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原発事故集団訴訟 裁判官が異例の現地検証

2016年3月17日 18:32
原発事故集団訴訟 裁判官が異例の現地検証

 東京電力・福島第一原発事故をめぐり、被災者約4000人が国と東京電力に対し、事故前の生活に戻すよう求めている裁判で、福島地方裁判所は17日、被災地を訪れ、検証を行った。

 福島地裁の裁判官が17日に訪れたのは、避難区域に指定されている福島県の浪江町と双葉町、富岡町の3つの町。

 原発から約10キロの距離にある浪江町では、原発事故により、飼育していた約150頭の牛を置き去りにせざるを得なかった原告の牛舎や自宅で、被害の状況を検証した。

 原告・浪江町で畜産営んでいた佐藤貞利さん(68)「もどかしさと悔しさですね。こういうことを行ってもらったのは前に進んだのかな」

 また、原発が立地する双葉町では、無人となった商店街を見た他、帰還困難区域にある別の原告の自宅を検証した。

 福島第一原発事故をめぐって裁判所が現地検証を行うのは、今回が初めて。


■改めて裁判を整理

 この裁判は、福島第一原発事故で被災した福島県内外の約4000人が、国と東京電力に対し、事故前の原状回復とそれができるまでの間の賠償を求めて、福島地方裁判所に訴えを起こしたもので、原発事故をめぐる訴訟の中でも、規模が最大のもの。

 原告側はこれまで、「原発事故前まで長年生活していた住宅や庭、風景や環境などを現地で五官を使って感知する必要がある」として、裁判所が被災した現地を実際に訪れ、検証を行うよう求めてきた。

 これに対し、国や東京電力は、「客観的な証拠としては写真や文書で十分だ」「精神的な苦痛や放射能への不安は法廷での本人尋問で明らかにできる」などとして、裁判所が現地で検証を行う必要はないと主張していた。

 こうした中、福島地裁は原告側の求めを基本的に受け入れた上で、「原告の数が非常に多く、住んでいた地域も多岐にわたる」などとして、検証の必要性を認め、17日に行った。

 こうした裁判所による現地検証は、これまでにも、水俣病や新潟水俣病などの公害訴訟や、アメリカ軍基地の騒音訴訟などで行われている。

 福島地裁は今後、原告たちが暮らす福島市の仮設住宅なども実際に訪れて検証を行う考え。

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