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【2024“荒れた都知事選”】捜査幹部が抱いた危機感「目に余る異常な状況だった」

2024年7月11日 6:45
【2024“荒れた都知事選”】捜査幹部が抱いた危機感「目に余る異常な状況だった」
今回の都知事選は過去最多の56人が立候補するなど異例ずくめの選挙戦となりました。私たちは選挙違反などを担当する警視庁の捜査幹部たち、そして選挙事務などを行う選挙管理委員会の担当者たちに話を聞きましたが「目に余る異常な状況だった」との声も。

“荒れた都知事選”に向き合った担当者たちの本音とは。(報道局 調査報道班)

■都知事選 警視庁は「厳戒態勢」

東京都知事選の告示を控えた先月7日。警視庁トップの緒方禎己総監は勢ぞろいした捜査幹部ら約280人に対しこう呼びかけました。

「厳正公正な取り締まりを徹底してほしい」

念頭にあったのは「つばさの党」を巡る公職選挙法違反事件。悪質な自由妨害などには、捜査を強力に推し進めるよう発破を掛けたのです。

警視庁は都知事選に際しおよそ2000人態勢の選挙違反取締本部を設置。演説会場などにおける要人警備などについても厳戒態勢で臨みました。

結果、つばさの党の事件のような、候補者による目立った演説妨害などは確認されていません。その一方で警視庁が想定していなかった事態もおきました。

■「想定外」だった「ポスター問題」 捜査幹部たちに危機感

それは一部の候補者による選挙ポスターの問題。候補者の一人河合ゆうすけ氏は、掲示板にほぼ裸の状態の女性の写真を載せたポスターを貼りました。警視庁は東京都の迷惑防止条例違反にあたるとして警告。河合氏はポスターを撤去しました。

この件について警視庁の捜査幹部の1人は「あらゆることに対応できるよう準備していたが、これは想定外だった」とした上で、こう話しています。

捜査幹部A
「これまでの都知事選においても、ふさわしくない表現はあったが明らかな違反行為が行われたことが今までと違う。これまではグレーゾーンはあっても違反は記憶する限りなかった」

また「NHKから国民を守る党」は複数の候補者を擁立して、その枠にポスターを貼る権利の販売を行い、渋谷区の掲示板には女性専用風俗店の店名などが記載されたポスターが貼られました。警視庁が風営法違反の可能性があるとして警告を行った結果、ポスターは別のものに差し替えられましたが、警視庁の幹部たちは危機感を抱いたと話しています。

捜査幹部B
「警視庁は(選挙活動を)規制したいと思っているわけではない。しかし規制しないといけない目に余る異常な状況が今回はあった。常識が働かない状況になっている」

捜査幹部C
「(これまでは)選挙運動する側の理性や良識に頼っていた部分があったが、今回は混乱しかねない状況が多々あったのが特徴だと思っている。選挙における公平・公正さを維持・確保するためにあらゆる法令を駆使した」

■荒れた都知事選「既存政治に対する不満の表れか」

これまでになく選挙戦が荒れた理由を専門家はどのように見ているのでしょうか。日本大学の安野修右専任講師に聞きました。

「最大の背景の1つは既存の政治に対する不満だと思います。保守的な小池さんと革新的な蓮舫さんの対決といった構図に飽き飽きとして、もっと別な軸を望む地殻変動が起きている。その不満がどんどん表にあらわれている状態なのではないでしょうか」

■今後の選挙 ポスターの“事前審査”も必要か

今後の選挙への影響を懸念する声もあがっています。早稲田大学の日野愛郎教授は─

「当選を目的としない売名目的であるとか、営利目的と受け取られても致し方ない候補者が散見されたのは残念でした。これは選挙そのものの趣旨に反しているということになりますので、今後同じようなことが起こらないようにしていかなければいけない」

日野教授は対策の一つとして、選挙管理委員会によるポスターの事前審査をあげました。

「当然思想や信条の自由ということは尊重されなければいけない。したがって政治的な主張には、公権力として介入するべきではないという前提は重要だと思います。一方で『候補者の名前が書かれていない』『公序良俗に反する』などの基準を設けておけば、選挙管理委員会が事前に審査をして十分判断できるのではないかと考えています」

また日野教授は、ポスターを貼る権利の販売について「公職選挙法の改正も視野に入れた議論が必要」と指摘しています。

■男性候補が提訴「クリアファイルは不平等」

選挙ポスターを巡っては、候補者の一部から「不平等だ」との声もあがっています。

今回の都知事選で準備されていた選挙ポスターの掲示板は48枠でしたが、それを超える56人が立候補。そのため東京都選挙管理委員会は、49番目以降に届け出た候補者には、配布したクリアファイルなどの上にポスターを貼り掲示板に取り付けるよう求めました。

これに対し男性候補の1人が“この扱いは不平等だ”として東京都などを相手取り、およそ2000万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴したということです。

男性は「雨で何枚もポスターがはがれた。貼れているポスターもおじぎをするような形で名前も顔も見えない」と主張。また別の男性候補も都を提訴する意向を示しています。

■区の選管担当者は「60面に変更可能だったのに…」

選挙ポスターの掲示板は、東京都選挙管理委員会からの指示で区市町村の選挙管理委員会が設置しました。区の担当者からは都の指示を疑問視する声が噴出しています。

<A区の選挙管理委員会担当者>
「候補者数が48人を超えることは事前に予見できたのに、何を根拠に48面にしたのか分からない。6月10日までに指示があれば増設できたし、それは都選管にも伝えていた」

「クリアファイルでの対応は問題視している。どう考えても公平ではない。絶対に枠は足りなければいけないもの。大は小を兼ねるので早めに増設すべきだった。全くもって異例だし考えられない。都選管に振り回された」

<B区の選挙管理委員会担当者>
「報道でも50人規模とやっていて、その時期なら60面に変更できたのに何の指示もなかった。いざ告示日になって突然“あ~足りなかった”とその時に気づいたような感じで違和感があった」

「選挙の平等性は民主主義の基礎。何番以降は知りませんは理念に反する。23区で情報交換する場があるので都選管からは説明を求めたい。都選管と自治体選管で連携して共通の意識で臨まないと正しい選挙運営はできない」

こうした声をどのように受け止めるのか。都の選挙管理委員会は「全体の業務量に対して少ない人員で対応している状態でした。選挙が終わった直後で全体の整理はこれから行う段階です。対応が遅かったなどについて今、お答えする材料がありません」と話しています。

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●2024“荒れた都知事選”
過去最多となる56人が立候補した2024年の東京都知事選挙。日本テレビ報道局調査報道班は、"荒れた都知事選"をいろいろな側面から徹底取材しています。

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