問を中心に解説します。

1.160万の新提案「話にならない」
2.なぜ?維新が自民に「急接近」
3.どうなる?“タイムリミット”まで3日

鈴江奈々キャスター
「まず、『160万円』の新提案でまとまるのでしょうか?」

政治部官邸キャップ・平本典昭記者
「当初、自民党は『150万円』を検討していましたが、10万円上乗せした『160万円』を提案しました。ただ、まとまるかというと、そう簡単ではなさそうです。ある国民民主幹部はこの提案に『話にならない』と反発しています」

「まず、会談が2か月ぶりということでかなり注目されたようです。会談には、異例といえる100人以上のメディアが集まる注目度の高さだったそうです」

「自民党が18日に提案した『160万』という数字、実はこれまでとちょっと違うんです。それは、対象が全員ではなく、所得額でラインを引く点です。具体的には、年収200万円以下の人に限定するとしています。国民民主党側は『所得制限を設ける設計だ』と指摘して反発しています」

「ちなみに、年収500万円以下でもラインを引き、壁を引き上げる方向で検討されています」

鈴江キャスター
「『所得に関係なく』というのが国民民主党の案でしたが、自民党はなぜ、新たに所得でラインを引く案を出したのでしょうか?」

平本典昭記者
「これは、2つのメッセージがあります。1つは『低所得者ほどより恩恵を受けられる』。もう1つは『財源を抑えられる』です。当初の国民民主党の案は7~8兆円必要とされていましたが、所得でラインを引けば対象者を絞ることができるので、財源を抑えることが可能になるわけです」

鈴江キャスター
「高所得者ほどこれまでたくさん所得税を納めている分、戻ってくる額も大きいので、高所得者にはより多く減税額が戻るという指摘もされていました。所得でラインを引くことは、そういったことに配慮したということでしょうか?」

平本典昭記者
「はい。自民党としては、やはり物価高対策などで、低所得者を重点的に支援する必要があるということで、『103万の壁』の問題も、高所得者よりも低所得者に傾斜をかけて、より恩恵をこうむるようにしたいという狙いがあるとみえます」

鈴江キャスター
「国民民主党はなぜ、この案では賛成できないと言っているのでしょうか?」

平本典昭記者
「国民民主党の原点は『去年の選挙で「103万円の壁」引き上げが支持された』というものです。対象を限定するのではなく『広く、手取りを増やす』ことの実現にこだわっています」

「自民党案に、国民民主党の幹部は『年収200万円以下に絞ると、手取りが増える対象が相当限られてしまう』と。別の幹部は『壁をなくそうとしているのに新たに所得制限という壁を設けるので、この発想はばかげている』と反発しています」

「『160万円』という数字は出てきましたが、与党公明党からも異論が出ていて、簡単に妥協する気配はありません」

鈴江キャスター
「なぜ今、自民党は、国民民主党ではなく日本維新の会に『急接近』しているのでしょうか?」

平本典昭記者
「まず、自民党から見て、協力を得るのにどっちが『お買い得』か、という考え方があります。ある政府関係者は『維新の方が安上がり』と話しています」

「『103万の壁』については、国民民主党が要求している『178万円』まで引き上げれば解決に7~8兆円必要なのに対し、日本維新の会の教育無償化は6000億円程度とみられていて、賛成を得るために払うコストが『安上がり』というわけです」

「もう1つ、ベースにトップ同士の関係の深さがあります」

「石破首相と前原共同代表は、実は鉄道が共通の趣味という『鉄道マニア』なんです。さらに2人は安全保障政策に精通している共通点などもあり、ずっと前から関係が深かった面があります。実は、今年に入り水面下で、2人は少なくとも2回は秘密会談を行っていて、両党の接近のベースには、こうした2人の関係があったといえます」

「また、政権幹部の1人は『話が通じない国民民主党より、前向きな話ができるのは日本維新の会だ』と指摘しています」

鈴江キャスター
「そんな中、“タイムリミット”まで、あと3日とはどういうことなのでしょうか?」

平本典昭記者
「はい。来年度予算案を年度内に成立させるために、政府与党は今週内に野党側との修正協議の合意を目指しています。事実上のタイムリミットはあと3日です」

「国民民主党とは、『103万円』をめぐる協議の難航が予想されます。立憲民主党とは、3.8兆円にのぼる予算の修正を求める中、妥結の糸口すら、まだ見えません」

「日本維新の会ともゴールが完全に見えたわけではありません。日本維新の会は教育以外にも、社会保険料の負担軽減などを求めています。ある日本維新の会の幹部は『まだ最低限のベースができただけ』と話しています。もう1歩、2歩、自民党の歩み寄りが求められることになりそうです。各党のギリギリの調整が、19日以降も続きます」

最終更新日:2025年2月18日 20:54
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