【解説】感染者が減少でも「入院需要は増大」想定なぜ…“遠隔診断”も開始 沖縄
全国の新型コロナウイルスの感染者が初めて6万人を超えました。そんな中、各地で救急搬送先の病院が決まらない事例が多発し、急な病気やケガにも注意が必要な状況になっています。
25日の全国の新規感染者は初めて6万人を超え、過去最多を更新しました。同じ火曜日でいうと、今月初めの4日は1265人でしたので、約50倍とオミクロン株の勢いが止まりません。
また、各地の感染者数をみてみますと、25日は29都府県で過去最多を更新しました。26日、北海道では初めて2000人を超え、過去最多となる見通しです。愛知も2日連続で過去最多の4663人。さらに、大阪では9800人前後となり、過去最多を更新する見通しです。
■沖縄県 感染者減少も「入院需要は増大」の想定
こうした中、オミクロン株が最初に急拡大した沖縄では気になる話があります。
沖縄の新規感染者数の推移をみると、今月初めから急激に増えた感染者数は15日の1829人が最多で、徐々に減少に転じています。それにもかかわらず、「今後も入院需要は増大」するという想定が出されました。
これはどういうことか。沖縄県の疫学調査チームが分析しました。
10万人当たりで年代別の感染者数をみると、感染者数の多い20代、30代は確かにピークを過ぎたようにみえますが、一方で、60代、70代の高齢者は最近でも徐々に増え続けています。感染は高齢者にシフトしてきていて、こちらはピークが来ていません。
こうした傾向の中で、沖縄県で今月1日から16日までにコロナと診断された感染者の「入院率」を調べました。
診断された後、どのくらいの人が入院に至ったのか。
10代以下は1%未満。20代から50代までは5%以下。60代でも7.7%。ところが70代になると、一気に22.2%になり、80代、90代は40%を超えていました。
高齢者になると、入院が必要な患者が急速に増加することが分かりました。こうしたことから沖縄県では、今後も入院需要が増大し、地域医療がひっ迫し始めています。
■自宅にいながら診断受けられる「遠隔診断」開始
こうした中、沖縄では26日、医療機関の負担を減らす新たな取り組みが始まりました。
現在、沖縄では検査の需要が急拡大し、PCR検査などを受けることが非常に厳しい状況が続いています。また、熱やせきなどの症状が出た人が受診する発熱外来も患者が集中し、救急医療の負担が深刻になっています。
そこで、26日から始まったのが「遠隔診断」です。医療機関を受診しなくても、自宅にいながら陽性だと診断を受けられる仕組みですが、診断を受けられる人には条件があります。
条件は「原則として40代まで」「症状が軽く、基礎疾患がない」「薬局などで購入した医療用の抗原検査キットで、自分でチェックして陽性と出た人」。このような人が、県のインターネットサービスで申請します。すると、登録センターが時間を調整して、医師から電話など遠隔でオンラインによる問診が行われます。
■「救急搬送困難事案」が最多に
オミクロン株の急拡大で救急医療が大変なのは、沖縄に限った話ではなく、救急車を呼んでも、すぐに搬送先の病院が決まらない「救急搬送困難」の事案が最多になったことが分かりました。
総務省消防庁のまとめによりますと、今月23日までの1週間で、全国で4950件となっています。新型コロナの流行後に1週間ごとの統計を取り始めてから最多となりました。
「救急搬送困難」とは、119番を受けた救急隊が、医療機関に受け入れ可能か4回以上問い合わせたり、30分以上現場に滞在した事例を指します。しかし、この中で「コロナ疑い」の事案は、1416件と3割ほどでした。
オミクロン株は重症化しづらい特徴がみえてきていますが、感染が高齢者にシフトすれば、入院や救急のひっ迫はまだまだこれからです。厳しい寒さの中での転倒や事故にも、十分気をつけてお過ごしください。
(1月26日午後4時30分ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)