「カフェ」に「POP」 変わる学校図書館
実は、高校生の51.9%は、ひと月に1冊も本を読んでいないという現状がある。(全国学校図書館協議会・毎日新聞社調べ)国立青少年教育振興機構の調査によると、子どもの頃に多くの本を読んだ人ほど、成人してから他人との人間関係を築く能力が高くなると言われているので、少し心配なデータだ。
中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。2日のテーマは「行きたくなる学校図書館」。
先月30日、文部科学省で開かれた「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」。学校図書館が所蔵する本の整備状況の確認や、学校図書館の活用拡大などが話し合われた。
■「借りる・自習する」だけじゃない
最近の学校図書館は単に「本を借りる」「自習する」だけの場所ではなくなっている。
神奈川県立田奈高校では、毎週木曜日の昼休みと放課後だけ図書館が“カフェ”に変身する。図書館でジュースを飲んだり、雑談したりと自由に過ごすことができ、図書館にいる学校司書の人に本の事だけでなく、学校や日常生活の悩み相談なども出来る。多い日には1日300人が利用することもあるという。
埼玉県立春日部女子高校の学校図書館は、館内のレイアウトも図書館っぽくなく、本を紹介する手書きのPOPのようなものもあり、まるで本屋さんのようだ。蔵書も学校の図書館にしては意外な物が多い。最新の芥川賞・直木賞受賞作品をはじめ、マンガ大賞に選ばれた人気漫画、女子校なので女性誌も置いてある。
また、春日部女子高校の図書館では、定期的に「ビブリオバトル」を開催している。ビブリオバトルとは、簡単に言うと「書評バトル」だ。バトルする数人が面白いと思った本を持ち寄り、5分の持ち時間でその本のどこが面白いのかをプレゼン、質疑応答などもする。
その後、「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員で行い、最も多く票を集めた人が勝者になる。こうしたイベントも学校図書館で行っている。
――どうして学校図書館がこのように変わってきたのか。
「学校司書」のいる図書館が増えてきたからだ。今回紹介したような特色のある学校図書館には学校司書がいる。2014年に学校図書館法が改正され、「学校は学校司書を置くよう努めなければならない」となった。
学校図書館の管理運営を主に行っているのは「学校司書」もしくは「司書教諭」だ。「司書教諭」とは、学校の先生をしながら図書館の仕事も担う教員のことだ。ただ、学校の先生がメインの仕事なので、図書館の事だけを考えているわけにはいかない。
一方「学校司書」は学校図書館の運営がメーンの仕事なので、その学校にあった特色のある図書館が作られていく。
――ただ、学校司書の配置は必ずしも進んでいないようだが。
今回のポイントは「財源の使い方」。国は平成24年度から学校司書の配置に1年間で150億円の予算を投入している。国がこれだけの予算を投入しているのに、学校司書の配置が進まない理由は、国がこの予算を地方に対し「地方交付税」の形で渡しているからだ。
地方交付税の使い方は、地方自治体が自由に決められることになっていて、国はその使い道を限定できない。そのため、学校司書のために使ってほしいと思って渡しても、自治体の判断で他の事業に回されてしまう可能性がある。
これを防止するためには、国が使い道を限定できる「国庫支出金」という渡し方を検討することも一案かと思う。いずれにしても、全国の学校に行きたくなる図書館が増えることを願う。