目を閉じる瞬間まで…老犬の最後の居場所
君と最期まで寄り添いたい。君がその目を閉じる瞬間まで…
「モコちゃんどうしたらいい?」
「ククク...」
老犬介護ホーム「アスル」。年老いた犬を、飼い主から有料で預かる民間施設です。アスル代表の小野洋子さん。
小野さん「1か月でも、最期が1週間だとしても、最期の瞳を閉じるときまで、幸せだったな、今日は楽しかったなと思える、輝くような時間を作ってあげたいと思っています」
アスルに預けられて3か月になる、18歳のモコ。モコは数年前から腎不全を患い、認知症の症状も見られるようになりました。モコの飼い主、下川和子さん。生後間もないモコを譲り受けて以来、18年間ともに暮らしてきました。
下川さん「(モコは)子ども、家族、自分の娘より長く一緒に住んでいる」「24時間そばにいて介護していたけど2時間ごとに起きるからおしっこ連れて行ったり、外に連れて行ったり、自分もきつかったですよね」
介護をつづける下川さん自身も、胃がんが見つかり入院することに。モコはアスルに預けられました。アスルで懸命にリハビリをして、下川さんの迎えを待ち続けます。しかしこの日、モコの容体が急変。病院に向かいます。自宅で療養中だった下川さんも駆けつけました。
小野さん「自宅に連れて帰るのか、それとも私が看取るのか」
下川さん「モコちゃんどうしたらいい?」
モコはアスルに戻ることに。小野さんたちの献身的な介護。仲間の犬たちにも支えられ、2週間後、モコは自宅に戻ることができました。
その翌日…下川さんに見守られながら静かに息を引き取りました。
下川さん「モコちゃんからのプレゼントだったと思います。私の体力回復するのをモコちゃんが耐えて待っていてくれたから、本当、モコちゃんのプレゼントと思っています。だからモコちゃんには感謝」
小野さんが「かのこ」と名付けたこの老犬。道端で保護されひどく汚れていました。少し前まで飼われていたものの病気になり、飼い主に捨てられた可能性があります。アスルでは、殺処分対象となった老犬を引き取る「看取りボランティア」も行っています。
小野さんはずっと寄り添います。この夜、「かのこ」は静かに旅立ちました。最後に人のやさしさに触れて…
小野さん「看取りボランティアって、最期を看取るこだけというのは、私たちは望んでいなくて、この子の明日、あさってを作ってあげたいっていう思いがあるので、どちらかというと悲しいより悔しい」「(看取りボランティアを)辞めることはないです。活動しなくていい日が来るなら辞めます。それがない限りは続けます」
2021年2月放送 福岡放送制作NNNドキュメント’21『目を閉じる瞬間まで…老犬たちの最後の居場所』を再編集しました。