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【#みんなのギモン】公衆トイレも「男女共用」が急増中…なぜ?

2023年7月12日 17:00
【#みんなのギモン】公衆トイレも「男女共用」が急増中…なぜ?
大井町駅前公衆便所のトイレの配置図  東京都品川区

駅や公園など外出先で様々な人が利用する公衆トイレ。男女別に分かれていたものを改修し、男女共用の構造にする動きが広がっています。"男女共用の公衆トイレ"はなぜ、増えているのでしょうか?(報道局 調査報道班 川崎正明)

■Twitterで大きな反響…渋谷区幡ヶ谷の「おしゃれ公衆トイレ」

今年2月末、東京都渋谷区幡ヶ谷にある公衆トイレが建て替えられ、男女別のトイレから男女共用のトイレ2つと男性小便器2つの構造に改修されました。その直後、渋谷区議会の議員が「女性トイレは残すべき」とツイートすると、不安や怒りなど様々な反響が寄せられ、大きな話題となりました。

あれから4か月。記者は問題となった幡ヶ谷の「おしゃれ公衆トイレ」を訪れました。路線バスが走る道路の交差点に面し、自転車や人通りも多い場所です。平日の午後、1時間ほど滞在してみると…。

男女共用トイレを利用したのは男性8人、女性は1人。男性の大半は小便器の利用者でした。

■渋谷区の「THE TOKYO TOILET」プロジェクト

渋谷区では日本財団と共に2018年10月から「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトを進めています。暗い、汚い、くさい、怖いなどのイメージで入りづらい状況にある公衆トイレを、著名な建築家やデザイナーらが再設計して建て直し、区内17か所のトイレが今年3月までに整備されました。

区のホームページには 「バリアフリーやユニバーサルデザインの考えに加え、多様な利用者の視点に立ち、人種・性別・年齢・障がいなどに関係なく、ハード・ソフト両面から誰もが使いやすいトイレ環境を整備しています」と書かれています。

区が進めているのは多様性社会を尊重した公衆トイレ。小さな子どもを連れている人やベビーカーを利用している子育て世代、車いす利用者と介助者など、男女問わず快適に利用でき、誰もが使いやすいトイレ環境を作ったとしています。

■理想の公衆トイレとは…これからは「男女共用トイレ」が一般的?

JR恵比寿駅西口公衆トイレ。このトイレも2021年7月に男女別だったものから男女共用の5つの個室からなる配置に建て替えられました。外観は白いアルミのルーバーで覆われ、トイレには見えないたたずまいです。恵比寿駅の西口を出てすぐの場所にあり、東京メトロ日比谷線への連絡階段にも近く、人通りがとても多い場所に建っているため、ひっきりなしに利用者が現れます。

5つの共用トイレの内訳は以下の通りです。
大便器・小便器セット…2室。
大便器のみ     …1室。
大便器・ベビーシート・オストメイト用設備      …1室。
大便器・介助ベッド・車椅子利用可能(だれでもトイレ)…1室。

夕方になると5つのブースがすべて埋まり、入口で待つ人の姿も見られました。男性と女性が同じ場所で並んだり、女性が入室した後、外で男性が待つなど男女共用ならではの光景が見られました。

利用者に話を聞いてみると…

30代女性
「個室の中に鏡があるので化粧直しなどゆっくりできます。しかし男性が使うので女性トイレにはない独特の(飛び散った尿の)においがします」

50代男性
「最近は共用トイレも多いし、きれいなので構わないです」

20代女性
「ちゃんと仕切られているので気になりません。ただ(入室した時に)便座が上がっていると前は男性だったんだと思うと、少し抵抗感があります」

男女共用での利用について、そこまでの抵抗はないようでした。一方で、盗撮などの犯罪の危険性については、このような意見も聞かれました。

20代女性
「男女共用なので駅前とはいえ、廊下で待つ男性と鉢合わせするのは怖いです。 個室の中に小型カメラを仕込んでいる恐れがあるので、ネジ穴を必ずチェックしてから入ります。壁のトイレットペーパーホルダーの横とか下着が見えやすいところを特にチェックします。男性用、女性用、男女共用をそれぞれ作れば、性別的に入れない人も使いやすいし、女性は安心するのではないでしょうか」

多様性に配慮したトイレ環境が作られた反面、犯罪誘発の危険性という問題も同時に抱える結果となりました。

■共用トイレでわいせつ事件が発生

東京・品川区大井町駅前にある公衆トイレ。JR京浜東北線の線路と道路の間に挟まれた場所に、塔状の革新的なデザインをした6つの男女共用トイレが設置されています。

2021年10月、20代の女性をトイレに連れ込み、わいせつな行為をしたとして24歳の会社員の男が逮捕されました。男は駅近くで女性に声をかけると腰に手を回して、トイレに強引に連れて行き犯行に及んだということです。

■一般的な公衆トイレも「男女共用」の流れに?

今まで見てきたような革新的なデザインなどで大変身して生まれ変わったトイレもありますが、じつは、一般的な街の公衆トイレの立て替えや改修には大きな壁が立ちはだかっています。

東京都板橋区。区内には公園トイレや公衆トイレが229か所(2023年4月現在)あり、2016年度から2025年度までの10年間で51のトイレの改修計画を策定しています。毎年、数カ所のトイレが改修されていますが、ここでポイントとなるのは、車いす利用者などが安心して使える「バリアフリー対策」です。ここに、自治体の苦悩がありました。板橋区の担当者に話を聞きました。

板橋区土木部みどりと公園課 河島一郎課長
「バリフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)があるので、東京の施設でトイレを作り変えるには、まずはバリアフリー対策をしなければなりません。バリアフリー対応の男女共用「誰でもトイレ」1基と、男性の使用頻度が高いので小便器をつけるパターンが標準的です。その上で女性専用があれば、女性が心配している防犯上の安心安全をクリアできるのですが、スペースの問題もあり大きなトイレを建てることが難しいのが現状です」

バリアフリー対策のため、広いスペースを確保しようとすると、男女別の個室を設けるのは難しく、男女共用トイレを採用するケースが多くなる、といいます。公園の公衆トイレにはさらに制約があります。

板橋区みなみ児童遊園。ブランコや砂場が設置された、どこにでもある「街の公園」です。この公園には現在、男女共用の和式便器が1つ設置されていますが、大きなトイレに建てかえることができないといいます。

実は都市公園法という法律により、「公園の敷地面積の2%を超える建築物は建てることができない」と定められているのです。この公園の敷地面積は約380 ㎡。法律で定められた「2%の制約」を当てはめると建築可能な建物の面積は7.6㎡になります。そのため8㎡の大きさのバリアフリー対応の男女共用「誰でもトイレ」と男子小便器を組み合わせた一般的なスタイルのトイレにさえも建て替えることができません。

限られた公園の面積の中で、トイレを大きくすることは非常に困難なのです。

板橋区土木部みどりと公園課 河島一郎課長
「我々の作る公衆トイレは1回作ると何十年単位で次の整備まで使っていかなければなりません。トイレの使われ方の変化は今後もあり得るでしょうから、見通せる先を見極めながら、時代に合わせてやっていく必要性があると考えます」

1か所のトイレに男性、女性、男女共用と様々なタイプが設置されるのが理想ではありますが、スペースの制約からすべて満たすトイレを設置するのは難しい、というのが実情のようです。

男女共用トイレ、皆さんはどう考えますか?

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