重要政策目白押し 法務省の2016年
2016年、法務省は重要な政策課題が目白押しになっていて、どこまで具体的に実現できるかが課題となる。
【1.刑事訴訟法の改正】
まず、最大の懸案は、取り調べの一部録音録画の義務付けや、いわゆる「司法取引」の導入、通信傍受の拡大を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を、今月から始まる通常国会で成立させることができるかどうかだ。
刑訴法改正案は去年、与党と民主・維新両党の間で修正合意がなされ、衆議院では可決されたものの、安全保障関連法をめぐる与野党対立に巻き込まれ、参議院で継続審議になったという経緯がある。
一部野党は、刑訴法改正案と同じく、参議院で継続審議となったヘイトスピーチ規制法案を先に審議するよう求めていて、法案の成立までには紆余曲折(きょくせつ)も予想される。
【2.性犯罪の厳罰化】
法相の諮問機関「法制審議会」で法改正に向けた議論が始まった「性犯罪の厳罰化」についても、法案の提出にまでこぎ着けられるかが課題となる。
改正案では、強盗罪よりも低くなっている強姦罪の罰則を現在の3年から5年以上の懲役へと引き上げ、「性交」にまで至らない一定の性的行為についても処罰の対象とするとしている。
加えて性犯罪を被害者の告訴なしでも起訴できる「非親告罪」に変更し、父母など18歳未満の子どもを監護している人が影響力を利用して性犯罪を犯した場合は、暴行や脅迫が伴っていなくても重く処罰することを盛り込んでいる。
【3.少年法適用年齢引き下げ】
去年11月からは、少年法の適用年齢を20歳から18歳に引き下げるかどうかを議論する勉強会が始まった。反対意見も根強い少年法の適用年齢引き下げについて、具体的な方向性を示せるかが課題となる。
【4.刑の一部執行猶予制度施行】
今年6月までには、薬物使用者や初めて刑務所に入る受刑者らを対象にした「刑の一部執行猶予制度」が施行される。懲役刑などの実刑判決のうち一部の刑期を刑務所で服役させ、残りの刑期については執行を猶予し、社会内で更生を図る制度だ。
出所後は保護観察処分などを付けることが想定されており、受刑者の社会復帰促進や再犯防止にどこまで成果を上げられるかが課題となる。
【5.民法大改正】
民法分野では「敷金」や「約款」について定め、120年ぶりに契約のルールなど約200項目を見直した民法大改正案が、国会に法案が提出されたものの、成立の見通しが立たない状況だ。
去年12月には「民法が定める再婚禁止期間のうち100日を超える部分は憲法違反だ」とする最高裁判決が出されたため、120年ぶりの大改正よりも再婚禁止期間を短縮する民法改正案の提出・国会審議が優先されるとみられる。
【力量が問われる正念場の一年に】
今年夏には参議院選挙を控える中、数多くある法務関連の政策課題に優先順位を付け、どれだけ具体的な成果に結び付けることができるのか。2016年は法務省と政府にとって力量が問われる正念場の一年となりそうだ。