水俣病の公式確認から60年 犠牲者を追悼
今年は水俣病の公式確認から60年。地震の影響で延期されていた慰霊式が熊本県水俣市で行われ、犠牲者を追悼した。
水俣病犠牲者慰霊式は毎年、水俣病が公式に確認された5月1日に行われているが、今年は熊本地震の影響で延期されていた。慰霊式には、水俣病の患者や家族、行政、原因企業のチッソなどから約750人が参列し、犠牲者を追悼した。遺族を代表して60年前に水俣病で夫を亡くした大矢ミツコさん(90)が祈りの言葉をささげた。
大矢ミツコさん「私のような悲しみは、もう誰にもしてほしくありません。同じ水俣の中で、いがみ合ったりするような苦しみはもう嫌です。チッソは主人に本当に『すまなかった』と思うなら逃げたりしないで、水俣病のことをちゃんと伝えてほしいです」
一方、山本公一環境相は「長きにわたる大変な苦しみの中で亡くなられた方々、ご遺族の方々、地域に生じた軋轢(あつれき)に苦しまれた方々、今なお苦しみの中にある方々に、申し訳ないという気持ちでいっぱいです」と述べ、被害の拡大を防げなかったことを謝罪した。
水俣病の認定患者数は今年9月末現在、2282人。また、水俣病とは認められないものの、感覚障害など一定の症状がある被害者の救済事業では、1995年の政府解決策で1万人あまり、また、2009年の水俣病被害者救済法では、3万人あまりが救済対象となっている。
しかし公式確認から60年がたった今も、水俣病の被害の全容は明らかになっておらず、国や県による広範囲の健康調査を求める声が挙がっている。