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漁業者「12年間地道にやってきたのにまたイチから…」 福島“処理水放出”24日にも開始へ

2023年8月23日 5:55
漁業者「12年間地道にやってきたのにまたイチから…」 福島“処理水放出”24日にも開始へ

岸田首相は22日、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を早ければ24日に開始することを正式に表明しました。この決定に福島の漁師は、「個人的にはちょっと待ってよって感じ」と話していました。一方、処理水放出に反対する中国。北京の日本料理店では、「『原発のか』とよく聞き返される」といいます。

    ◇

22日、福島・新地町の海で行われていたのは、「常磐もの」と呼ばれる福島の魚のおいしさを知ってもらうための釣りイベントです。そこで参加者の声を聞きました。

釣りイベント参加者
「外国の方が福島の魚に対して不快に思っていなければいいな」
「廃炉にはしないといけないし、ただ放出すれば、また風評被害は出ると思いますよ」

福島第一原発の敷地内にたまり続ける処理水。政府はそこに含まれる放射性物質「トリチウム」などの濃度を安全基準よりも大幅に薄めたうえで海に放出しようとしています。ただ、地元などでは風評被害に対する不安は残ったままです。

放出の時期について22日、岸田首相は早ければ24日に開始することを表明。政府は、安全性の確保に万全を期すとしたうえで、風評被害対策や漁業継続支援として800億円を計上しています。

それでも福島・いわき市の漁業関係者からは、次のような声が聞かれます。

漁師
「あまりにも急じゃないかなと。しょっちゅう集まりには行って(説明を)聞いたり意見言ったりしたが、そんなやつなんか(国に)全然届いていない」

別の漁師
「いつかしらは放出しなきゃだもんね。今、2~3年のばしたって、どこかしらでけじめつけなきゃ放出のね」

22日夜、「news zero」が話を聞いたのは、福島の漁師・新妻竹彦さんです。

新妻さん
「何をもって漁業者が一定の理解をしたと判断をしたのか、こっちが理解に苦しむ」

2011年に震災と原発事故で漁は中断。魚の安全性などを確認するため、漁獲量などを制限した試験操業を経て、2021年から段階的に通常操業に移行していました。そこに決まったのが、海洋放出の方針です。

新妻さん
「震災直後、『福島県の魚はいらない』って築地で言われて、それから12年間、放射線量を測定し、地道に12年間やってきたのに、これをまたイチからやらされるのかと、またイチからやらなきゃいけないのかと考えると、私個人的には、ちょっと待ってよって感じ」

――政府に求める今後の対応は

新妻さん
「風評というのは雲をつかむような話なので、どうすればいいか正直わからない。消費者のことを思って言うのであれば、地道に検査していくしかない。国は私たちがそれをやるときには、サポートしてもらってやるしかない。風評(被害)は少なからず起きるので、その規模は想像できない」

    ◇

処理水放出に反対する中国では、すでに変化が見られます。北京にある日本料理店を訪ねました。

日本料理店 小林金二店主
「もともと日本のカキを使っていたんですけど、それが入ってこないので」

――取り出したカキの産地は?

日本料理店 小林金二店主
「これは(中国)山東省の」

日本の水産物に対し、中国政府が先月上旬から放射線検査を強化していて、事実上、輸入がストップ。そのため、中国産に切り替えたといいます。

中国人の客からは「日本の周りの海からの食べ物は、ちょっと心配しています」との声が聞かれました。

実は、小林さんは、生まれも育ちも福島県です。

日本料理店 小林金二店主
「『原発のか』とよく聞き返されます。私はそれが寂しい。早くおいしい素材が中国に来るように願っています」

影響は水産物だけにとどまりません。上海にある日本の食材を扱う店では、米の輸入が滞っているといいます。日本の食材自体が仕入れづらくなっているというのです。さらに深刻なのが、売り上げの減少です。

日本食材店のオーナー
「(処理水のニュースが)放送される前から6割の売り上げになりました」

中国人の「日本食離れ」が進んでいるといいます。実際、どう感じているのか、上海で中国国民に話を聞きました。

中国国民
「この(処理水放出の)計画が通されたのが理解できない」
「私はできるだけ日本産のものを買わないです」

聞かれたのは、厳しい声ばかりです。中国政府は22日も、新たな対抗措置も辞さない考えを表明しました。

中国外務省 報道官
「中国側はあらゆる必要な措置を講じて、海洋環境を維持し食品の安全と公衆の健康を守る」

また、北京に駐在する日本大使を呼び、抗議したということです。

「放出があれば輸入禁止も辞さない」としていた香港政府は22日、実際に24日から東京や福島など10都県からの水産物の輸入を禁止すると発表しました。

一方、韓国も22日、政府としての立場を表明しました。

韓国政府の会見
「計画上の科学的・技術的問題はないと判断しました。ただし、我が政府が汚染水の放流に賛成または支持しているわけではないことを明確に申し上げます」

(8月22日放送『news zero』より)