“ママチャリトラブル動画”拡散 問題は?4つのケースを検証 #みんなのギモン
自転車に乗った女性と自動車の交通トラブルを捉えた1本の動画。
SNS上に投稿されたあと、ネット上で次々と拡散され、中には女性の身元を特定する動きも・・・。
こうした行為に法的問題はないのか、4つのケースを検証しました。
■モザイクなしの「ママチャリ」動画が拡散 誹謗中傷相次ぎ、個人情報特定も・・・・
今月12日頃、自動車のドライブレコーダーで撮影されたとみられる動画がSNSに投稿されました。
動画には、赤信号を無視して交差点に進入したとみられる自転車の女性と車が急停止する様子、さらに女性が激しく抗議するような様子が映っていました。
最初に投稿された動画はすでに削除されたとみられますが、動画はSNS上で瞬く間に拡散され、中には3000万回近く閲覧された投稿もあります。
この動画、モザイクなどの加工はされておらず、自転車の女性の顔がわかる形で投稿されていました。
SNS上には、自転車側が交通ルールを守っていないのではないかといった批判的な書き込みが相次ぎ、さらには女性の身元を特定するような投稿も相次ぎました。
こうした動画の拡散や批判的な書き込み。法的に問題はないのでしょうか?
今回、SNS上で過熱した拡散行為などについて4項目に分類し、それぞれどのような法的リスクが生じるのか、インターネット問題に詳しい清水陽平弁護士(法律事務所アルシエン)に聞きました。
①最初に動画を投稿した人
動画をSNS上に投稿すること自体に問題はありませんが、顔が判別できる形でネット上に投稿した場合、肖像権侵害にあたる可能性があるといいます。
女性が道路交通法に違反しているとして、それを指摘するために動画を投稿したとすれば、その行為自体には公共性がある、と判断される可能性があるといいます。
ただ、今回のケースでは、女性の顔を出さずに指摘することは可能であり、顔をさらさなければいけない必然性は高くなかったと考えられるため、損害賠償責任を負う可能性があるということです。
また、違反の度合いが軽微であるにもかかわらず、あえてモザイク処理をせずに投稿しているとなると、仮に訴えられた場合、相手を攻撃する意図や報復を目的とした行為と裁判所から判断される可能性があるといいます。
②投稿を拡散した人
既にSNS上に投稿されていた動画だとしても、それを拡散した場合、最初に投稿した人と同じように肖像権侵害の責任を負う可能性があるといいます。
また、動画に映る人物の容姿や人格について、過度な表現で否定的な言葉を書き込むなど、相手の社会的評価を下げるような投稿を行った場合には侮辱罪に問われる可能性があるといいます。
③特定情報を投稿した人
動画に映った人の氏名や住所などといった「個人情報」を特定し、ネット上に投稿する行為は、プライバシー侵害にあたり、損害賠償責任を負う可能性があるといいます。
その情報を拡散した人についても、プライバシー侵害に加担したとみなされ、責任を負う可能性はあるということです。
また、投稿した情報が間違っていた場合には、間違って特定された人に対する名誉毀損も生じます。
間違われた無関係の人に、誹謗中傷など深刻な問題を引き起こすことも考えられるため、特定行為や安易な拡散は避けるべきだといいます。
こうした情報を記事のような形にまとめて掲載する「まとめサイト」も、拡散行為と同じだといいます。
新たに別の媒体に情報を掲載し直すことで、改めて肖像権の侵害やプライバシーの侵害が生じると考えられ、まとめサイトの運営者に損害賠償責任が生じる可能性があるといいます。
まとめサイトの多くは広告収入が目的と考えられるため、公益目的とは判断されず、正当性は認められない可能性が高いということです。
また、なかには法的な責任を回避しようと「誤情報の可能性がある」と注意書きがされていることもありますが、それだけで必ずしも責任を免れるとは言えず、不用意な情報拡散は避けるべきだといいます。
清水陽平弁護士
「拡散行為に加わるなど、正義感をネット上で振りかざす行為は時に個人的な制裁となり、場合によっては法的責任を負うリスクを抱え込むことになるため、そのような行動は避けるべきだと思います」
安易に拡散したり、身元の特定に加担する前に、権利侵害など法的問題に問われる行為ではないか、冷静になることが必要です。
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