オミクロン拡大で“新提言”違い・考え方は
各地で新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多を更新し続ける中、一部の専門家が「重症化リスクの低い人は、必ずしも医療機関を受診しなくてもよいのでは」などとする新たな提言を出しました。これまでの対策とどう違うのか、詳しく解説します。
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20日、全国で新たに確認された感染者は4万6197人で、全国28の都道府県で過去最多となりました。
21日は、北海道で1644人、愛知で3187人と過去最多になりました。大阪でも午後4時半すぎ時点で、過去最多の6200人前後となる見通しです。
感染拡大を受け、大阪、兵庫、京都の3府県は、まん延防止等重点措置の適用を政府に要請しました。
■「人流抑制よりも人数制限を」…新たな“提言”とは
こうした中、厚生労働省の専門家会議で20日、新たな対策について議論が行われました。
アドバイザリーボード 脇田隆字座長
「オミクロン株の特徴というのは、かなりわかってきていますので、その特徴にふさわしいメリハリのついた効果的な対策というものが必要だろうと」
この会議で専門家の有志が連名で示した正式な提言があります。まず、「感染対策」については、次のようになっています。
1.「人流抑制」よりも「人数制限」を
つまり、一律・広範な「人流抑制」よりも、「感染リスクの高い場面・場所に焦点を絞って接触機会を減らす」としています。ただし、「知事の判断で人流抑制を加味することもあり得る」としています。
2.飲み会などはいつも会う人と「より少人数」で「短時間」で行う
大人数のパーティーや会食は避け、実施する場合は、当日の抗原検査や人数制限などを行うこと、としています。
3.クラシックなどのコンサートや、スポーツ観戦は「感染リスクが低い」ことが判明しているから、これまで通り「席の間隔をあける」、「静かな観戦」などをすることを徹底する
4.都道府県をまたぐ移動は、移動先での感染リスクの高い行動は避けて
これまで言われてきたものとは、少し変わったとの印象を受けます。
■都独自の要請も…提言とは“温度差”?
ただ、21日からまん延防止等重点措置が適用された東京都では、次のような都独自の内容を要請しています。
・不要不急の外出は自粛し、混雑する場所や時間を避けて行動を
・都道府県をまたぐ不要不急の移動は、全員検査をして陰性だとわかっていない場合は自粛
専門家の提言とは少し温度差があります。目指すところは同じだと思いますが、ニュアンスが違う印象を受けます。
小池知事も、午後2時半ごろの会見で、次のように述べました。
小池都知事
「人流と人との接触の機会の削減が重要で、不要不急の都道府県間の移動の自粛――いま申し上げた2つは基本的対処方針に書かれていることなので、いま、『都道府県の判断で』と言われているので、判断するけど、いずれにしましても、それは速やかに調整していただきたい」
都の対策は、「あくまで国の方針に沿った対策だ」と強調しました。
■「若年層で重症化リスクの低い人は自宅療養を」なぜ?
また、提言では医療の提供体制を確保するために、これまでと違う対策を打ち出しています。
現在は、「発熱などの症状があれば受診、医師が必要と判断すれば検査」するというのが基本的な考え方です。ただ、今後、感染者がさらに急増した場合、外来や検査のひっ迫が予想され、高齢者や重症リスクがある人に十分な時間が割けなくなる恐れがあるということです。
そこで、提言では、このまま感染が急拡大した場合には、「外来医療の機能不全を防止するために、若年層で重症化リスクの低い人については、必ずしも診療所などに行って受診せず、自宅での療養を可能とすることもあり得る」としました。
根拠としては、オミクロン株は早ければ、この2週間前後でピークが来る可能性があり、第5波の時よりも高いことが想定される中、「感染が疑われるすべての人が検査や診察のために医療機関を利用すれば、キャパシティー(対応可能な範囲)を超えてしまう」と指摘されていることがあります。
オミクロン株では、「基礎疾患や肥満がない50歳未満の人の多くが感染しても軽症で、自宅療養で軽快している」などの特徴があることを背景としています。
■“提言”に「線引きが難しい」指摘も
こうした提言案について、他の専門家はどう受け止めているのでしょうか。
国際医療福祉大学の松本哲哉教授は、「優先順位から言えば、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人を特にケアするのは間違いではない。ただし、若くても重症化リスクのある人はいるので、線引きが難しい」と指摘しています。
現場で直接、患者と向き合っている医師は、少し慎重な意見にならざるを得ないということだと思います。
■「リスクの高い状況を集中的に…」提言案のベースとは
今回の提言案のベースとなっているのは、「感染は急速に拡大するが、それほど重症化はしない」という「オミクロン株の特徴を踏まえた対策が必要」という考え方です。
つまり、医療の面ではこれまでのように、誰でも一律に幅広く検査や入院をするのではなく、「軽症者には効率的に」「ハイリスク者には、きめ細かく」とメリハリをつけることで、とにかく医療ひっ迫を防ごうという考え方です。
そして、社会的な側面では、一律にステイホームや飲食店への時短営業などを求めるのではなく、「リスクの高い状況を集中的に避けることで、社会機能を維持して、経済を回し続けながら感染を抑制していこう」という考え方がベースにあります。
ある意味では、これまで2年間、私たちが続けてきたコロナとの闘い方の「フェーズが変わる」という受け止め方もできるのではないでしょうか。
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オミクロン株の拡大によって、私たちのコロナとの向き合い方そのものが大きく変わる可能性が出てきました。過去2年間の経験や知見を生かして、社会全体にとって少しでもダメージの少ない方法で、この第6波を乗り切っていければと思います。
(1月21日午後4時30分ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)