想定外の津波データ…“避難タワー”使えず 住民「何のために建てたんだろう」久慈市から中継
11日で東日本大震災から12年です。東日本大震災で津波被害があった岩手県久慈市から「news every.」藤井貴彦キャスターが伝えます。
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私がいるのは、海から約350メートルの場所です。12年前、防潮堤を越え、この場所にも津波が押し寄せました。そして、多くの民家が浸水しました。
震災の5年後に新たな避難場所として建てられたのが、私が立っている避難タワーです。約9メートルの高さがあり、津波から逃れるには十分な高さだと思われました。しかし、タワーを建てた後に想定外のデータが発表されました。
太平洋に連なる日本海溝。ここを震源としたマグニチュード9以上の巨大地震が発生した場合、東日本大震災より大きな津波が押し寄せる可能性があるというのです。
その津波の高さは避難タワーの「9メートル」をはるかに超える「16メートル」。屋上に避難しても津波にのまれる可能性が出てきたのです。この避難タワーは、津波の避難場所として使えなくなってしまいました。
この地区は平地が広がっていて、逃げるような高い場所は、すぐ近くにはありません。高齢者の割合も高く、そういう方たちにも避難タワーは上りやすい設計になっています。
私も階段を上ってきましたが、40秒もかからず上ることができました。また、車イスなどで避難できるようにスロープもあります。電気もつくため、夜も足下が見えて安全に上ることができる場所です。しかし、津波の避難場所として使うことはできません。
今、この近くに住む方にとって最も近い避難場所は、高台にある神社です。その場所は、急勾配な約160段の階段を上らなければなりません。歩いて行くと約8分かかり、避難タワーに上るより多くの時間がかかってしまいます。
この地区の住民は避難タワーについてこのように話していました。
避難タワーの近隣住民「(避難タワーは)この高さで、何で建てるのかなとみんなで言っているんだけど」「役に立つのかな? 何のために建てたんだろうと」
市では、新たな避難計画の大幅な見直しを行っています。
被災地ではこの12年、多くの場所で東日本大震災の教訓をもとに避難施設や防潮堤の整備が行われてきました。しかし、つくった後に想定を超える津波予想も出てきていて、避難の仕方について模索が続いています。