「ギャンブル依存症は病気」 若者もオンラインで多額の借金…違法行為へ警鐘『every.特集』
スマホやパソコンを通じて行うギャンブル「オンラインカジノ」により、借金を抱えるなどの相談件数が、5年間で約12倍に増えています。警察庁や消費者庁がその違法行為について注意を呼びかけています。若者にも増える新たな「ギャンブル依存症」の現実とは…。
横浜市にあるデイケアセンター「ぬじゅみ」は、「ギャンブル依存症」からの回復に取り組む女性専用の支援施設です。現在、9人が利用しています。
利用者
「夫が4年前に亡くなって。何をしたらいいのだろうみたいな感じだった。パチンコ店に入り浸りになっちゃって」
利用者
「全部で4800万円ありました。(パチンコに)使ったお金。それだけあれば家も一軒建っただろうに」
20歳で出産し、子育ての不安と戸惑いから、パチンコ・スロットにはまったという女性は…
「うまく育てていけるのだろうかとか、自分の中ですごく不安で不安でしょうがなかった。パチンコ店に行くと何にも考えなくていいから」
消費者金融から120万円もの借金をし、家庭は崩壊。子どもとも離れて暮らすことになったといいます。
「ぬじゅみ」では、グループミーティングなど回復プログラムを実施。2年をめどに利用者が社会復帰できるよう目指しています。
ギャンブル依存症について今、相談内容に変化があるといいます。
――大学生の娘、ネットカジノにはまってしまい、700万円ぐらい使ってしまった。
子どもが、スマートフォンやパソコンを通じて行うギャンブル「オンラインカジノ」にはまり、借金を抱えたという親からの相談が増加しているのです。
ぬじゅみ 金山 歌代 施設長
「(オンラインカジノによる借金が)2000万円、3000万円。全部合わせて7000万~8000万円という家族もいますし。でも(本人が)若さもあるので、まだまだ自分でどうにかするって言って」
従来のギャンブルとは違い、手元のスマホなどで、24時間簡単にアクセスができるオンラインカジノ。
こちらの調査では、相談件数が、2021年から急増し、5年間で約12倍に増えています。
横浜市にある、「依存症の治療」を専門とするクリニック。30年以上治療に携わる医師はオンラインならではの危険性に警鐘を鳴らします。
依存症を長年治療 大石クリニック 大石 雅之 院長
「オンラインだと、気づいたら何千万円とか」
「発症から破滅に至るまでが非常に早い。本人が(ギャンブル中に)止まるチャンスが非常に少ない」
「いつでもできる、額が無制限、これはたちが悪い」
手軽にいつでもアクセスができるため、短時間で多額の借金を背負うケースが多いといいます。
実はこのオンラインカジノ、海外で合法的に運営されるサイトであっても、日本国内からアクセスし、賭けを行えば「賭博罪」に問われます。
警察庁や消費者庁は再三注意を呼びかけています。
私たちは取材をする中で、オンラインカジノにのめり込んだ一人の男性に出会いました。20代のハヤトさん(仮名)。
オンラインカジノに依存 ハヤトさん(仮名・20代)
「借金300万円作って。のめり込んでいくスピードがすごく早かったなって思いますね」
オンラインカジノを始めてからわずか4か月で、300万円もの借金を抱えました。
きっかけは、3年前。SNSで見た「ある広告」でした。
ハヤトさん(仮名・20代)
「僕が好きなサッカー選手が映っているオンラインカジノのバナー広告が目について。本当に暇つぶしになればいいなということで」
そこには「初回限定キャッシュバック」や「ボーナス」など特典が書かれていました。
ハヤトさん(仮名・20代)
「ちょっとしたゲーム感覚というか、ゲームサイトなのかな?みたいな軽い気持ちでクリックしましたね」
ハヤトさんが実際に使用していたオンラインカジノのサイトのトップページには、有名サッカー選手が並び、高評価のレビューも。「支持率ナンバーワン」とうたっています。
登録をした先は、ディーラーがいて複数のテーブルゲームができる、まさに、リアルなカジノ。「少額ならば」と、ハヤトさんはゲーム感覚で1000円を入金。すると…
ハヤトさん(仮名・20代)
「1000円使って(最初は)負けて。1000円とかじゃ満足できなくなって1万円とか10万円。何のちゅうちょもなく入金するようになっていました」
「生きてきた中で、これほどのめり込んだものはないというか、何にも代えがたい刺激」
わずかな時間で勝負の結果が出るそのスピード感に高揚感を覚え、のめり込んでいったといいます。
スタッフ
「日本で違法だという認識はあった?」
ハヤトさん(仮名・20代)
「犯罪という意識はなくて。それこそサイトとかには『拠点が海外にあるので安全です』『安心・安全です』と書いてあるサイトが結構あったので」
日本国内での「オンラインカジノ」の利用が違法行為にあたるとは認識していませんでした。
当時、演劇関係の仕事をしていましたが、常にサイトにアクセス。掛け金も増え、借金を重ねるように。
ハヤトさん(仮名・20代)
「やめようという自分もいるんですけど、その意思に反して体が勝手に動いている。やめられなかった。やめたいのにやめられない」
ハヤトさんの当時の月収は、約20万円。借金返済におわれ、精神的に追い詰められていったといいます。
「一瞬で大金が手に入る方法、何かないかなと…闇バイトであったり、人の家に侵入して金目のものを取るとか、実際行動は移さなかったんですけど頭をよぎることはありましたね」
苦しんだ末、ハヤトさんは自ら支援団体に連絡。そこで、自身が「ギャンブル依存症」だと自覚したといいます。
依存症の当事者や家族を支援する会の代表を務める田中紀子さん。従来のギャンブルとは違う、「オンラインによるギャンブル」の危険性を訴え続けています。
ギャンブル依存症問題を考える会 田中紀子 代表
「賭けのスピード感が全然違うので、はまりやすいなと」
「今の若い人たちはオンラインカジノとか、スポーツベッティングを違法だと思っていない。違法ということの啓発が足りていないことが非常に大きな問題ではないか」
◇
現在、配達の仕事をしているハヤトさん。同じ問題を抱える人たちが支え合い、回復を目指す「自助グループ」に週3回通っています。
ハヤトさん(仮名・20代)
「ギャンブルをやめたい人たちとのつながりを得て、ギャンブルをしない生活を作っていきたいと思えるようになった」
医師や支援団体によると、ギャンブル依存症は病気だと自覚し、医療機関や自助グループにつながることが回復への第一歩だといいます。
ハヤトさんは、2024年8月に自己破産が認められ、生活を立て直し始めました。
そして今、支援団体からのすすめもあり、自らの経験を当事者やその家族に伝えようとしています。
ハヤトさん(仮名・20代)
「自分の中でギャンブルをしてはだめだという意思はあるけどやってしまう。自分でもう自分がもうわからない」
回復に向けて歩み始めたハヤトさん。
「1回でも賭けてしまうと前の自分に戻ってしまうので、今日1日賭けない日を、本当に積み重ねていく」
医師は、「ギャンブルをやらない毎日を積み重ねるしかない」と話します。
これが現実です。
(2024年11月20日「news every.』特集より)