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家族と生きる…この秋注目の3作が胸を打つ

2015年11月13日 5:22
家族と生きる…この秋注目の3作が胸を打つ

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。諏訪中央病院の名誉院長・鎌田實さんは作家でもあり、いくつもの映画会社から評論を求められるほどの映画通でもある。12日は、そんな鎌田さんが「家族と生きる」をテーマに、この秋の注目作を紹介する。

 ■「フジタ」

 まずは、芸術の秋にぴったりの日本とフランスの合作映画「フジタ」。1920年代のフランスで裸婦像を描いて人気を集めた日本人画家・藤田嗣治。第二次世界大戦が始まると、1940年に帰国。それまでとは一転して、描いた戦争画が評価され、日本美術界の重鎮へと登りつめていく。そして、5番目の妻とともに疎開先の村で敗戦を迎える。

 一見、時代に飲みこまれているようにみえて、実はどこで生きても藤田は藤田だったように思う。フランスでは日本画的な手法、一方、日本では西洋画的な手法を使って、2つ文化を自由に生きぬいた様子が描かれている。その自由な生き方は5回の結婚にも表れているのかもしれない。また、その自由な生き方を支えたのも5人の女性だったのだと思う。

 ■「エール」

 続いては、フランス映画「エール」。フランスの田舎町。耳の聞こえない家族の中でただ1人、耳の聞こえる少女。いつも通訳のように家族のそばで社会との橋渡し役をしている。そんな少女にはすばらしい歌声があった。パリの音楽学校への進学を勧められ悩む少女。歌手になる夢を追うのか、それとも家族のために生きるのか、葛藤しながらも成長していく少女の姿を描いた物語。

 耳に障害がある家族は、歌声を聞くことができず、少女の才能を信じることができない。そこで父親は、喉に手をあててもう一度歌ってくれと言う。最後に少女と家族はひとつの答えを出すのだが…、家族のあたたかさを教えてくれる映画だ。

 ■「パリ3区の遺産相続人」

 この秋の注目、最後の映画は、こちらもフランスを舞台にした映画、14日公開の「パリ3区の遺産相続人」。一文無しのニューヨーカーに父が遺産として残したのは、パリの高級アパート。しかし、そこには90歳の女性とその娘が暮らしていた。そのアパートで見つけた写真をキッカケに、徐々に自分の家族の秘密が明らかになっていく。

 主人公は、父には愛されなかったと父親を憎んでいた。父が残したアパートを売って借金を返し、人生をやり直すつもりだったものの、2人の女性が住んでいたことで、それもできず、さらに父を憎む。ただ、主人公は2人と生活していくうちに、徐々に亡き父が本当に残したかったものは何なのか気づき始める。人生を見つめ直すことの大切さを描いた作品だ。

 ■きょうのポイント

 きょうのポイントは「自分らしく生きる」。人は何歳でも再出発できる、“生き直す”ことができる。今回の映画からは、そんなことが伝わってくる。そして、「自分がどう自分らしく生きていくか」というメッセージが込められている。こうしたメッセージを受け止めながら、この芸術の秋、映画を楽しんでみてはいかがだろうか。

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