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子どもたちが狙われる!性加害の新たな手口 親も気づきにくいSNSを通じた「セクストーション」とは?

2023年12月31日 14:00
子どもたちが狙われる!性加害の新たな手口 親も気づきにくいSNSを通じた「セクストーション」とは?

2023年、深刻な被害が次々と明らかになった旧ジャニーズ事務所の性加害問題。こうした、特に子どもの性被害はいま、世界的に問題視されている。キーワードとなっているのが「セクストーション」。SNSを通じて子どもを狙う新たな手口だ。あなたの子どもにも驚くべき犯罪の魔の手が伸びているかもしれない。
(社会部 高柳遼太郎)

■旧ジャニーズ事務所の問題が呼び起こした「性加害」への関心

2023年、旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長から性加害を受けたとして、以前事務所に所属していた多くの男性が声を上げた。国連人権理事会の作業部会が来日し、問題について調査を行うなど、国際社会の関心も高かった。

■新たな手口「セクストーション」がSNS上で広がりを見せる…

2023年12月、茨城県水戸市で開かれたG7内相会合。柱の1つとして議論が行われたのが「児童の性的搾取」だった。この場で各国が強調したのが、SNSで犯罪者が児童をおびきだし、脅してわいせつな行為をする手口「セクストーション」への対策だ。2024年も広がりを見せるだろう「セクストーション」とはどのような手口なのか?捜査関係者によると、2023年に国内でも確認され始めたといい、2つの事例がある。

■SNSでやりとりしていた“女性”が豹変し…

男子中学生のAくんは、SNSで年齢不明の女性Bさんと知り合った。やりとりをしていると、ある日突然、Bさんから「わいせつな画像を送り合おう」と持ちかけられ、すでに気を許していたAくんは送ってしまう。

するとBさんは豹変。「画像を拡散されたくなかったら、○歳から○歳までの年齢の男性を紹介しろ」と脅してきた。Aくんがその幅の年齢で思い当たるのは、以前通っていた地域のスポーツチームのコーチで20代前半の男性Cさんしかいなかった。そのため、BさんにCさんを紹介。するとBさんは「CさんとAくんでわいせつな行為をしろ」とさらに要求してきた。

画像を拡散されたくないAくんは仕方なくその要求に応じ、「2人で頑張ろう」と優しく接してくれたCさんとわいせつな行為をしてしまった。しかし実はこれにはカラクリがあった。なんと、女性だと思っていたBさんはコーチのCさんがなりすましていたアカウントだったことが発覚。CさんはAくんにわいせつな行為をしようとして、女性を装って脅していたのだ。

事件発覚後、Cさんは児童福祉法違反などの疑いで逮捕された。「拡散されたくなかったら」などと言って脅すこの事例が、まさに「セクストーション」だ。

■親身に相談に乗ってくれた男性がまさかの…

もう1つの事例はこうだ。男子中学生のDくんはSNSでつながった女子中学生のEさんとやりとりをしていて、わいせつな画像を送ってしまった。

するとEさんから突然、「拡散されたくなかったら、このアカウントのFさんとわいせつな行為をする動画を送れ」と脅された。Dくんが仕方なくFさんのアカウントに連絡をとると、Fさんは「僕でよければ助けてあげるよ」と真摯に相談に乗ってくれた。Fさんは20代前半の男性だった。DくんはやむなくFさんに頼み、わいせつな行為をした。

しかしこれも、Eさんのアカウントの中身はFさんだったのだ。Fさんは相談に乗る中で、「Eさんに拡散された事例もみてるし、やばいやつだ」と巧みにEさんへの恐怖心をあおり、Dくんを追い込んでいった。そして表面上は「Dくんを救うためだから」とわいせつな行為に応じたふりをしたのだ。異変を察知した母親がDくんに事情を聞き、事件が発覚したという。

捜査関係者はこうした手口を「劇場型」と呼んでいて、「犯罪者は普通は思いつかないようなあの手この手で子どもに近づこうとする」と警鐘を鳴らす。

■ゲームで知り合った「優しいおじさん」が…

脅すだけが手口とは限らない。オンラインゲームで知り合った子どもにゲーム上のアイテムをプレゼントすることで「優しいおじさん」というイメージをつける。そして、現実に会う約束をとりつけ、一緒にご飯に行く中でわいせつな行為をした男も。

また加害者が言葉巧みに誘導し、「ペアレンタルコントロール」(保護者が子どものスマホなどを管理する機能)を解除するケースもあるという。機能を制限しているから大丈夫、と安心もできないのだ。

■警察庁とSNS事業者が対策進める

警察庁のまとめによると、SNSがきっかけで犯罪に巻き込まれた児童の数は、2022年は1732人。そのうち性犯罪などの重大な犯罪に巻き込まれる児童の数は年々増加している。

ただ、SNSは多くの人が使用しているツールだ。NTTドコモモバイル社会研究所の調査によると、15歳から79歳の男女6423人のうち、LINEの利用率は83.7パーセント、XやInstagramはおよそ40パーセントだという。そのため警察庁はSNS事業者と連携して対策を進めている。

ある事業者は、チャット機能を同世代とだけ使えるように制限している。こうした取り組みがあることはもちろん、親は我が子にスマホなどを持たせる以上、犯罪に巻き込まれる可能性があることを強く認識する必要がある。

■我が子が被害にあったら?どうすればいいか

では親は我が子とどう向き合えばいいのだろうか。SNSなどでの子どもへの性暴力の被害相談に応じる「NPO法人ぱっぷす」に話を聞いた。

相談員によると、親はまず「気を付けて」という言葉をやめることが大切だという。心配になって「性的な写真を送らないように気を付けて」と言ってしまいがちだが、これらは被害者の自己責任を問う言葉。日本では「撮らせた、撮られた側が悪い」という風潮があり、子どもは「気を付けられなかった自分が悪い」というマインドになってしまう。さらに親も「こんなに言ってるのになぜ気を付けられなかったの?」と我が子を責めてしまうというケースが多発しているそうだ。

気を付けられなかったせいではなく、加害者の巧みな手口による犯罪なのだ。「画像を撮ってもいい?」と聞かれること自体が性暴力で、相談していいことなのだと伝える必要がある。

また、もし我が子から被害を打ち明けられたら、まずは褒めることが大切だという。性被害を打ち明けるのには勇気がいる。だからこそ温かく受け止め、褒めてあげてほしいと相談員は言う。「怒らないから正直に言って」と伝えて話をさせた後で、「なんでそんなことしたの!」と怒って子どもにトラウマを植え付けてはいけない。「あなたは悪くない」「法律はあなたを守るためにある」と伝えて、子どもを安心させてほしい。

子どもの性被害は決して他人事ではない。
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