“処方箋なし”で…「緊急避妊薬」一部薬局で試験販売を開始 課題も
望まない妊娠を防ぐための「緊急避妊薬」について、28日から処方箋なしでの販売が一部の薬局で試験的に始まりました。医師の診察なしで買えるよう求める声が高まる中、本格的な薬局での販売につながるのか、課題も指摘されています。
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28日、都内の薬局で“緊急避妊薬”を見せてもらいました。
ケイ薬局 薬剤師・宮原富士子さん
「こちら(ノルレボ錠)が先発品、こちら(レボノルゲストレル錠)がジェネリック医薬品です」
望まない妊娠を防ぐため、女性が性行為の後、72時間以内に飲む薬です。
日本では、医師の診察を受け処方されないと購入できない緊急避妊薬。28日から一部の薬局で試験的に“処方箋なし”での販売が始まりました。
以前、この薬を使ったことのある女性は――
「重い気持ちのまま(病院に)行かなければいけないっていうメンタル。金銭と時間の負担がすごく大きかった。あんまり優しい先生じゃなくて『なんで避妊できなかったの?』みたいな。重圧感とかあったりして」
医師の診察が“負担”に感じたといいます。女性は「もうちょっと身近に(薬を)もらえるところがあったらいいな」と話しました。
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28日現在、約90の国や地域では緊急避妊薬が薬局で買えます。日本でも「買いやすさ」を求める声は高まっていましたが、一部には「薬の転売や悪用が増える」などとする慎重な意見もあり、議論はなかなか進んできませんでした。
こうした中、28日にようやく始まった試験的販売。買いたい人が直接薬局に来るため、薬剤師の役割は重要です。
ケイ薬局 薬剤師・宮原富士子さん(今年3月)
「(女性が)ドキドキして(薬局に)いらっしゃっているところで、しゃべりやすい環境をつくっていくことがとっても大事」
女性をとがめることなく丁寧に薬の説明を行うだけでなく、買いに来た人が性暴力やDVの被害者だった場合に地域の産婦人科などを紹介できるよう、連携も必要だと言います。
ケイ薬局 薬剤師・宮原富士子さん(今年3月)
「緊急避妊や避妊が人間にとって普通のことなんだって。恥ずかしいことじゃない。使えるもの(薬)が入手しやすい環境の安全の中で普及していくことには賛成です」
今回、試験的販売を行う薬局は全国で合計145か所あります。また、販売対象は16歳以上、未成年は保護者の同伴が必要などとする条件が決められています。
薬局での本格的な一般販売を訴えてきた団体の代表は、販売の条件について懸念を示しています。
本格的な一般販売を訴える染矢明日香さん
「今回、ようやく試験的運用が開始となったんですけど、いろんな条件をクリアしたごく限られた薬局であったり、ごく限られた人しか入手できないってなってしまうと、誰もが安心して生活ができるっていうところにはつながっていかない。困った人がいれば相談もできるし、支援を受けられる環境であるべき」
今回の試験的販売について、来年3月まで調査が行われる予定で、結果をもとに今後の販売方法を検討する予定です。しかし、正式な決定まで2年ほどかかる見方もあり、女性たちが安心して使える薬になるよう議論がいそがれます。
【解説】緊急避妊薬 世界では?
試験販売が始まった緊急避妊薬ですが、世界ではどういう対応をしているのでしょうか。日本テレビ・加納美也子解説委員に聞きました。
藤井貴彦キャスター
「試験販売が始まった緊急避妊薬ですが、世界ではどういう対応をしているのか、加納解説委員に話を聞きます」
加納解説委員
「WHO(=世界保健機関)は緊急避妊薬を必須医薬品に指定していて、『誰もが安全に使用できるアクセスをきちんと確保しないといけない薬』として指定しています。そのため、世界ではすでに約90の国や地域で医師の処方箋なしに薬局で買える薬になっていて、年齢制限を設けていない国も多くあります。日本は世界的に見ても対応が遅れているのが現状です」
藤井キャスター
「そんな状況の中で、今回の調査研究で本格的な一般販売は実現できそうなのでしょうか」
加納解説委員
「実は、今回の調査研究は本来、今年夏ごろから来年3月まで行われる予定でしたが、ずれ込んでしまい、調査期間が3か月も短くなりました。期間が短くなったことで、一般販売に向けた議論に影響が出ないか懸念する声もあります。ただ、緊急避妊薬は望まない妊娠を防ぐ、いわば最後の砦にもなりうる薬ですので、望む人すべてに確実に届くように当事者の視点に立った議論が望まれます」