“10年で”患者最多 RSウイルスに注意
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。6日のテーマは「RSウイルス感染症」。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。
■全国的に増加 RSウイルス感染症患者
国立感染症研究所が全国3000の小児科で調査したデータを基に作成した4月からの「RSウイルス感染症」の患者数のグラフを見ると、先月25日までの1週間の患者数は4204人で、過去10年間の同じ時期と比べて最も多くなっている。
以前は秋に増え始め、冬にピークを迎えていた。しかし、5年ほど前から、夏から増え始めていて、秋にはかなり患者が多くなるので注意が必要だ。
最新のデータは2週前のもので、少し減ってはいるが、祝日が2日あったので、病院によっては休診日で、それが影響している可能性がある。なので実際には、もっと患者が増えている可能性もある。
■乳幼児は重症化する恐れも
ただ、これだけ患者が多い割にRSウイルスという名前を聞き慣れない人も多いと思う。実際、RSウイルス感染症は風邪と症状がよく似ていて、軽く考えがちだが、乳幼児は重症化する恐れもあり、注意が必要だ。
RSウイルス感染症の感染経路は、感染者がせきやくしゃみをした際の飛まつを吸い込むことによって起こる「飛まつ感染」や、ウイルスがついている手や指、おもちゃを通じて感染する「接触感染」などがある。
■何度でも感染 入院する子どもも
症状は、せきや鼻水など風邪のような症状が数日続く。生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%の子どもが少なくとも1度は感染するとされている。ただ、はしかのように1度かかれば免疫ができる「終生免疫」は得られないため、何度も感染することになる。
RSウイルスが原因で入院する子どももいる。5日に千葉市の病院を取材すると、RSウイルス感染症が悪化した子ども7人が入院していた。
生後1か月の赤ちゃんのお母さんは、入院するほどの病気だとは思っていなかったという。
「ずっと泣いていたり、苦しそうだなと思ったので、念のため(医師に)みせようと連れて行ったら即入院。小さい子がなると怖いというのはその場で教えてもらったので、怖くて涙が出ました」
重症化するとどうなってしまうのか、医師に聞いた。
千葉市立海浜病院小児科・地引利昭医師「肺炎はよく知られていると思いますが、乳幼児の場合は細気管支炎という病態があります。重い場合には酸素投与、さらに重い場合には人工呼吸器が必要」
■細気管支炎とは
気管支から肺までの間の気管支はいくつにも分かれていて、管の部分が細くなっている。これが「細気管支」だ。この細気管支がウイルスによって炎症を起こした状態が「細気管支炎」。空気の通り道が狭くなって、空気も吸いたくても吸えない、吐くときも苦しくなる。
また、「肺炎」はウイルスがその先の肺に入り込んでしまって炎症を起こすことをいう。
■RSウイルス感染症
RSウイルス感染症には、重症化しないようにするためのインフルエンザワクチン接種のような予防策はない。また、特効薬もないため、基本的な治療は、熱を下げたり、のどの痛みを抑えたりする薬などで症状を緩和する「対症療法」しかない。
■“まわり”こそ注意を
重症化する可能性が高いのは0歳児や1歳児。大人や子どもは、RSウイルスに感染していても、症状が軽いから感染していることに気づいていないことが多い。
感染対策として、まわりの人が手洗いやマスクをすること。また、0歳児や1歳児が触れるおもちゃなどは、こまめにアルコールや塩素系の消毒剤などで消毒することが必要だ。