「留年気にせずに」100年時代の留学事情
世の中で議論を呼んでいる話題について、意見を聞く「opinions」。今回の話題は「留学経験者、採用したいけれど…」。若者の海外留学を支援する船橋力氏に聞いた。
「トビタテ!留学JAPAN」が行ったアンケートによると、企業側の63.6%が「留学経験者を積極的に採用したいと考えている」と答えた。一方で、日本全体で留学経験がある大学生は、わずか3%程度と、まだまだ少ない状況が続いている。ネット上では「留学には、お金がかかる」「留学と就活の両立が不安」との声の一方、「チャレンジを続けることで、学ぶ意識が変わった」との声もある。
――この結果についての意見をお願いします。
フリップを2つ用意してきまして、1つ目は「高校×地方」と書きました。今、調査では大学の留学と出ていましたが、実はカギになるのは高校・地方だと思っています。企業の採用担当に聞くと、70%ぐらいは、高校時代に留学しておいてほしいと。高校時代に一番、アイデンティティーや自我が芽生える時にいろんな体験をすることで人間形成がされると。アンケートをとると、40%の高校生が留学したいと出るんですけど、実際に高校生は1.1%しか留学していません。
――なぜそこまで少ないんでしょう。
やっぱり「部活」とか「お金がない」などですが、ただひとつ見えてきたのは、高校時代に1~2週間でも海外に行くと、大学で半分以上が長期留学をするんです。あとは留学して受験で何を勉強したいかなどが見えてくるので、これはカギになります。もうひとつは地方です。首都圏の留学生が5~6割いるんです。だから地方のほうがまだまだ情報が届かないとか、やはり保守的な意識ですかね、先生も親も(悪いという意味ではないですが)公務員になるとか、そういう背景があると思います。
――従来型の就職提案が行われている可能性もあるということですね。
そうですね。そしてもうひとつのフリップは「留年上等」と少しチャレンジングな書き方をしました。
――これまでだと留年は、ちょっと後ろめたい思いもありましたが。
これからは100年時代ですね。100年時代において若いときの1~2年は関係ないと。企業の採用担当者も、1年ほど全然違った体験をしてもらってきたほうがいいと。確かに、経済的に、家計を早く自立してささえなくちゃいけないという人もいるかと思うんですけど、今、留学の場合、留年しても学費はタダとかの免除が出てきているので、そういう面も含めて結構、留年も増えています。ここは良い経験をしたほど、良い大人になって良い社会人生活を得られるのではと思っています。文科省から怒られるんじゃないかと思って書いてますけど、「留年上等」ということで。
――それだけ同じ高校の中でも密度の濃い生活が送れるという意味ですかね。留年という考え方もこれから改めていかないといけないかもしれませんね。
むしろ学年が落ちても友達が倍できるみたいな。
――最後にひとつ。留年はいいんですが、就職に後れをとるのではという不安の声もあるんですが、このあたりはどうでしょう。
やっぱり今は良い体験をしている人を採用したいので、異文化体験が必要になると思いますし、情報はどこでも取れるし、オンラインでも面接してくれるところは増えてくると思うので、あまり怖がらずに取り組んでほしいなと思います。
■船橋力氏(48)プロフィル
幼い時と高校時代を南米で過ごし、大学卒業後は、大手商社で海外のODA(政府開発援助)を手がけた。その後、企業と学校に体験・参加型の教育プログラムを提供する会社を設立。現在は、文部科学省の主導する官民協働プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」のプロジェクトディレクターとして日本の若者を海外に送り出している。
【the SOCIAL opinionsより】