【2024"荒れた都知事選"】ポスターに「わが子の写真」"掲示板ジャック"した男性の後悔
(報道局 調査報道班 佐藤正己)
■主張広める意思は希薄…きっかけは突然
妻子とともに愛知県で暮らす50代の男性。そもそも男性は「そこそこに豊かな人生を送り、今の日本にさほど不満があるわけではない」といいます。
一方で、平和な生活はまっとうな政治があってのもので、今の日本の豊かさを守り、子どもたちに残したいという思いを抱いていました。
「今の日本の豊かさを、子どもたちに残したい」「未来の子どもたちに、よりよい未来を渡したい」
自分の考えを世に広めようとは、あまり考えていなかったという男性。きっかけは、突然やってきました。
■「先進的なアイデア」…掲示板ジャックに参加しなければ「一生後悔」
男性は先月「ポスター掲示場をジャックせよ」というNHKから国民を守る党が掲げた文言を目にします。
選挙の掲示板が「名もない一国民が自由に主張できる場」になり、「マイナーな意見でも伝えたい人は伝えられる」「多様性のある社会にふさわしい先進的なアイデア」だと思ったといいます。
そして「行動を起こさなければ、後で一生後悔するだろう」との考えにいたります。
■55万円払って「わが子をポスター」に
男性はさっそくポスターの制作にとりかかります。ポスターには「ダメ!一極集中」「投票に行こう」「東京を住みよい街に」と見だしをつけ、二次元コードの先に長文の主張を記載。写真はインパクトと力強さのあるものを使って、人々の目をひきつけたいと考えました。
そうでもしなければ、ポスターを見てくれる人はいないだろうと思った男性は、「子どもの写真」がよいと判断。わが子の写真を使うことにしました。
なぜわが子の写真を使ったのか?
「『僕たちの未来を壊さないで!』と本気で怒って『ダメ!』と言っている様な子どもの写真にしたかった」とし、たまたま何かの拍子に撮れた、怒った表情のわが子を使うことに。また、1歳に満たないわが子に写真を見せると「『これでいい?』と聞いたらニコッと笑ったのでこれでよしとしました」と答えています。当然、赤ちゃんに意思表示ができるはずもなく、自分を納得させるためだったといいます。
■「何てことを!」家庭内別居状態に…
わが子の写真を使って900枚のポスターを作成し、それを都内36か所に張り出しました。かかった経費は合計55万円4040円。
将来、わが子に対しては、都民の投票をうながすために「君の写真を使わせてもらったよ。君の写真が役立ったよ。ありがとう」と言える日が来るだろう、と考えていた男性。妻が事態を知ることで、状況が一変します。
男性は「掲示板ジャック」に参加する事を、妻に一切、話していませんでした。妻はポスターを作っている様子は見ていたといいますが、「なんのためにどこで使うのか」は、話していなかったため、「一人で作って楽しんでいる」程度に考えていたのではないかと、思い返します。
事態を知った妻は「何てことをしてくれたの!」と泣きながら、怒りをあらわに。息子に「デジタルタトゥー」という消えない傷を負わせた事や、社会規範に逸脱した事をして皆様に迷惑をかけたと憤っているといいます。
現在の家庭状況について聞くと「家庭内別居といえる状態です」「ため息ばかり、後悔してばかりです」と、心境を語りました。
■「一生消えない傷」「ぬぐえない黒歴史」…反省と後悔
「掲示板ジャック」について、社会からの反応は「非常識」「不快で迷惑」というものばかり。男性は「これほど非難されることはもう二度としてはいけない」「永久封印されるべき」と、考えを改めたといいます。
わが子をポスター写真に使ったことについては、「ぬぐえない黒歴史をつくってしまい、一生消えない傷を負わせてしまった」「子どもが悲しみ子どもに責められる未来を作ってしまったことに絶望を感じている」と、反省と後悔の念を述べています。
■時間が戻せるなら…
男性は私たちの取材に対し、最後にこう述べました。
「時間を戻すことができるなら、平和な温かい家族の生活に戻したいです。都知事選を気にする暇があったら、もっと家族・子どもにちゃんと向き合って日々の自分たちの生活のことを考えるべきだったと思います。都民でもないのに余計なことをするべきではなかったと猛省しております」
「ただただ皆様に申し訳ない気持ちでいっぱいです」
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