若い世代で広がる市販薬の“過剰摂取” コロナ禍で増加しているワケ
今、若い世代に市販の風邪薬などを過剰摂取する「オーバードーズ」が広がる傾向があるといいます。新型コロナウイルスの流行で対面授業がなくなり、孤立が深まることで、入手しやすい市販薬に依存する若者が増えているのが要因とみられます。
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都内の高校に通う、1年生のあゆみさん(仮名・16)。学校生活や家庭環境に悩み、つらい思いを忘れるため始めたというのが、市販の風邪薬などの過剰摂取、「オーバードーズ」でした。
高校1年生 あゆみさん(仮名・16)
「(風邪薬を一度に)30粒ぐらいはいつも飲んでましたね。SNSから流れてきたものを見て、(オーバードーズ)やろうかなって思いました」
去年10月には――
あゆみさん(仮名・16)
「180(錠)飲んで、1か月くらい入院してました」
退院後も治療を続け、市販薬の依存を抜け出したあゆみさん。
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こうしたオーバードーズ、今、若い世代で、広がる傾向があるといいます。
10代を中心に、心の悩みの相談にのるNPO団体を訪ねました。団体には、次のようなオーバードーズの悩みが続々と寄せられていました。「OD」とはオーバードーズを意味します。
「寂しくてどうしようもなくてODしちゃう日々なんで、。。」
「一昨日は111錠飲んで昨日60錠今日60錠飲みましたww」
厚生労働省などによると、市販の薬でも依存性が高いものもあるほか、過剰摂取により意識障害や急性中毒を起こして、命に関わる恐れもあるといいます。
こうした、市販薬のオーバードーズが増える背景とは――
NPO若者メンタルサポート協会 小杉沙織理事長
「子供たちもコロナ禍で特に悩んでいて、つらい気持ちから逃れるために、オーバードーズや自傷行為をしている子が増えている」
コロナ流行前と比べ、市販薬に依存する患者が増加。対面授業が減り、孤立が深まることで、入手しやすい市販薬に依存する若者が増えているのが要因とみられます。
NPO若者メンタルサポート協会でも、コロナ前に比べ、相談件数は約3倍に急増し、多いときで、1日900人ほどから相談があるといいます。
小杉理事長
「『誰かわかって』『これだけつらいんだよ』という心の叫びだなというのを、すごく思います」
まずは一人で抱え込まず、いつでも相談してほしいとしたうえで、理解のある専門の医療機関を受診して、治療にあたることも大事だとしています。
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かつてオーバードーズを経験したという女性に話を聞きました。
オーバードーズを克服した女性(23)
「いやな気持ちとか、忘れたいとか、ストレス発散方法がなくて…」
幼いころから両親の虐待を受けていたといい、周囲に相談することができず、薬に頼ってしまったといいます。緊急搬送を繰り返し、命の危機に直面。NPOに助けを求めました。
オーバードーズを克服した女性(23)
「見守ってくれるし、愛してくれるし、飲まなくてもやっていける、ってことが分かったので、やめられました」
今では、病院に通いながら、児童養護施設で働くために勉強をしているといいます。
オーバードーズを克服した女性(23)
「自分の存在を認めてくれる人、見守ってくれる人がいてくれたら、やめられるんじゃないかなと思います」
(2月9日放送『news zero』より)