【解説】英語を「話す力」に課題…6割以上の生徒が1問も正解できず 学力向上のカギに「対話型AI」
1日の「知りたいッ」は、全国学力テストについてお伝えします。
まずは小学6年生向けの問題に挑戦してもらいたいと思います。「テープを直線で切って、中に2つの三角形を作ります。この三角形の面積についてどのようなことがわかりますか」と問われ…
(1)「お」の面積の方が大きい
(2)「か」の面積の方が大きい
(3)「お」と「か」の面積は等しい
(4)このままでは比べることができない
この4択の中から当てはまる答えを選ぶ問題です。正解は(3)の「お」と「か」の面積は等しいが正解となります。
これは今年4月に実施された「全国学力テスト」の問題で、正答率は21.1%でした。テープの辺に三角形の頂点がどちらも接していることから、2つの三角形は高さが同じと気づけたか、そして、答えを選んだ理由を自分で説明する必要があったので、ハードルが上がったのかもしれません。
そして、今回の全国学力テストでは、「英語を話す力」についても課題が浮き彫りになりました。
1日の「知りたいッ」は――
◇英語を話す力“全滅”6割
◇対話型AIで底上げへ
以上の2点について詳しくお伝えします。
■英語を「話す力」に課題…平均正答率は厳しい結果に 1問も正解できなかった生徒は6割以上
まずは、英語を話す力がどうなっているのか見ていきましょう。
今年の全国学力テストは、小学6年生と中学3年生、約190万人が参加しました。小学6年生には国語と算数。中学3年生には国語と数学に加えて、4年ぶりに英語のテストも行われました。7月31日にその結果が公表され、それぞれの科目の平均正答率が出ました。英語については「聞く・読む・書く問題」は46.1%でした。しかし、「話す」の平均正答率は12.4%と厳しい結果となりました。
どんなテストだったのか見ていきます。英語のスピーキングテストは今回2回目ですが今回、初の取り組みとして「オンライン形式」で実施されました。
テストの実際の様子では、学生たちはヘッドセットをつけ、1人1台の端末を利用します。スピーキングテストは、生徒が回答した音声をオンライン上に録音して、それを文部科学省側に送信する形で行われました。スピーキングの問題は5問ありましたが、1問も正解できなかった生徒は6割以上となりました。かなり難易度が高かったことがわかります。
どんな問題だったか。正答率が最も低かった問題が「ニュージーランドから来た留学生の環境問題についての英語の発表」で、「日本では店でレジ袋を売ることをやめるべきだ」という留学生の意見を聞いて、自分の意見を英語で答えるものでした。この発表を聞いた後、考える時間は1分だけで、その直後に30秒間で自分の考えとその理由を英語で答えないといけません。なかなかの難易度で、正答率は4.2%にとどまりました。
正解できなかった4割近くの生徒からは「聞いたことを理解したが、話す内容が思い浮かばなかった」などとの声もありました。
文部科学省などは、問題の場面設定が複雑で難易度が高かったことや、生徒がスピーキングテストの仕様に慣れていなかったことなどが、正答率が低くなった要因として考えられるとしています。
英語教育に詳しい京都大学の金丸敏幸准教授も「このテストを中学生に課すのはなかなか酷」「正しい英語で回答しようとすると、大人でも10秒、20秒と時間を区切って回答するのは難しい」。さらに「面接官などとの会話なら間をとりつつ伝えたいことを話すこともできるが、デジタル相手だとよりシビアな環境になってしまった」と指摘しています。
とはいえ、「日本人にとって国際共通語である英語を話せるようになるためには、たくさんの表現に触れることが必要」と話しています。
文部科学省は、最先端のAIを使って英語の話す力を伸ばす取り組みも始めようとしています。
早稲田大学発のベンチャー企業が、対話型のAIを開発しました。アクセスするとキャラクターが表示され、利用者の英語のレベルに応じたやりとりができます。対話の時間は1回20分程度。終了後に「文法」や「発音の正確さ」「臨機応変なやりとりができているか」などアドバイスがもらえます。
文科省はこれを、9月をめどに千葉県成田市の県立高校の生徒を対象に実証事業として導入する予定で、家庭学習に活用してもらう方針だといいます。
今回、話す内容が浮かばなかった生徒が3分の1に上りました。まずは日々の授業などで自分の考えを持つこと。そして、英語を使って表現する経験を重ねていける環境整備が求められています。
(2023年8月1日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)