無職の若者 支援機関の利用 約半数が躊躇
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「無職の若者 支援機関の利用“躊躇(ちゅうちょ)する”」。ひきこもりなど社会との接点を失った若者とその家族を支援する事業を行っている認定NPO法人・育て上げネット理事長の工藤啓氏に話を聞いた。
認定NPO法人「育て上げネット」が、ひきこもりや矯正施設の退所者で無職の若者に調査を行った。「支援機関の利用に迷ったか」という問いに対し、約半数が「迷った」と答え、相談に躊躇した経験があることが分かった。
その理由については…
「何を話したらいいかわからない」
「人に相談するのが苦手」
「自分が場違いじゃないか心配」
「支援を受けるのはダメな人だ…」
と相談をする前に多くの戸惑いがあることが見てとれる。
――この話題について工藤さんにフリップを書いていただきました。
「相談にお越し下さい」です。
相談というのは非常に高いハードルの行為だと思います。いま就職氷河期問題や中高年の引きこもりの問題などが社会でクローズアップされるなかで、私たちも含めて「ぜひ相談を、相談を」と呼びかけています。
しかし「来ていただければ、ご相談をします」というような環境がすごく多いです。例えば行くということがそもそもできない方やお金がかかるのでつらいという方々にとってはお越し下さいではなく、お越しいただかなくても相談できますという社会環境をつくっていくべきだと思います。
――具体的にはどんな対応をしているのでしょうか。
私たちは、来られたらご相談を受けるのですが、来られない方にはお伺いをするということをやっていました。これは訪問支援といいます。
しかし最近ではスカイプを使って、インターネットでテレビ相談をしたりとか、LINEを使って気軽に相談できるような取り組みをしています。これまで、行って相談するのはつらいんだという人たちから、気楽に相談できるようになったと、ご評価いただいていると考えています。
――顔が見えないからこそ相談できることというのもありますよね。
地域の方に知られたくないというのもあると思います。また自分の表情や、名前を明かさなくても「こんにちは」から入れる、予約もいらない、そういう相談形態をこれからどんどんつくっていかなければならないと考えています。
――相談しやすいという一方で、文字だけでは伝わらないということもあるのではないでしょうか。
そうですね。文字の相談だけで、全部を解決するということは難しいと思います。しかし困っている人であるほど、相談に行くということが難しい状態でありますので、文字であっても、まずは“つながる”、そこから電話に切り替えるとか、こういう場所にご相談されたらどうでしょうかというようなきっかけをつくるためにも、とにかく相談のハードルを下げていくことが本当に重要だと思います。
――まずはきっかけということですね。LINEでの対応で何か工夫されていることはありますか。
対面相談を専門にやってきた相談員が多いので、LINEで相談するということを学ばないといけません。
ですので十分な研修をしますが、そこに経験の浅いLINE世代の若者と経験のあるベテランのカウンセラーがセットになって、パソコンの前で来たテキストに対してどう答えるか、またはこの若者の言葉はどういう意図で使っているのかということを相互に確認しながら相談を返していくというような、今まで見たことないような、連携で相談しているシーンなんかは新しい時代が来ているんだなと感じます。
――LINEのやりとりも、どんな言葉をかわすかで関係性が変わってきますから、そういう工夫も必要なんですね。
そうですね。スタンプでくることもあります。
■工藤啓氏プロフィル
ひきこもりなど社会との接点を失った若者とその家族を支援する事業を行っている。就労支援プログラム「ジョブトレ」では、若者の悩みや希望に応じ、個別の課題を設定しサポート。また、誰にも相談できず悩む親のためのセミナーなども開催している。原点は両親の取り組み。学校や社会に居場所がない若者と同居し支える活動を行っていた。その体験などから「若者支援は社会投資」という思いを胸に「育て上げネット」を立ち上げ、若者と社会をつなぐことを目指している。
【the SOCIAL opinionsより】